Archive for the ‘面白くためになる素材の話し’ Category

三菱レイヨン・テキスタイル「あいだのチカラ」2015 Spring & Summer

2014/06/17

三菱レイヨン・テキスタイル(株)は
アセテート繊維とポリエステル繊維を販売している会社です。
中でもトリアセテートは世界で唯一三菱レイヨンのみが
生産している繊維。
毎年2回「あいだのチカラ」をテーマに
トリアセテート繊維「ソアロン」を主力にした
展示会が開催されます。
2015年春夏は「光」「軽」「張」が切り口。
「上質感、軽快さ、フォルム」をポイントに、
今シーズンの傾向に焦点を絞った提案です。
(2014年6月4日・5日開催)

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トリアセテートは、天然パルプから生まれた
セルロース系繊維で、天然繊維のナチュラル感・美しさと
合成繊維の機能性・快適感の
両方の性質を併せもつ半合成繊維。
「光沢感」「吸水性」「ソフト感」「接触冷感」
「ウォッシャブル性」「速乾性」「クーリング性」
「熱セット性(プリーツ)」という優れた特性があり
「あいだの力」は、そういうコンセプトが
練り込まれたテーマです。

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トリアセテートを主力にした展示会は
目立つようなトレンド訴求が難しいものがありますが
それでも毎回トレンドカラーとスタイリングをポイントに
興味を引く切り口で新鮮さを出しています。
今回はトレンドカラーのイエローや
パステルカラーが提案されています。
エントランスにはイラストレーターの
鄭貞子さんのイラストで「光」「軽」「張」を表現。
鄭さんは、同じ日に顧客を対象に開催される
「ファッショントレンドセミナー」の
トレンドストーリーのイラストも描いています。

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「光」・・ソアロンの特徴である美しい光沢は、
糸そのものの輝きです。
トリアセテート繊維には表面にランダムな溝があり、
これが光を拡散し柔らかな光沢を生み出すことや、
光の屈折率が低いため繊維方向からの
反射光が少ないという性質があり、
より絹のような光沢と発色性を生み出しています。
写真は定番の『Soaron』。

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「軽」・・透け感や軽さが求められていますが、
今シーズンは“膨らみ”のあるシルエットが重要になっており、
薄手素材にもハリ感が不可欠。
ネオ・オーガンジー素材の『CAROSキャロス』などが提案。

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「張」・・・今シーズンの素材に不可欠なのがハリ感。
弾力性(ハリ)を作るストレッチファイバーと
トリアセテートのドライタッチ併せもつ複合素材の
『HARIDORAハリドラ』の提案。

【トリアセテートSoalonによる織物】

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「Uneven」表情感:
多重織りで凹凸を出した表情感のある
素材のバリエーション。

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「Natural」ナチュラル感:
シワになりにくい、洗濯がきくなどの利便性や、
綿麻のような膨らみ感を持つ、
ナチュラルな表情のフィラメント素材。

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「Soalon plus」:複合素材
トリアセテートの艶に天然繊維(麻のストレッチ素材)の
膨らみを出したものなど
「トリアセテート+天然繊維」の提案。

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「Glossy」光沢感:
控えめな艶、スパンシルク調、膨らみ感など
ブラウスのための定番素材のバリエーション。

【ポリエステルやポリエステル複合による織物】

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「Light Weight」:軽量素材
エアリー感のある繊細なライトウエイト素材。
ガーゼ調、スラブタッチ、ソフトオーガンジ調など。

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「Glossy」光沢:
シルキー素材にストレッチや
ハリのある肉厚感を加えたもの、
糸の膨らみでふんわり感を出したものなど。

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「Volume」ボリューム感:
糸の膨らみでもちもちのボリュームを出した
構築的なシルエットを作る素材。

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「Function」機能性:
特殊構造のアセテートとポリエステルの
複合素材。吸湿性に富み、
べたつきやムレを抑え、水分が素早く蒸発し、
気化熱の作用でひんやりした触感を生み出す。

