Archive for the ‘産地・機屋さん・企業の話し’ Category

近江湖東産地で、麻織物文化を守る「林与」さんの話

2015/04/01

林与(はやしよ)」さんは、滋賀県近江の麻織物メーカーで
近江上布(おうみじょうふ)の織元として
明治30年に創業しました。
現在、四代目が林与志雄社長です。
小さい工場ではありますが、シャトル織機を中心に
量産ではなかなかできない
質の高い丁寧なものづくりを行い
最近は海外からの需要も増えています。

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・・・シャトル織機の前に立つ林社長・・・

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・・・かつて生産されていた近江上布・・・

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・・・倉庫に眠っていた林与の近江上布のアーカイブ。
50年以上前に織られていた近江上布の見本が
数千枚から1万枚ほど確認されました・・・

林社長はとても志が高く、ものづくりの姿勢は
自らが綴る「リネン日記」からも伺えます。
1日1000件以上のアクセスがあるという人気ブログで
(4〜5年前の話ですから今はもっとあると思います)
テキスタイルやファッション業界に関わる方をはじめ
多くの方に読んでいただきたいブログです。

なかなか生産が難しい麻の高密度のキッチンリネン、
麻のデニム、先染めリネンをはじめ、
今では生産されていないアイリッシュリネン糸を織る
プロジェクトに挑戦したり、
自社のアーカイブの近江上布柄をプリント柄として
復刻させるなど、ちょっとずつ夢を叶えてきました。

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・・・林与にストックされていたアイリッシュリネン糸・・・

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・・・アイリッシュリネンハンカチプロジェクトで
製作されたハンカチ・・・

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・・・野州市の「紺九(こんく)」とコラボした
ヴィンテージ・アイリッシュリネンを本藍染めにした生地・・・

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・・・『インターテキスタイル上海2014』テキスタイルアワードで、
総合の3位を受賞したトロフィと賞状・・・

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・・・受賞したリネンのブラックデニム(左)・・・

しかし林社長が、最も危惧しているのが
かつては麻織物産地として名を馳せていた
近江湖東産地の衰退です。
後継者不足などもあり、年々廃業が続き
今では数えるほどしか織物工場が残っていません。
そのうち2つが今年廃業予定です。
廃業する工場が使用していた織機は
スクラップされ鉄くずとなってしまいます。

シャトル織機はもう生産されていない織機です。
しかも今回廃業される工場には「絽紋(ろもん)」という
ジャカードの「絽」を織る、とても希少な織機があります。
近江湖東産地の麻織物がなくなるということは
これまで職人さんが築き上げてきた
「日本の麻織物文化」がなくなることなのです。

林社長は、湖東地区の本場の麻織物の伝統を
なんとか残したい。
家族経営の中で大事に守られてきた方たちの思いを
なんとか自分が引き継ぎたい。
そのためには、まずはこの織機を守りたいと、
このたびクラウドファンディングの「REDYFOR」で
「近江湖東産地で、衰退しつつある
本場の麻織り文化を守りたい!」
というプロジェクトを立ち上げ、
支援を募ることになりました。

https://readyfor.jp/projects/ASAORIHOZON

これは、廃業する工場の織機を10数台移設し
稼働させるための資金集めのプロジェクトです。
期限は4月5日(日)で、目標金額は100万円です。
4月5日(日)23:00時点で100万円以上集まった場合のみ
決済が完了されます。

はじめは、告知不足でなかなか集まらなかった支援金も
皆様が知るとともに支援金が増え、
4月1日(水)現在で、110万円を超えました!
応援している一人として、本当に嬉しい限りです。

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・・・「プレミアム・テキスタイル・ジャパン2014」で、
ミラノ・ウニカのシルビオ・アルビーニ会長(中)と林与の林社長(右)・・・

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・・・ストールとワンピース生地の2種類を提案・・・

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・・・林与の近江上布柄をインクジェットプリントで
復刻させたもの。手前の小さな布が元の近江上布。
奥がプリントのストール。見た目はほとんど変わりません・・・

林社長は、現在ほとんど一人で国内外を動き回り
大変ハードな毎日を送られていますが、
「まだ40代という若い年代だからできる。
今をやらないと、多分できなくなると思う。
このタイミングを逃してはだめだ」と
頑張っておられます。
移設する織機を設置する建物や土地の購入資金とは
自力で捻出しようとしています。

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・・・近江湖東地区。水が上がってくることもあるので
土台を高くした上に建物が建てられています・・・

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・・・林与の工場内・・・

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・・・林社長とスタッフのインさん・・・

プロジェクトの締め切りまであと数日ではありますが
近江湖東地域の麻織物産地としての現状を
多くの方にまず知っていただきたい。
そして「Made in Japan」のものづくりが
過去の遺産にならないように、
産地で志を持って頑張っている方を
ぜひ応援して、次の世代へとつないでいきたいと
心より願っています。
これは近江湖東地区だけではなく、
日本の織物産地の多くに見られている現状ですから。

三菱レイヨン・テキスタイル「あいだのチカラ」2015 Spring & Summer

2014/06/17

三菱レイヨン・テキスタイル(株)は
アセテート繊維とポリエステル繊維を販売している会社です。
中でもトリアセテートは世界で唯一三菱レイヨンのみが
生産している繊維。
毎年2回「あいだのチカラ」をテーマに
トリアセテート繊維「ソアロン」を主力にした
展示会が開催されます。
2015年春夏は「光」「軽」「張」が切り口。
「上質感、軽快さ、フォルム」をポイントに、
今シーズンの傾向に焦点を絞った提案です。
(2014年6月4日・5日開催)

