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花の仙人(byあをやま)

あをやまです。
こちらでは桜の季節も終わりましたが、
先月21、22日に桜の北上を追いかけるように
福島に行って来ました。
と言っても目的は飯舘村(いいたてむら)
「カタクリの鑑賞ツアー」です。
この企画は被災地福島を支援する
団体が主催しました。
そこで私はまだ何もしていないので、
この団体については
後日改めて紹介できたらと思います。
今後デザインの分野で何かお手伝いできることも
あるのではと思っています。
まずはどんな場所なのか、
今回の企画に便乗させて頂きました。

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初日は団体の理事長が、
この春避難解除になった村を
車で案内して下さいました。
放射線量測定器を持って。
報道にもあるように、
所々で除染時に取り除かれた土や葉が詰め込まれた
フレコンバッグの山が見えました。
新しく山の砂が撒かれた除染後の畑は
薄いベージュ色で、
その一角に緑色のシートに覆われた
フレコンバッグの山があります。
地区によってはソーラーパネルを設置して
自家発電しているそうです。
それ以外は静かで美しい緑豊かな田園風景です。
飯舘村は「日本で最も美しい村」に選ばれた直後
震災に遭いました。

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上の写真の、一番下の左が震災前の飯館村です。
線量は高い地区、低い地区、
また同じ場所でも高さや草の影など
ちょっとしたことで変わります。
同じ風景の中でも違うんですね。

楽しみにしていた「山津見(やまつみ)神社」にも行けました。
白いオオカミが土着の神様と言うこちらは、
オオカミ信仰なんですね。
獅子狛犬の代わりにオオカミが据えられています。
神殿は新しいです。
実は震災後に神社は消失してしまいました。
その直前に神社を訪れたプロカメラマンが天井絵を見て
「これは残さなくては」と
本格的に撮影して行かれたそうです。
その写真が貴重な資料となり、
東京藝術大学の日本画先攻の院生が携わって
再現されたと昨年末に知りました。
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二日目は小宮地区の大久保金一さんが案内して下さる
「カタクリの鑑賞ツアー」です。
この地区は線量がやや高めらしいのですが、
金一さんは避難せずこの地に残ったそうです。
先代と一緒に開墾した土地で、口に入れる作物はもう作れない。
そこで花園を作り始めたんだそうです。
マキバノハナゾノと言います。
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水芭蕉の咲く小川を渡って、
カタクリ見学ツアーが始まります。
金一さんはサッと川に入って橋を渡る人の
サポートをしてくれました。
金一さんのあだ名は「花の仙人」だとか。

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現在は平地から斜面から水仙畑になっていて、
その中に細い桜の木が植えられています。
桜の苗木は2014年に植樹されました。
まだ時間が必要ですが、
満開の桜の下で沢山の人が花見できるようにと。
あの震災を忘れないようにと。

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山に入ると枯れ葉の絨毯(じゅうたん)は
フカフカの感触でした。
葉の落ちた樹々は桜や栗、
楢(なら)、椚(くぬぎ)だそうです。
昔は山の木で作った炭を売っていたこと、
山菜も栗も豊かであったこと、
金一さんはゆっくり丁寧に説明してくれました。
歩いて行くと所々カタクリの花が咲いています。
「下を向く地味な花」とは聞いていましたが
正にその通りで、うっかりしてると踏みかねません。
7年かけて花を咲かせると、金一さんは言います。
上の写真の右の花の隣に出ている小さな葉は
昨年落ちた種だそうです。
7年かけて下を向いて咲く、
ほんとに大地を見つめる花なんだなぁ。
今咲いてる花は震災前に地面に落ちた種と言うことです。
なんだか健気(けなげ)に感じます。

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金一さんの畑には、飯舘村を形どった
バラ園が加わりました。
写真中央のブルーシートの上です。
ある人は「バラは手がかかって大変」と言います。
でも「花の仙人なら難しいことではないね」と。
なぜバラなのか。
実は村出身の東大大学院生が所属する研究室と
金一さんが話し合いをして決めた企画なんだそうです。
金一さんは若い人が大好きなんだとか。
若い力って、希望の光ですもんね。

帰りの車の中で、ふっと思いました。
大切なバラって星の王子さまに出てきたな。
そう言えば川を渡る時、山の説明してくれた時、
ちょっと少年のような感じを受けました。
年上の方に失礼かもしれないけど、
キラキラした感じです。
花の仙人。
なかなか逢えない人に逢えました。
そういう村です。