【トリアセテートSoalonによる編物】

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「JERSEY/Uneven 」表情感:
ピンタックやシボのような凹凸感を出したもの。

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「JERSEY/Soft  Drape」ドレープジャージー:
ソフトでドレープ性のある上質ジャージー。
糸に膨らみや繊細な表情をつけることで
ナチュラル感を醸し出したもの。

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「JERSEY/Compact)」ナチュラルコンパクト:
ペーパーライクなナチュラルな表情なもの、
布帛と見間違えるようなストレッチ性のある
布帛調ジャージーなど。

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「Knitting」よこ編み:
艶と軽量感のあるトリアセテートと他素材複合のよこ編みヤーン。
様々な素材を芯にトリアセテートを撚糸することで
ナチュラルな膨らみと上質感のある表情を出したもの。

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遮熱繊維『Solshieldソルシールド』
太陽の光や熱(紫外線や赤外線など)を通しにくく、
衣服内の温度上昇を約2℃以上抑える効果が期待できるという、
ポリエステルの機能素材。
地球温暖化にともなう晩夏や初秋素材としても提案されている。

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左は遮熱繊維の『Solshield』
右は一般的なポリエステル繊維

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左の遮熱繊維が光が通りにくくなっており
やや暗くなっているのが分かる。

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2008年より開催されている
三菱レイヨン・テキスタイル(株)と文化学園による
「Soalon・DESIGN CONTEST」。
今年1月にファッションショー形式の最終審査会を開催し
優秀作品3点が選ばれています。

『北越雪譜』と御機屋(おはたや)の話

2014/04/11

『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』という本があります。
江戸時代に南魚沼市塩沢で
「越後縮(えちごちぢみ)」の仲買商や質屋などをし、
随筆家でもある鈴木牧之(すずきぼくし)によって
書かれたものです。
江戸に商いに来ている時、雪を珍しがる人たちを見て
雪国の話しを書いたらベストセラーになりました。

その中の越後縮を書いた項目に、
とても興味深い話があるので紹介します。
※越後縮の話は「『北越雪譜』と越後上布の話」
参照してください。
当時、縮(ちぢみ)一反(いったん)織れば、
南魚沼の米農家の年収の半分になったといいます。
(といっても一反を糸から織り上げるまでは
4〜5カ月はかかると思います)

挿絵 04
・・・・冬は雪に閉ざされてしまう豪雪地帯。猛吹雪や雪崩で
亡くなった可哀想な話もあります。『北越雪譜』挿絵・・・・

・・・
「縮を織る処のものは娶(よめ)をえらぶにも
縮の伎(わざ)を第一とし,容儀は次とす。
このゆえに親たるものは娘の幼きより
此(この)伎を手習(てならわ)するを第一とす。
・・・

『北越雪譜』では、
嫁を選ぶには織り技術が一番で容貌は二の次。
親は娘が生まれたら、幼いときから織り技術を
教えることを一番重視しなさいと書かれています。
このようなことは、日本の織物産地はもとより、
織物や手芸文化の発達した世界各地にもありました。

村では当然のように「どこそこの娘は織物が上手」と
評判が立つので、娘たちは自分もその中に入りたいと
切磋琢磨し技術の向上に励みます。
織物上手な娘は良縁を斡旋してもらえるので
わずかな報酬でも「名誉」のために、
大変な努力を重ねるのです。

計り知れない手間と時間をかけて織り上げる「縮」は、
人を雇って合理的に織らせる織物工場では
とても採算がとれません。
手間に対して賃金を払うような賃仕事では不可能です。
雪に閉ざされた豪雪地帯の農家の婦女が
“唯一できる冬場の副業”だからこそできることなのです。
これは近江上布などにも見られた事です。

小千谷縮
・・・・伝統工芸品に指定されている小千谷縮・・・・

そのなかに「機織りで気がふれた娘」のことを
書いた項目があります。
この娘は、初めて上等の「縮」の注文が入ったので
大変喜び、金銭は二の次にして、
糸作りから自分で始め、誰の手も借りずに
こつこつと丹誠込めて見事な「縮」を織り上げました。
最後に「雪晒し(ゆきさらし)」という
仕上げを行うために、晒し業者に出したところ
なんと、戻ってきた反物には煤(すす)のような染みが
1箇所付いていたのです。
あまりのショックに娘は気がふれてしまったという
哀れな話が挿絵とともに載せられています。