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トリアセテートは、天然パルプから生まれた
セルロース系繊維で、天然繊維のナチュラル感・美しさと
合成繊維の機能性・快適感の
両方の性質を併せもつ半合成繊維。
「光沢感」「吸水性」「ソフト感」「接触冷感」
「ウォッシャブル性」「速乾性」「クーリング性」
「熱セット性(プリーツ)」という優れた特性があり
「あいだの力」は、そういうコンセプトが
練り込まれたテーマです。

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トリアセテートを主力にした展示会は
目立つようなトレンド訴求が難しいものがありますが
それでも毎回トレンドカラーとスタイリングをポイントに
興味を引く切り口で新鮮さを出しています。
今回はトレンドカラーのイエローや
パステルカラーが提案されています。
エントランスにはイラストレーターの
鄭貞子さんのイラストで「光」「軽」「張」を表現。
鄭さんは、同じ日に顧客を対象に開催される
「ファッショントレンドセミナー」の
トレンドストーリーのイラストも描いています。

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「光」・・ソアロンの特徴である美しい光沢は、
糸そのものの輝きです。
トリアセテート繊維には表面にランダムな溝があり、
これが光を拡散し柔らかな光沢を生み出すことや、
光の屈折率が低いため繊維方向からの
反射光が少ないという性質があり、
より絹のような光沢と発色性を生み出しています。
写真は定番の『Soaron』。

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「軽」・・透け感や軽さが求められていますが、
今シーズンは“膨らみ”のあるシルエットが重要になっており、
薄手素材にもハリ感が不可欠。
ネオ・オーガンジー素材の『CAROSキャロス』などが提案。

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「張」・・・今シーズンの素材に不可欠なのがハリ感。
弾力性(ハリ)を作るストレッチファイバーと
トリアセテートのドライタッチ併せもつ複合素材の
『HARIDORAハリドラ』の提案。

【トリアセテートSoalonによる織物】

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「Uneven」表情感:
多重織りで凹凸を出した表情感のある
素材のバリエーション。

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「Natural」ナチュラル感:
シワになりにくい、洗濯がきくなどの利便性や、
綿麻のような膨らみ感を持つ、
ナチュラルな表情のフィラメント素材。

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「Soalon plus」:複合素材
トリアセテートの艶に天然繊維(麻のストレッチ素材)の
膨らみを出したものなど
「トリアセテート+天然繊維」の提案。

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「Glossy」光沢感:
控えめな艶、スパンシルク調、膨らみ感など
ブラウスのための定番素材のバリエーション。

【ポリエステルやポリエステル複合による織物】

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「Light Weight」:軽量素材
エアリー感のある繊細なライトウエイト素材。
ガーゼ調、スラブタッチ、ソフトオーガンジ調など。

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「Glossy」光沢:
シルキー素材にストレッチや
ハリのある肉厚感を加えたもの、
糸の膨らみでふんわり感を出したものなど。

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「Volume」ボリューム感:
糸の膨らみでもちもちのボリュームを出した
構築的なシルエットを作る素材。

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「Function」機能性:
特殊構造のアセテートとポリエステルの
複合素材。吸湿性に富み、
べたつきやムレを抑え、水分が素早く蒸発し、
気化熱の作用でひんやりした触感を生み出す。

【トリアセテートSoalonによる編物】

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「JERSEY/Uneven 」表情感:
ピンタックやシボのような凹凸感を出したもの。

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「JERSEY/Soft  Drape」ドレープジャージー:
ソフトでドレープ性のある上質ジャージー。
糸に膨らみや繊細な表情をつけることで
ナチュラル感を醸し出したもの。

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「JERSEY/Compact)」ナチュラルコンパクト:
ペーパーライクなナチュラルな表情なもの、
布帛と見間違えるようなストレッチ性のある
布帛調ジャージーなど。

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「Knitting」よこ編み:
艶と軽量感のあるトリアセテートと他素材複合のよこ編みヤーン。
様々な素材を芯にトリアセテートを撚糸することで
ナチュラルな膨らみと上質感のある表情を出したもの。

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遮熱繊維『Solshieldソルシールド』
太陽の光や熱(紫外線や赤外線など)を通しにくく、
衣服内の温度上昇を約2℃以上抑える効果が期待できるという、
ポリエステルの機能素材。
地球温暖化にともなう晩夏や初秋素材としても提案されている。

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左は遮熱繊維の『Solshield』
右は一般的なポリエステル繊維

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左の遮熱繊維が光が通りにくくなっており
やや暗くなっているのが分かる。

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2008年より開催されている
三菱レイヨン・テキスタイル(株)と文化学園による
「Soalon・DESIGN CONTEST」。
今年1月にファッションショー形式の最終審査会を開催し
優秀作品3点が選ばれています。

旧式の織機をカスタマイズして織り上げた、超マニアックなストール『ITO』!

2014/01/28

愛媛県今治市の「工房織座」のストールブランド『ITO(イト)』は、
テキスタイル好きなら、そのこだわりを
いつまでも聞いていたくなるような
独創的な織りで魅了します。
巻き方でテキスタイル変化やストールの様々な形が楽しめる、
ストールならではの魅力な織りなのです。

代表の武田正利さんは織り職人でもあり、
廃棄同様の旧式織機を全国から集め、
部品も自ら作りながら修理して改良を重ね
独自の織機にカスタマイズ。
昔の織機だからこそ織り上げられる
独創的な織りや風合いのストールを作り上げました。

工房織座」ではグッドデザイン賞、アジアデザイン賞など
世界の様々な賞を受賞している独創的な織りが
生み出されています!

上の写真は「昼夜織り(ちゅうやおり)」というもので、
裏表が反対の配色の柄が現われるもの。
ブルー面の裏側はピンクなのでリバーシブルで楽しめます。
しかもブルーからピンクのグラデーションになっているのが凄い!

