素材の話

晒し(さらし)の力!

『テキスタイル用語辞典』の執筆は新しい発見があり
とってもわくわくします!
中でも興味を持ったのは綿や麻などの「晒し(さらし)」です。

今回はちょっと晒しの話しを…
晒しとは染色する前に、織り上がった布の繊維に付いた
不純物や糊を取り除いたり、色素や臭いをとる
「精錬(せいれん)・漂白」工程のことです。

晒しの方法には「天然晒し」と「薬品晒し」があります。
天然晒しは「天日干し(てんぴぼし)」と呼ばれる
「太陽に晒す」ものが代表的。
空気中のオゾンの力で除菌・消臭・漂白するものです。
河原や芝生に干す「天日晒し(てんぴざらし)」
オゾン発生効果の高い雪の上で晒す「雪晒し(ゆきざらし)」などが有名です。
ちなみに、透け感のある素材の「ローンlawn」の語源は
「芝生lawnで晒した素材である」ことから来ている説があります。

つまり本来の「晒し」は自然の力で
除菌・消臭の効果を持たせた素材だったのです。

現在は薬品晒しが主で、石鹸やソーダなどで煮たあとに水洗いし
熱やテンション(張力)、塩素系漂白剤を加え、
繊維にストレスを付加しながら短時間で処理します。

そしてもうひとつ…
「晒し」という意味には「精錬・漂白」をするという他に
「晒し」そのものが生地の名前でもあるのです。

そう、あの真っ白い布です。

「包丁を1本、晒しに巻いてエ〜」という歌や(古っ!)
やくざの討ち入りや(極端!?)お祭りで腹に巻く「晒し」
昔は包帯代わりに「晒し」を使ったといいます。
非常に優れた衛生素材だったのですね。

天然晒しはまたの名を「和晒し(わざらし)」ともいいます。
天日晒しのほかに、蒸気加熱でじっくり仕上げる特殊な釜で(上の写真)
繊維にストレスをかけないで不純物を何日もかけて
しっかり取り除く方法があります。
ホルムアルデヒドなど人体に影響を与える物質を
「残留ゼロ」の無添加素材に仕上げます。

この製法で『京和晒綿紗(きょう わざらし めんしゃ)』という
ブランドを展開している京都のメーカーさんがあります。
とっても暖かなお話しを…次回ご紹介します。

【Textile-Tree/成田典子】