挿絵02
・・・・機織りで気がふれた娘の挿絵(左)。『北越雪譜』より・・・・

見事な「縮」を織り上げる事は、
金銭以上の名誉である事が「御機屋(おはたや)」という
話を読むとよくわかります。
御機屋とは、特別な時に着るような上等な「縮」を織るための
神聖な織り場の事をいいます。
織る時には家のまわりの雪かきを丁寧にして、
家の中でできるだけ煙の入らない明るい部屋を選び、
新しいムシロを敷いて、四方にしめ縄を渡し、
中央に機(はた)を置きます。
まるで神様がいるかのごとく畏(おそ)れ敬い、
織り手の他は中に入れません。
織り手は、家族とは別の火で調理したものを食べ、
機を織るときは、衣服を改め、
塩水で身を清める塩垢離(しおごり)を行い、
手を洗い、口をすすぎます。
毎日このように身を清めてから始めるといいます。

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・・・・鳥居の形をした日本の手機(てばた)・・・・

以前古い機屋(はたや)さんを取材した時に、
日本の手機のたて枠は「鳥居」の形をしているのを
教えていただきました。
御機屋のことを知って、なるほどと合点がいきました。
「機には神が宿る」からでしょう。
『北越雪譜』には
「神は敬うことによって霊威を増すものだ」とあります。
ちょっとしたものでも、お守りとして敬い信じれば
霊は存在し、不思議な力を発揮するものだとし、
「御機屋の霊威」の例が挙げられていました。

御機屋は優れた織り手でなくては
建てる事ができません。
御機屋を建てる事は娘たちの憧れであり
それはまるで、身分の低いものが
殿上人(てんじょうびと)を
羨むようなことに等しいのだといいます。
機を織るということがいかに神聖な作業であり、
神の域に近づこうとするかのような
お金には代え難いもの作りのプライドがあったからこそ
日本には素晴しい織物文化が生まれたのだと
改めて実感しました。


「越後上布」は
『テキスタイル用語辞典』のコラムでも紹介しています(027P)。
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『北越雪譜』と越後上布の話

2014/04/04

NHKの「小さな旅」
「雪の機(はた)~新潟県南魚沼市~」(3月9日放映)で
江戸時代ベストセラーとなった
『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』と共に
豪雪の新潟県南魚沼市で織られる
「越後上布(えちごじょうふ)」を紹介していました。

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・・・・雪かきの様子や雪中歩行の用具の挿絵。『北越雪譜』より・・・・

『北越雪譜』は江戸時代に南魚沼市塩沢で
「縮(ちぢみ)」の仲買商や質屋などをし、
随筆家でもある鈴木牧之(すずきぼくし)によって
書かれたものです。
江戸に商いに来ている時、雪を珍しがる人たちを見て
雪国の話しを書いたら大当たりしました。
特に魚沼の名産品である
「越後縮(えちごちぢみ)」の事を書いた項目が
充実しているようなので、
興味を惹かれ早速購入してみました。
挿絵や現代語訳などもあるので
(ネットで検索もできます)かなり面白く読めました。
そこには日本の織物の原点があるような気がしました。

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・・・・越後上布。NHK「小さな旅」の映像より・・・・

「上布」とは、夏の麻着物地の最高級品とされる麻織物で、
苧麻(ちょま/からむし)を原料にしたものです。
越後地方(主に小千谷市、十日町市、塩沢町)で
生産するものは特に「越後上布」と呼ばれます。
かつては「越後布(えちごぬの)」と呼ばれていたようですが、
昔の地元では単に「布」と呼ばれていた事を
『北越雪譜』を読んで知りました。
だんだん評判が上がるにつれ「越後布」「越後上布」と
名前が付けられブランド化していったのでしょう。