こちらは麻とシルクの昼夜織り。
前述の綿と麻の昼夜織りよりも光沢があり
玉虫効果がはっきり出ています。
素材が変わると見え方も随分違います。

一見、モノトーンの普通のストールに見えますが
右端は「たてよこよろけもじり織り」という織り方。
「よろけ」というひょうたんのような波柄が現われる
「もじり織り」のストールで、
下のブルーのストールと同じ織りです。
「もじり織り」は透け感がありますが
タテヨコの糸がしっかり絡まっているので
糸がずれることなく丈夫な織りです。

上のボーダー柄は、よく見ると左右の幅が違います。
普通このようなボーダーはまず作ることはできません。
「傾斜もじり織り」という独創的な織りで
傾斜を変えた独自に開発した筬を使用することで
イレギュラーな幅のボーダーとなるそうです。

ボーダーの左のストールは「筒織り」にしたもので
輪になっているので、すっぽり被ることができます。
色を変え四重につながっているものもあります。

上のストールは何枚ものストールを並べているように見えますが
色違いの4枚のストールが一辺でつながっている
「四重平織り」という不思議な織りです。
4枚の布が重なったように織る「四重織り」の一種で
巻き方により様々な色を楽しめます。

(JFW-IFF「大日本市」にて)

「TLF第88回東京レザーフェア」2014春夏コレクションVOL.1

2013/06/25


・・・・「TFL第88回東京レザーフェア」6月20日・21日開催・・・・

TLF東京レザーフェア」は、靴やバッグなどの
素材(革や雑材)・副資材(パーツ)の展示会です。
皮革販売業者、タンナー(なめし革業者)、
副資材業者(ヒール、靴の底材、バッグの口金などのパーツ)、
加工機械の部品などを製造販売する業者が参加する
かなり専門性の高い見本市です。


・・・・レザー、靴やバッグのパーツなどの
資材トレンドも盛り込んだ「出展者ガイド」・・・・


・・・・「出展者ガイド」には2014春夏の素材トレンドのポイントも!・・・・

本来は靴やバッグなどのメーカーや問屋向けの
見本市として開催されてきましたが
小売店やアパレル、クラフト業界など
幅広い業種のOEM生産として販路を広げるため、
また学生や一般の方にも浅草の皮革産業をアピールし
業界への関心を高め、人材を確保しようという狙いもあり
現在は一般の方も無料で入場可能な見本市となっています。


・・・・「革コン」のデザイン応募のポスター・・・・


・・・・一般の方の応募も可能な革のデザインコンテスト「革コン」。応募した
デザイン画に来場者が投票します・・・・


・・・・各社「いち押し」で提案された革を人気投票するコンテスト・・・・


・・・・投票したい革には色の着いたボールが入れられます・・・・


・・・・絞りの技術を入れた革・・・・


・・・・和歌山県の皮革産地も参加。和歌山県の皮革産業は県内で最も古い
地場産業で、その源流は慶長年間といいます・・・・


・・・・和歌山の皮革産地と文化服装学院がコラボしたシューズ・・・・


・・・・(社)日本タンナーズ協会のブース・・・・



・・・・様々な種類のなめし(タン)の技術を展示・・・・・


・・・・なめし工程や革の種類を分かりやすく解説した冊子を制作。
とてもいい資料になります・・・・

通常の展示会や見本市は
一般の方の入場ができない業界向けのものが多く、
中には入場料も必要な場合もあります。
「東京レザーフェア」の主催は協同組合資材連ですが、
東京都が共催、経済産業省・台東区・
日本皮革産業連合会が後援、
リネアペッレ(イタリアで開催される世界最大の国際革見本市)が
協賛となるなど、日本の皮革産業活性化のために
官民一体となって頑張っている様子が伺えます。


・・・・リネアペッレの2014春夏トレンドセミナー・・・・


・・・・リネアペッレ・セレクション(2014春夏トレンドブース)・・・・



・・・・トレンドテーマに沿った革や付属を提案・・・・

会場では一般の方も参加しやすい工夫を凝らした
イベントやコンテストなどを開催したり
トレンドセミナーやトレンドブックの制作、革の知識の冊子など
無料の展示会としては、提供する革情報やトレンド情報がとても丁寧。
しかし、このことは皮革業界以外の方にはあまり知られていないようです。


・・・・「東京レザーフェア」が提案するトレンド情報の「トレンドラボ」・・・・


・・・・2014春夏トレンドで注目のグリーンとGOLDの組み合わせ・・・・


・・・・「東京レザーフェア」が発信するトレンド冊子
「TREND RABORATORY」・・・・


・・・・全身レザーでコーディネートしたモデルが館内を
ウォーキング・・・・


・・・・革の仕上の実演と体験コーナーなども・・・・

毎回浅草の都立産業貿易センター台東館で行われる
「東京レザーフェア」は、手づくり的な暖かみがありますが
演出性や業界外への告知がまだ弱い面もあります。
皮革業界活性化のためには、「東京レザーフェア」そのものを
どうアピールして行くかが今後の課題のようです。
ぜひ学生さんや、クラフト好きの方にも知っていただき
革に親しみ、これからの革のクリエーションを
リードしていって欲しいものです。

近江の麻の老舗「林与」の「麻布看板」の話し!

2013/05/10

Premium Textile Japan(PTJ)』2014春夏展に出展した
近江の麻の老舗(株)林与の「看板」についてお話しします。

 明治30年創業の林与は、展示会ではいつもブースの正面に
「林与」の伝統のロゴをパッチワークで縫い取った
麻布の看板を掲げます。
お手製のこの看板は、林与のトレードマークとなっていますが、
実は昨年10月の『インターテキスタイル上海』の時に
紛失してしまったようなのです。


・・・・PTJでは新しい「林与看板」が掲げられました・・・・

 林社長は今回のPTJの展示会に間に合わせようと、
忙しい合間を縫って一人で作業を続け
展示会初日の5月8日に、会場の東京国際フォーラムに到着してから
「林与」のマークに縫い取った部分をカットする
最後の作業を行ったといいます。

 この「林与看板」制作のことは、
林社長の人気ブログ「リネン日記」で知ったので
どんな風に仕上がっているのかを見るのも
楽しみのひとつでした。


・・・・表地と裏地を重ねて縫い、最後にロゴの部分を切り取ります・・・・

初代の「林与看板」は、味わいのあるパッチワークでしたが
今回のものは、表地と裏地を重ねて仮縫いし、次にロゴの形を縫い、
最後にロゴの部分を切り取ります
裏地は倉庫に眠っていた40年前の紺の後染めリネンを、
表地は定番の生成りのソフトリネンを使用したといいます。

40年前のリネンは、フィブリル化(摩擦で毛羽立ちささくれる現象)し、
ふっくらといい感じになっています。
しかもシワになりにくいという特徴があります。
こういう麻布は、作ろうと思っても
なかなか作れるものではなく、
昔の糸や織りの優れた技術、年月を経た麻独特のもののようです。


・・・紺のリネンは40年前のもの。フィブリル化していい感じが出ています・・・・・


・・・・昨年のPTJの林与のブースに掲げられていた初代「林与看板」。
このときは『テキスタイル用語辞典』を販売させて頂きました・・・・


・・・・初代「林与看板」は、正方形のパッチワークで作った力作です・・・・

林社長は、昔のリネンを研究しながら
どうしたら現代にこのようないいものを作ることができるか…
しかも今のビジネスとして成り立つものを試行錯誤しています。
新しい試みも着々と進んでいます。
その話しは次回お伝えします。

2014S/S 『T・N JAPAN東京展』Vol.3宮下織物

2013/05/03

『テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)東京』は
付加価値の高いもの作りをしている
全国から選りすぐったテキスタイルメーカーで
構成されている合同展です。
2014S/Sテーマは「触感を考える」。


・・・・細番手・高密度・ジャカードを中心とした先染織物を
得意とする宮下織物(株)・・・・

山梨県富士吉田の宮下織物(株)は、
細番手・高密度・ジャカードを中心とした先染織物が特徴で、
シルクブロケード、サテンやタフタのウエディングドレス生地など、
フォーマル分野を得意としています。
特に「濡れ巻き整経」という
山梨県郡内織物産地独特のシルクのたて糸整経技術を用いた
シルクサテンのドレス地を製造する
日本で唯一の織物メーカーとしても知られています。
プラチナのような輝きを持つ、シルクサテンは、本当に見事なものです。

※2013−2014『T・N JYAPAN 東京展』の宮下織物も参考にご覧ください。
http://www.textile-tree.com/tex/?p=3787


・・・・濡れ巻き整経のシルクサテンにフォークニードルを施した新作・・・・

今回の展示会でテキスタイルデザイナーの渡辺絵美さんが
イチオシで見せてくれたのは、糸を引っ掻き出したような
ユニークなテキスチャーのシルクサテンでした。
「フォークニードル」というニードリングの一種で、
釣り針のようなものに生地を引っかけて表面を傷つけて
糸を引っ掻き出したものです。

なんと驚いたのは、このシルクサテンは
「濡れ巻き整経」のシルクだというのです。
「究極のシルクサテンを、どうしてこんなもったいないことを!」
実は…細く緻密な濡れ巻き整経のシルクは、
織りこぶができてしまうこともあり、
これをB級反にしたくないという、
逆転の発想で考えたテクニックだというのです。
若いテキスタイルデザイナーならではの
大胆な発想に舌を巻きました。


・・・手でぎゅっと掴んだようなシワ感を出した
メタフィスと共同開発した『クーナ』の技術を応用したテキスタイル。
よこ糸にポリウレタン糸を使い、糸の性質で
布の伸縮性と自然な凹凸感をあらわしています・・・・


・・・・海外の方にはメタリック素材の人気が高かったそうです・・・・

宮下織物(株)が得意とするのが先染めのカラーフォーマル素材です。
ポリエステル%100のシャンブレータフタ(玉虫調)は、
なんと40色の在庫を持っているとのこと。
小ロットからも対応でき、価格もこなれているので
海外からの需要も多い、人気の定番アイテムです。


・・・・40色の在庫を持っている、カラーフォーマルとして
人気の高いシャンブレータフタ・・・・


・・・・40色の在庫を持っているポリエステルサテン・・・・

宮下織物(株)は、伝統的なもの作りをきちんと継続しつつ
アット驚くような新しい素材開発にも積極的に取り組みます。
最上級のもの作りがきちんとできて、
かつ実用としての、使いやすい定番素材もきちんと提案できています。
地に足のついたオリジナリティのある柔軟なもの作りが、
実力のあるメーカーの姿勢なのかも知れません。

 

 

近江上布の「林与」の挑戦!