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・・・・越後上布と、原料の青苧(あおそ)・・・・

「越後上布」の中でも糸に強い撚りを掛けて(強撚糸)
「縮み」を出した織物を「越後縮」といいますが、
総称して単に「縮(ちぢみ)」とも呼ばれています。
現在は、小千谷(おぢや)地区で織られる
「小千谷縮(おぢやちぢみ)」がよく知られています。
越後上布は、苧麻の繊維
(これを青苧《あおそ》といいます)を糸にしてから
織り上がるまでの工程は大変な手間と時間がかかります。
現在も昔ながらの手法で作られているものは、
国の重要無形文化財の認定を受けています。

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・・・・小千谷縮/2014年2月「GIFT SHOW」にて・・・・

越後上布は、苧麻の皮を剥いだ粗繊維(青苧)を
「苧績み(おうみ)」という
さらに裂いて縒(よ)って糸にしていく作業をし、
その後いくつかの工程を経て織り上げます。
織り上げた布は洗い上げ、
雪の上に布を並べて太陽に晒(さらす)す
「雪晒し(ゆきさらし)」という作業が行われます。
オゾンの酸化作用で白はより白くなり、
色物は色が冴えてきます。
これは、越後上布独特の晒しの手法です。

苧績みから始めて、織り上げ、雪晒しの作業までは
すべて雪の季節に行われます。
苧麻を原料に、とても細い糸にして織り上げる越後上布は
天然の湿り気がなければ切れやすいため、
まさに豪雪地帯が生産地として適しているのです。
織り手は湿度を保つために
暖房のない凍てつくような部屋で
辛抱強く織り上げていくのです。

挿絵01
・・・・雪晒しの風景の挿絵。『北越雪譜』より・・・・

『北越雪譜』の有名な一説があります。

「雪中に糸となし、雪中に織り、
雪水に洒(そそ)ぎ、雪上に曬(さら)す。
雪ありて縮(ちぢみ)あり、
されば越後縮は雪と人と気力相半(あいなかば)して
名産の名あり。
魚沼郡(こおり)の雪は縮の親といふべし。」

(越後縮は)雪中に糸をつくり、雪中に織り
雪水で洗い清め、雪上で日に晒す。
雪があってこそ縮がある。
越後縮は雪と人と気力が補いあって
はじめて名産品といえる。
魚沼郡の雪は縮の親というべきものである。

雪国の人は雪に閉ざされた極寒生活に耐え忍ぶ
心棒強さがあります。
中でも越後人は粘り強さと丁寧さががあるといわれます。
そういうすべての条件が揃ってこそ、
この「越後上布/越後縮」が生まれたといえましょう。

次回は「御機屋(おはたや)」についてお話します。


「越後上布」は
『テキスタイル用語辞典』のコラムでも紹介しています(027P)。
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「アイリッシュ・クロッシェ・レース」とタイタニック号の話

2014/03/10

カギ針編みのレースを「クロッシェ・レース」といいますが
「アイリッシュ・クロッシェ・レース」というものがあるのを
ご存知でしょうか。
アイルランドで作られていたクロッシェ・レースで
アイルランドの国花であるシャムロック(クローバー)や
アザミ、バラ、葡萄など
宗教的にも意味をもつ柄を編み込んだもの。
柄が盛り上がって立体的になっているのが特徴で
とても手の込んだレースです。
実はこのレース、1912年に遭難したタイタニック号と
意外な共通性があるのです。


・・・・・『テキスタイル用語辞典』より・・・・・

映画『タイタニック』を見た方なら
レオナルド・ディカプリオ演じる主人公ジャックが3等客室で
仲間と一緒に伝統的なアイリッシュ・ダンスに興じている
パーティーシーンが強烈に目に焼き付いているはず。
アイリッシュ音楽ブームにも拍車をかけました。
音楽とダンス好きの3等客室の彼らは、「ジャガイモ飢饉」で
アメリカに渡ろうとしている「アイルランド系移民」なのです。