2012/12/27

HARVEST ♯002』に出展していた、近江の麻の老舗「(株)林与」を紹介します。
今回の展示会で目を惹いたのが、初お披露目となる
アーカイブの近江上布のプリント柄です。
「林与」は、明治30年、近江上布の織元として創業しました。
「上布」とは上質なラミーで織った高級な薄手麻織物で
江戸幕府への「上納布、献上布」とされたものです。
近江上布は、非常に高度な絣柄が特徴ですが、
現在はほとんど織られてはいません。

「林与」の近江上布の記事はこちら↓
http://www.textile-tree.com/tex/?p=302


・・・・ハンガーにはたくさんのアーカイブの近江上布の一部が掛けられています。
手前がプリントにしてワンピースにしたもの・・・・


・・・・「林与」のアーカイブの近江上布・・・・


・・・・現在「林与」は麻の先染めを得意としています・・・・

実は数年前に、「林与」の倉庫から
近江上布の柄見本が1万枚近く発見されました。
林社長は、今見ても色褪せることのない素晴らしいデザインの柄を
現代に復活できないものかと考えていました。
私も以前実物を見せていただきましたが、
植物柄を中心にものすごいバリエーションがあり、
洋服にしてもステキな、モダンな柄が多くあります。
昨年より「近江上布柄プロジェクト」として着々と計画が進められ
色々試行錯誤したようですが、
10月の『インターテキスタイル上海』で初披露し、
日本では今回の『HARVEST』の展示会が初めてです。


・・・・お披露目された近江上布柄のプリント・・・・


・・・・麻と綿で作りましたが、麻の方が近江上布のニュアンスに近いようです・・・・

柄付けは、顔料と染料で行いましたが、
染料の方が自然な感じたったので、こちらを採用。
染めには「しごき染め」を用いたといいます。
「しごき染め」は、江戸小紋などで行われる地染めで、
型紙を使い、柄部分に糊置きして防染したあとに、
柔らかな色調の色糊(いろのり)を生地全体に塗り付け、
それをヘラでしごいて染める染法です。
地色が真っ白ではなく、
生成りや柔らかなピンク味に染め上げることができるので
ナチュラル感のあるいい雰囲気の柄になります。
今回は、しごき染色機を持っている染色工場と取り組んだそうです。


・・・・地色に微妙な色があるのが「しごき染め」の特徴です。
「林与」のロゴマークもネームも入っていて“ブランド”を感じます!・・・・


・・・・麻なのに、クシャクシャにしても、シワをあまり感じません。
「しごき染め」の特徴なのかもしれないと語っていました・・・・

染める布も麻と綿など、何種類が実験しました。
今回の展示会にも、麻と綿の両方が展示されていましたが、
やはり、麻の方が、本来の近江上布に近いような雰囲気を持っています。
そして、今回「しごき染め」を行った麻生地で、林社長が気がついたのは
「しわになりにくい」ということです。
『インターテキスタイル上海』に持っていったときも、
トランクに無造作に入れていたのに、
「ほとんどしわが目立たなかった」というのです。
これも「しごき」を行っている効果なのでしょうかと、話しておられました。


・・・・テキスタイルアワードで、総合の3位を受賞したトロフィと賞状・・・・


・・・・中国語の賞状・・・・

今回の展示会でもうひとつのお披露目は
10月に上海で開催された中国紡織工業連合会主催の
テキスタイルアワードで、総合の3位を受賞したトロフィーと賞状です。

といっても狭い『HARVEST』の会場では、飾るところも無いので
まだ、お客様が少ない時間にそっと撮影させていただきました。
受賞の対象になったのは、リネン100%のブラックデニムです。
中国では今、「黒」がトレンドになっており、
これもいいタイミングだったようです。

受賞の記事はこちらをご覧ください。
http://www.textile-tree.com/blog/?p=4600


・・・・受賞したリネンのブラックデニム(左)・・・・


・・・・総合3位のリネンのブラックデニム製品が
掲載されているパンフレット(右下)・・・・


・・・・日本企業では、もう1社小松精練のリアルなアニマルプリントが受賞。
こちらは、部門賞のクリエイティブデザイン賞・・・・


・・・・ちなみに、1位となったのが中国のメーカーのこちらの素材・・・・

リネンデニムは、インディゴは糸の中心が染まらない
中白(芯白)にしていますが、
ブラックデニムは反応染料で色落ちしないようにしています。
このリネンデニムは気仙沼の「㈲オイカワデニム」とコラボして
新製品を企画しているそうです、
『ジャパンクリエーション』で偶然「㈲オイカワデニム」を知り、
ラミーのミシン糸を持っていることなど
目立たないブースなのにやっていることがスゴイと意気投合。
これもどんな製品ができるのか楽しみです。


・・・・村田染工とコラボした鮮やかな草木染めのリネンストール・・・・

リネンストールでは、京都の「(株)村田染工」とコラボして
カラフルな草木染めのストールを提案。
「これが本当に草木染め?」と、驚くような鮮やかな色合いです。
以前より展示会に伺うと、鮮やかな草木染めの製品を見ることがあり、
聞いてみたらほとんどが「(株)村田染工」のものでした。
偶然にもこの日、「(株)村田染工」の村田社長とお会いすることができ
色々お話しを聞くことができました。
それはまた次回お伝えします。


・・・・藍染めのストールは、林社長自らインド藍の原液で
染めたもの。爪まで藍で染まって大変だったと笑っていました・・・・

もうひとつ「林与」の製品で気になっていたのは「キッチンリネン」です。
キッチンリネンは特別珍しいものではありませんが、
「林与」のキッチンリネンほど高密度なものには
なかなかお目にかかったことがありません。
林社長に伺ったら、このくらいの高密度なものを織るのは、
途中で糸が切れるし、本当に大変だと。
しかし、使えば使う程柔らかくなり、
「一生もの」のキッチンリネンになります。
ドイツに『マングルクロス』というリネンがあります。
ローラー式アイロンに使われるとても高密度なリネンで、
摩擦や熱から衣類を保護したり、脱水効果があるものですが、
このリネンと恐らく似ているのではないかとも話されていました。


・・・・「林与」ならではの高密度のキッチンリネン・・・

「林与」のもの作りは、本当にひとつひとつが丁寧で手を抜きません。
効率や合理性だけでは計れない、もの作りへのプライドだと思います。
そういう良さがじわじわと伝わり、支持者を確実に増やしています。
また、国内外を問わず本物の近江上布を初めて展示会で見た方の反応はとても良く、
「プリントだけではなく、本格的な再現に取り組んでいく必要を感じた」と
林社長のブログ『リネン日記』でも語っていました。
林社長でしたら、きっと新しいかたちを見いだしてやってくれると思います。

 

天然繊維テキスタイルの合同展『HARVEST ♯002』

2012/12/24


2回目の開催となる『ハーベスト』は
天然繊維のテキスタイルメーカー6社の合同展示会です。
オーガニックコットンの(株)パノコトレーディングが中心となり、
リネン、シルク、ウール、パイル、先染めコットンの各分野から
選りすぐったエキスパートメーカーで構成。
6社という小規模ながら、非常に質の高い展示会となっています。


・・・・小規模ながらクォリティの高いメーカーが集まった会場・・・・


・・・・展示会の受付をしているのはパノコトレーディングの長尾さん(右)。
古いミシンを受付台にして談笑する、アットホームな雰囲気・・・・

『ハーベスト』は、取り扱う商品がバッティングしないことや、
小規模展示会のメリットを生かし、それぞれのお客様を紹介し合うなど
互いのメーカーが連携し合うアットホームさも特徴。
糸や原料の在庫、生地在庫を抱えているメーカーも多く、
リスクを持ちながらも、独自のもの作りに力を入れている
“気概”を持ったメーカーが目立ちます。
今後は、少しずつ参加メーカーを増やしていきたいと
展示会のまとめ役となっている(株)パノコトレーディングの
長尾さんがお話しくださいました。
参加6社を簡単にご紹介します。

【リネン】(株)林与
明治30年創業の近江の麻の老舗「(株)林与」は、
Textile Treeでも何度かご紹介している麻織物メーカーです。
10月に上海で開催された中国紡織工業連合会主催の
テキスタイルアワードで、総合の3位を受賞。
近江の小さなメーカーの製品が世界で評価されるなど、
こつこつと、独自の哲学で質の高いもの作りをしてきた成果が
着実に実りつつあります。

・・・・林与のアーカイブの「近江上布」と、それををプリントにして
仕上げたワンピース・・・・


・・・・テキスタイルアワードで、総合の3位を受賞したトロフィと賞状・・・・


・・・・受賞したリネンのブラックデニム(左)・・・・・

受賞の記事↓
http://www.textile-tree.com/blog/?p=4600


・・・・京都の(株)村田染工とコラボしたビビッドな草木染めのストール・・・・

今回の『ハーベスト』には、現在は幻の織物となっている
「近江上布」の柄をプリントとして復刻させたものや、
京都の(株)村田染工とコラボしてビビッドに染め上げた
草木染めのリネンストールを展示。
そのこだわりがまたスゴイのです。

※それはこちらで紹介しています。
http://www.textile-tree.com/tex/?p=4042


【シルク】(株)長谷川商店

愛知県一の宮の「(株)長谷川商店」は
シルク原料から、糸、丸編み、織物などを扱う
シルク関連の総合商社です。


・・・・シルクを中心に、ウール、カシミア、アルパカ混や、麻や綿なども・・・・


・・・・意匠糸のバリエーションも多い・・・・


・・・・カラーバリエーションが100色以上、カスリで20色くらいの在庫があります・・・・


・・・・ラルフ・ローレンが定番にしている素材・・・・

アジアで初めて、イタリアのニット糸の展示会「ピッティフィラッティ」に
出展したメーカーでもあり、
ニットを主流に、トレンド性の高い糸なども提案し
海外のスーパーブランドとの取引も多数。
シルクの原料から抱え、紡毛シルク糸などは
100色をストックしているものあります。
他ではなかなか見られない意匠糸などを得意としています。

【ウール】長尾商事(株)
ウールの分野では、羊毛繊維専門商社の名古屋の
長尾商事(株)」が参加。
羊毛原料をはじめ、アルパカ、カシミア、キャメル、アンゴラなどの
原毛原料、原糸、織物などの輸入・輸出を行っています。
特にアルパカ、ビキューナなどの南米の原毛を得意とし、
これらを輸入するライセンスを持っている、世界でも数少ない会社です。


・・・・尾州産地を背景にした羊毛繊維専門商社・・・・


・・・・二重紡績で、「ガラ紡」のように糸のボディの部分に
違う色のわたを置いていき、カラーミックスの甘撚りのスラブ糸にしたもの・・・・


・・・・軽く弾力性のあるナチュラルヘアをもつ高山羊のペルーウール・・・・

注目したのはペルーの高山に生息する羊で、
天然色のナチュラルヘアで展開しているペルーウール。
ノンミュールジング(羊に処置を行っていない)というエコ的観点や、
膨らみがあって軽く、希少価値があり、しかも価格もリーズナブルということで、
人気も高まっています。
また、「ガラ紡」のような紡績のできる三河の紡績会社とコラボして、
手紡ぎのような、独特の節のある甘撚りの軽い糸を開発。
数少ない職人さんの技術ならではの、味のある糸となっています。

【先染めコットン】(株)カゲヤマ
日本最大の先染め織物産地の兵庫県西脇市に本社を置く
(株)カゲヤマ」は、先染めのシャツ地を中心にした企画・製造・販売会社。
東京、上海、韓国、イタリアにも支社を持ち、
トレンド性やオリジナリティのあるカジュアルシャツ地を得意としています。


・・・・ヴィンテージ加工を施したシャツ地を得意とします・・・・


・・・・抜染で色を抜いた「シェイキーマジック加工」。裏と表の表情がこんなに違います・・・・


・・・・ポリエステル糸と綿糸の複合繊維の織物を、綿糸だけを染めた
「片サイド染め」。ポリエステル糸は染まらないので、色褪せたような
白っぽい感じに仕上がります・・・・