1846年、アイルランドはジャガイモの疫病が大発生し
壊滅的な被害を受けました。
当時アイルランドはイギリスの植民地下にあり、
アイルランド人の3分の2は農業に従事。
典型的な植民地型農業で、
ジャガイモを主食としていた小作農達は飢えに苦しみ
100万人以上といわれる餓死者を出しました。
アイルランドでは新天地を求め、
ゴールドラッシュに湧いていたアメリカやカナダなどに
移民となって人口が流出。
その数は200万人以上ともいわれています。
ケネディ大統領の先祖もジャガイモ飢饉時の
アイルランド移民だったのは有名な話です。

このジャガイモ飢饉による大ピンチを救ったのが
なんと「アイリッシュ・クロッシェ・レース」だったのです。
ジャガイモが作れなくなった農民達が目を付けたのが
ずっと作り続けてきたクロッシェ・レースを輸出することです。

アイルランド以外ではほとんど知られていなかったレースですが
ニードル・レースにも似ているゴージャス感のあるレースは
たちまち人気を得、世界中に知られることになり、
多くの外貨を稼ぎ、この危機を救ったといわれています。

素材に興味のわいた方は『テキスタイル用語辞典』も
ぜひご覧ください。
読み物としても面白い解説が好評です。

http://www.textile-tree.com/cube/html/ 

 

文:編集部Kazumi

 

「アイリッシュ」と名の付いた素材のこと

2014/02/03

素材には「アイリッシュ・ポプリン」「アイリッシュ・リネン」
「アイリッシュ・クロッシェ・レース」「アイリッシュ・ツイード」
「アイリッシュ・キャンブリック」など
「アイリッシュ」と名の付いた素材も多く見られます。

「アイルランド」は古くからケルト人の住み着いた
宗教観や精神性の高い土地であり、
ヴァイキングの侵入、イギリスによる植民地化、
南北アイルランドの分割など、侵略や支配を受けながらも
圧政に抗し続けた国でもあります。

16世紀のイギリス支配下では、
ケルト人の話すゲール語や踊ることを禁止されました。
アイリッシュ・ダンスは、
上半身を動かさず足だけで踊るステップダンスですが
窓を通して外から見た時に、
踊っていることを悟られないように考えられた
ダンスだといいます。

2009年の山田太一監督のドラマ『ありふれた軌跡』で
主演の加瀬亮さんが、このアイリッシュ・ダンスを
踊っているシーンがありました。
まさに「どうにもならない抑圧に負けない静かな抵抗」
という象徴的な演出です。
ちなみにドラマの主題歌はアイルランドの歌姫エンヤでした。


・・・・『テキスタイル用語辞典』より・・・・・

また、アイルランドには宗教弾圧で亡命してきた
ユグノー(カルヴァン派の人々)も多く移り住みました。
もの作りの技術能力が高いユグノーを
イギリスが積極的な保護したという背景もあります。
熟練工のユグノーは毛織物、絹織物、リネンなどの
優れた技術をイギリスやアイルランドにもたらし、
前述した「アイリッシュ・ポプリン」「アイリッシュ・リネン」などを
生み出すこととなりました。
「アイリッシュ・クロッシェ・レース」が有名になったのは
アイルランドの「ジャガイモ飢饉」が切っ掛けです。

テキスタイル誕生には、宗教や政治などの
歴史的背景や逸話があります。
素材に興味のわいた方は『テキスタイル用語辞典』も
ぜひご覧ください。
読み物としても面白い解説が好評です。

http://www.textile-tree.com/cube/html/ 

 

文:編集部Kazumi

『ヤマナシ ハタオリトラベル』(有)テンジン

2012/09/10

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(有)テンジンをご紹介します。

(有)テンジン<テンジンファクトリー>
は、富士吉田の織物産地で
最も注目されている織物工場のひとつです。
かつては服地の裏地を織り、その後は傘地やネクタイを作ってきました。
ほとんどの織物工場は、コンバーター(問屋)からの注文を受けて
生地を織ります。