抜染の手法で色を抜いた人気商品の「シェイキーマジック加工」、
性質の違う2種類の糸の片方だけを染めた「片サイド染め」など、
新商品開発にも積極的。
色褪せた経年加工を施したシャツ地や、
先染めにドビーやジャカード、刺繍などを入れたレトロテイストなど
魅力あるヴィンテージ素材を提案しています。
また、通常約400~500柄、約2,000点以上ストックしており、
小ロット・短納期ができるのも特徴です。

【パイル素材】青野パイル(株)
パイル織物(編物)産地である、和歌山県高野口からは、
青野パイル(株)」が参加。


・・・・ハイテクパイルも得意とする、パイルの産地、和歌山県高野口のメーカー・・・・


・・・・人気のドットもパイルで立体的に!・・・・


・・・・コンピューターベロアで、立体的なキャラクター柄を出したもの・・・・


・・・・アメリカ海軍のデッキジャケット。襟やインナーには
アルパカウールのボアを使用した本格派仕上げ・・・・


・・・・無印良品のコットンブランケットに採用されたシール織り素材。
高野口産地ならではの上質なパイルです。以前採用されたアーカイブから再登板!・・・・

青野パイル(株)は、ベロア、フェイクファー、シールなどの「アパレル用パイル」、
ブランケット、シーツなどの「寝装用パイル」、
椅子張り、カーペットなどの「インテリア用パイル」はもとより、
電磁波シール材、レンズの研磨材など、IT関連や建築関連の
工業関連素材分野にも進出。
ハイテクの新分野開拓に力を入れるなど、
パイルの領域も広がり、かなり面白くなっています。

【オーガニックコットン】(株)パノコトレーディング
『ハーベスト』の発起人・主催となっている、
オーガニックコットンの「(株)パノコトレーディング」。
オーガニックコットンの原糸の輸入・販売をはじめ
生地の企画・製造・販売を行っている会社で、
アパレル分野に進出する準備も着々進んでいるようです。


・・・・高野口産地とコラボしたオーガニックコットンのパイル・・・・


・・・・・きれいな草木染めのオーガニックコットン・・・・

今回は高野口産地とコラボしたパイル織物や、
草木染めのオーガニックコットンなど、今シーズンの主力商品を展示。
「(株)パノコトレーディング」が、
なぜオーガニックコットン100%の提供が可能か、
無農薬のオーガニックコットン生産を可能にする
「オーガニック農法」などの説明を
オーガニックコットン事業部の浅田さんから伺いました。

パノコトレーディングの取材↓
http://www.textile-tree.com/tex/?p=2703

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.5林キルティング

2012/11/26

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。

大阪・岸和田の「林キルティング」は、キルティングの可能性を広げた
付加価値の高さが特徴です。
代表の林千尋さんは全国を走り回り、
ジャカード、刺繍、ステッチなど、
優れた加工技術を持つ工場を探し当てコラボレーション。
高度なテクニックを駆使した、
クリエイティブなキルティングを作り上げています。


・・・・一見プリーツのようですが、“溶ける糸”を使用して
キルティング技術でつくったもの・・・・


・・・・キルティングした糸を溶かすと、絞りやプリーツのように
立体的な表面感となります。右はサテン、左はサテンにオパール加工を
施したもの。同じキルティングでも生地により表情が違います・・・・


・・・・さらに転写プリントを施したもの・・・・

「林キルティング」は、林さんが一代で築いたもの。
父親は青果業を営んでいましたが、父親とは違う職業を選びました。
しかし、事業家になりたいという林さんの志を父親はバックアップ。
大学を卒業後、キルティングの機械を導入し、
早速操業しましたが、初めの5〜6年は
まさに勉強の時代だったといいます。


・・・・大学卒業後創業し約30年。すべて独学でやってきたという林さん・・・・

林さんは、全国のキルティング工場を尋ね回り技術を学び、
さらに、ジャカード、刺繍、ステッチなどを得意とする工場と
協業することで、キルティングのさらなる可能性を広げました。
日本にはスパンコールやコード刺繍など、
特殊加工に高い技術を持つ工場があります。
しかし、規模が小さいために、残念ながら発信力が弱い。
そういう優れた特殊加工技術や設備をもつ工場と連携していくと
他にはなかなか真似のできない
オリジナリティのあるもの作りが可能になります。
このコーディネート力は、
全国を走り回った林さんならではのノウハウです。


・・・・ベルベットにオーガンジーを重ね、キルティング刺繍。
生地の色や刺繍の仕方により、表面感が違って見えます・・・・


・・・・絞りのようなキルティング・・・・

パリのプルミエールヴィジョンにも出展し、
オリジナリティのある高度なもの作りは
国内外の有名デザイナーからも高い評価を得ています。
林さんは、付加価値を求めるメーカーさんに向けて
小ロット対応を行ったり、
素材・福祉材・加工法からのアドバイスを含めた
商品開発も行っています。
もちろん海外への進出にも力を入れています。


・・・・「林キルティング」のイメージブランドの『マレンコ』・・・・


・・・・一見ジャカードのように見えますが、
オーガンジーを重ね、キルティング刺繍をして、
あと染めしたコート。色合いが立体的です・・・・


・・・・キルティングとニードルパンチの組み合わせ。
以前プラダにもこのテクニックが見られました・・・・


・・・・キルティングのパネル柄。かなり凝った柄ができます・・・・

工場を立ち上げ初めて製品ができた時、まずはともあれと、
「無鉄砲にも、コシノヒロコさんの門を叩いた」そうです。
コシノヒロコさんは、初めて見る林キルティングさんの
生地を気に入ってくださり、それは今日まで続いています。