・・・・テンジンファクトリーの自社ブランド『ALDIN』のロゴマーク・・・・


・・・・『ALDIN』のパンフレットもオシャレでいい感じです・・・・

しかし、三代目の小林新司さんは、100%外注のシステムに疑問を感じました。
産地の機屋も自分たちで企画して、生地だけではなく製品も販売できる
メーカーとならなければこれからの時代を生き延びていけないと考え、
2000年にリネンブランド『ALDIN(アルディン)』を立ち上げました。
織物工場が企画して製品を販売する「ファクトリー・ブランド」の誕生です。
「生地を織り、デザインし、仕立てる」すべての工程を手掛けます。
織機もあえて高速のレピア織機から、昔ながらの低速のシャトル織機に切り替え、
ふっくらと温かみのある麻織物づくりにこだわりました。


・・・・(有)テンジンの専務であり、三代目の小林新司さん(左)・・・・


・・・・“機械美”に圧倒されるシャトル織機を揃えた工場・・・・


・・・・シャトル織機に柄を織りなすドビー装置を装着した「ドビー織機」。
パンチカード(紋紙)に図柄のデーターを組み込んで使用します。
コンピューター化が多い中で、パンチカードを使用して織るのは
非常に希少です・・・・


・・・・タイプライターのようなこの機械は、
ドビーのパンチカード(紋紙)を作るものです。
初めて見ました!もちろん現役で使用されているからすごい・・・・

小林新司さんは、かつて織物が丁寧に織られ、大切に使われた時代のように
長く使い込まれ“アンティークリネン”“ヴィンテージリネン”となるような
製品づくりを目指しました。
ヨーロッパでは当たり前のように親から子へと受け継がれている「リネン文化」を
富士吉田の地から発信し始めたのです。


・・・・シャトル織機は熟練した職人さんたちの技術なくしては織れません・・・・


・・・・よこ糸を巻いたスピンドルを中に入れて使用するシャトル・・・・


・・・・シャトルが往復して(折り返し)よこ糸を織りなしていくシャトル織機は、
両端が織り込まれ、「耳(セルヴィッチ)」と呼ばれる独特の端が織り上がります。
セルヴィッチもデザインのひとつとして、色を代えて配色したりします・・・・

シャトル織機は、糸や機械を手で微調整しながら、
長年の勘と経験で織る“職人さん”の熟練した技術が活かされる織機です。
小林新司さんは、代々伝えられてきた「高い“技術”を受け継いでいくこと」を
大きな使命としたのです。
そのためには完成度の高い“デザイン”を吹き込んでいくことが
不可欠と痛感していました。
いくら素晴らしい技術を持っていても、製品としてのデザイン的な魅力がなければ
マーケットで受け入れてもらうことができません。
目指したのは、流行に左右されない「ロングライフデザイン」でした。


・・・・ショールームで説明してくださったのは、小林新司さんの奥様。
アルディ事業部を担当しています・・・・


・・・・ショールームは心地良い日が入り、
アトリエ風のオシャレな雰囲気を醸し出しています・・・・


・・・・オリジナルブランドの『ALDIN』のカタログも丁寧に作られています。
織りから製品まですべて地場で作り上げており、
「YAMANASHI,JAPAN」の文字が印象的でした。
「YAMANASHI」をブランド化しようとする意思が伺えます・・・

『ALDIN』の製品のデザインにはデザイナーの妹さんご夫婦が
携わることになりました。
妹さんご夫婦は、人気ブランド『R&D.M.Co-』を手掛けている
オールドマンズテーラーの、しむら祐次さんと、とくさんです。
ヨーロッパのハウスリネンのような、手仕事風の刺繍、シンプルでモダンなドビー柄、
かすれ感を出したスペック染め、ネクタイの織り技術を応用したやすら織り、
バイオ加工でソフトに仕上げるなど、懐かしく生活に馴染んでいくような製品です。
テンジンファクトリーでは、他にもネクタイやストールの『LOPEN』、
カーテンなどの『Processus』などのブランドを展開しています。
OEMもやっていますが、すべて地場で作る丁寧なもの作りが特徴で
大量生産はできません。


・・・・・高密度のワッフル織り(蜂巣織り)のリネンタオル・・・・


・・・・シャトル織機で織った証しの「耳」もきれいです・・・・


・・・・優しい肌触りのリバーシブルの水玉柄・・・・


・・・・パリパリにかたい生機(きばた)状態のリネンのソムリエエプトンですが…・・・・


・・・・洗い込んでいくとソフトでとってもいい風合いになっていきます・・・・


・・・・かつて本業だったネクタイも麻素材で展開・・・・


・・・・先染めのチェックやストライプも素敵なカーテン地に・・・・


・・・・シンプルな麻のドレスやエプロン・・・・

富士吉田の織物産地は、小規模な家族経営が多いのが特徴です。
テンジンファクトリーは、織りから製品のデザインまでを家族で作ることのできる
理想のファクトリーブランドとなり、
富士吉田の織物工場の新しい方向のお手本となっています。

富士吉田産地のみならず、高い技術を持っている老舗の織物工場は、
大きな帰路に立っております。
技術に自信を持っている工場は、外注100%の単なる織物工場から
自分たちで企画ができ、製品化まで行える「ファクトリーブランド」に
転身したいと考えているところも多くなってきました。
しかし、マーケットニーズがよくわからなかったり、
製品化の工場背景がなかったり、何をどうやって作っていいのか
模索しているところが多いのも現状です。

もちろん「デザイン力」は非常に重要な要素ですが
自分たちが何を目指し、どういうものを作っていこうとするのかという
「コンセプト」や「ディレクション」がなくしては細部にばかり目がいってしまい
“核”のないもの作りとなってしまいます。
まずは、ブランドとしての哲学をきちんと持ち、
スタートされることを願うばかりです。


・・・・工場の前は木造のショールーム。ペンキを塗ったカントリーハウスのような
温もりのある佇まい。廻りには緑の山が広がります。「こういうところで働きたい…」
そう思わせる環境も重要な気がします・・・・

 

 

『ヤマナシ ハタオリ トラベル』(株)槙田商店

2012/09/09

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(株)槙田(まきた)商店をご紹介します。
(株)槙田商店は慶応2年(1866)創業という、
江戸時代末期から続いている機屋(はたや)さん(織物メーカー)です。
創業当初は、山梨県の織物産地である「郡内地方」特産の
甲斐絹(かいき)織物卸商を営んでいましたが、震災や戦争、
そして時代の需要の変化などで服の裏地、そして傘地へと切り替えました。
ジャカードや先染めの傘地では、国内生産の約80%のシェアを占めます。


・・・・レピア織機が並ぶ(株)槙田商店の工場・・・・・

甲斐絹は羽織りの裏地に使われた「薄く・軽く・滑りの良い、高級先染め織物」です。
かつては一世風靡した甲斐絹も、非常に高度な技術を要するため途絶え、
現在は“幻の織物”となってしまいました。
しかし、甲斐絹のもつ「先染め・細番手・高密度・紋織り」などの特性を生かし
「服の裏地」「傘地」「ネクタイ地」「布団地」などへとシフトしている
織物メーカーが多いのも、郡内産地の特徴です。

146年という歴史を持つ(株)槙田商店ですが、
最先端技術の導入にも積極的です。
コンピュータージャカードも早々導入し、
現在はレピア織機を中心に、服地や傘地の120cm〜180cmの
広幅を織ることができます。
特に傘などに使用されるオリジナルジャカードは、他社には製造できない
大きな織り柄表現を可能にし、デザインの領域を広げています。


・・・・コンピュータージャカードのコントローラー。
柄のデーターを組み込んだUSBを入れて使用します・・・・


・・・・レピアのジャカード織機。柄を織る「紋織り」には「ドビー」と
「ジャカード」があり、たて糸の動かし方で、より複雑な柄を織ることができるのが
ジャカードです・・・・・


・・・・・たて糸は「綜絖(そうこう)」という細い金属棒の穴に1本1本通します。
1本1本のたて糸を上下運動させながら、その間によこ糸を通し
複雑な紋織り(ジャカード)を作り上げることができます。
(株)槙田商店にはたて糸の数が4000口〜12000口のジャカード織機があります。
1本1本の綜絖に糸を通すことを「綜絖通し」といい、とても根気のいる作業です・・・・・