そういえば、コシノヒロコさんも林さんも同じ岸和田出身。
もちろん林さんも生粋の「だんじり男」!
岸和田の「だんじり魂」でもって、
世界に大きく羽ばたいて行くことを、心より応援しております。

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.4伝統と革新の有松鳴海絞

2012/11/25

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。


・・・・ウールや麻、ポリエステルなどに二次加工をして新しく表現した「有松鳴海絞」・・・・

「有松鳴海絞(ありまつなるみしぼり)」は、
江戸時代より、愛知県名古屋市の有松地域(有松絞り)と、
鳴海地域(鳴海絞り)を中心に生産されている伝統的な絞り染めで、
木綿の絞りの手拭や浴衣地が代表的。
「括る・縫う・巻く」の3つの基本動作で、
手蜘蛛絞り、疋田三浦絞り、雪花絞り、鹿の子絞り、帽子絞りなど
100種類以上の絞りの技法が生み出され、様々な柄や形が作られます。
これが「有松鳴海絞」の最大の特徴となっています。

今回の『T・N JAPAN』には愛知県絞工業組合から
スズサン、(有)絞染色 久野染工場、(株)山上商店の3社が出展。
いずれも、伝統工芸品とは一線を画す、
現代のライフスタイルに根差した「有松鳴海絞」の
新しいクリエーションを展開しているメーカーや工房です。


・・・・左から藤井祥二さん(絞染色 久野染工場)、村瀬裕さん(スズサン)、
山上正晃さん(山上商店)・・・・

愛知県絞工業組合の理事も務める、「スズサン」の村瀬裕さんは、
「有松鳴海絞」の企画・製造・販売を行うかたわら、
絞りの体験教室や講習会など、
絞りの楽しさや可能性を広げる啓蒙活動にも力を注いでいます。

木綿に施す伝統的な「有松鳴海絞」だけではなく、
ウールや麻、ポリエステルに伝統的な括りや縫い取りの絞りを行い、
さらに塩縮加工、シュリンク加工、縮絨、ヒートセットなどの二次加工を施す、
新しい「有松鳴海絞」を開発。
「有松鳴海絞」の技法が、和の分野だけにとらわれることなく
ファッションやインテリア分野など、もっと自由に表現できるものとして
新たな価値を創造し続けています。


・・・・ヒートセットを施し、形態を安定させたベルベットの絞り。
シルクやポリエステルにヒートセットを施すことで、まるで不思議な
生物のような立体的な表面感を出すことに成功しました・・・・

絞り卸製造業の(株)山上商店の山上正晃さんは、
主に製品の企画を行っています。
絞りの加工業者さんに発注し、製品化し、販売していく役割です。
新しいもの作りのマーケットの開拓なども行っています。


・・・・ウール100%に「絞り」+「縮絨」「染色」「抜染」の組み合わせにより
様々な表情があらわれることを示した、サンプルボード・・・・


・・・・ウール100%の加工しない生地・・・・


・・・・「手筋絞り」をして、黒く「染色」してから「抜染」したもの・・・・


・・・・「巻き上げ絞り」をして、藍色に「染色」してから「縮絨」を弱くかけたもの・・・・


・・・・「手筋絞り」をして、グレーに「染色」したもの・・・・


・・・・赤に「染色」してから「縮絨」を強くかけたもの。
膨らんでいる部分は“コイン”を入れて絞った「コイン絞り」・・・・

「スズサン」の村瀬裕さんは海外への進出も積極的で、ドイツで息子さんが
絞りの会社を作り、絞りのランプシェード、クッション、ストール、
ファブリックなどをヨーロッパやアメリカなどで展開しています。


・・・・海外販売も展開している「スズサン」の手絞りのランプシェード・・・・


・・・・非常に大胆でモダンな柄のクッション・・・・

今回の展示会にはいらしていませんでしたが、
(有)絞染色 久野染工場の代表である久野剛資さんは、
絞り作家としても活躍されている方です。
伝統的な和装絞りはもとより、
三宅一生をはじめとする国内外のデザイナーの作品、
舞台衣装、インテリアなど、幅広い分野を手掛けています。
久野さんもやはり、受け継がれてきた絞りの技術を
後世にも伝えていきたいと、名古屋芸術大学から
インターンを受け入れたり、見学者のために工房を開放したり、
体験教室なども開催しています。
今回の展示会にはインターンの藤井祥二さんがいらしていました。
インターンから久野染工場に入社する学生さんも少なくないようで
村井さんも卒業後の進路を期待されていました。


・・・・「板締め絞り」のウールのストール(左)・・・・


・・・・「帽子絞り」をして縮絨したウールのストール(右)・・・・


・・・・リネンに絞りを入れ、アルカリシュリンクを施したもの(左)・・・・

久野さんもまた「有松鳴海絞」を伝統工芸品に終らせるのではなく、
伝統に縛られることなく、垣根を取り払い、
もっと自由に表現していくことを望んでいます。
そのためには科学技術を利用して表現することも必要です。
伝統的な「有松鳴海絞」からしてみると、
“邪道” とも言われるかもしれませんが、
今の生活にマッチし、地域が活性化していくなら
時代とともに素材も表現も変わってもいいはずだと…。


・・・・絞りを入れた墨染め。シュリンク加工やヒートセットを施したもの・・・・


・・・・若いクリエーターとコラボした絞りのレギンス。
板締め絞りのポップな色・柄使いが新鮮です!・・・・

芸大の学生さんや、若いクリエーターがつくる絞りは
既成概念から解き放たれて、
新しい発想で非常に面白いものが仕上がってくるといいます。
久野さんも村瀬さんも、自分たちが受け継いだいいものを
次の時代につないでいくために、
惜しみなく技術や知識を伝えています。
山上さんは、それを形にしてプロデュース。
熱い3人の想いは、確実に若い人たちに伝わっているようです。