自動織機は、よこ糸を巻いた「シャトル(杼:ひ)」を使用して織る
「シャトル織機(有杼織機)」と、シャトルを使用しない「無杼織機」に大別できます。
織るスピードの違いから前者を「低速織機」、後者を「高速織機」ともいいます。
生産性の高い「高速織機」を代表するのが「レピア織機」で、
織機に「ジャカード装置」を取り付けたものを「ジャカード織機」と呼びます。
(株)槙田商店のものは、レピア織機にジャカード装置を取り付けた「ジャカード織機」です。


・・・・・「レピア」とは「細い槍状の剣」の意味で、よこ糸をつかみ、
たて糸の間に差し込んで織ります。左側にある「レピア」がわかるでしょうか?・・・・・


・・・・「レピア」を拡大したものです・・・・


・・・・反対側から伸びてきた「レピア」に糸を手渡しするように、つかみ替え、
よこ糸を通します・・・・


・・・・「シャトル織機」は、「シャトル」が往復してよこ糸を通すので、
糸が織り込まれ、両端は「耳」と呼ばれる形状になります。
「レピア織機」は一方通行なので両端は房状になり、織り上げた後に切断されます。
切断された紐状のものは「房耳(ふさみみ)」と呼ばれます。
房耳は、以前は廃棄されていましたが、最近は手編みや手織りなどに
利用されるようになってきました。クラフト素材としても注目されはじめています・・・・


・・・・ジャカード織機はたて糸が上に長く伸び、2階建てになっていて、
上部にたて糸のコントローラーがついていいます。
2階に人がいるのがわかりますか?・・・・


・・・・2階に上がり糸のコントローラーを見学です。
自動織機になる前の手機(てばた)の時代は、紋織り(ジャカード)を織るときは
2階建て部分に人が上がり手で糸を上げ下げしていました・・・

織物工場見学のあとは、傘工房の見学です。
織り上げられた傘生地は4枚くらいに重ねられ、三角定規のような
専用のスケールで職人さんが丁寧に手で裁断します。


・・・・・メモや写真を撮りながらみなさん真剣です・・・・


・・・・これが傘を裁断する時に使用するスケール。デザインやメーカーの規格により
たくさんの種類が用意されています・・・・


・・・・(株)槙田商店のジャカードや先染めの傘地は、
国内生産の約80%のシェアを占めます。プリントと違い、ジャカードは
傘の裏側も織り柄があらわれて、きれいです・・・・


・・・・・(株)槙田商店は、傘生地の提供ばかりではなく、オリジナルの傘も作っています。
ジャカードの傘は、絵柄に合わせ織り方を変えているので、とても高級感があります
(老舗っぽいタグです!)・・・・


・・・・1本1本手づくりの傘は、ひとつつひとつ柄合わせもしっかりされていきます・・・・


・・・・・傘生地は上糸だけで縫う特殊なミシンを使用します。
上糸だけでチェーン状に縫い上げるので、ニットのように
縫い代が伸び縮みできるのが特徴です・・・・


・・・・・裁断した生地はこのように縫い合わせられ、傘らしくなっていきます・・・・


・・・・・縫い代は三つ巻にされます。日本洋傘振興協議会(JUPA)では
JUPA(ジュパ)基準を設定し、会員の洋傘の品質・信頼・安心の証として、
JUPAマークを添付しています・・・・


・・・・「傘を買うならMEDE IN JAPANで<JUPA>マークのあるものを!」と
職人さんの説明にも力が入ります。携帯電話の写真を使っての熱い解説です!・・・・


・・・・山梨県南都留郡西桂町にある創業慶応2年(1866)の(株)槙田商店です。
なまこ塀の蔵がある、歴史を感じる建物です。回りは山に囲まれ、
とてもきれいな気持ちになれる環境です・・・・

(株)槙田商店は伝統技術を活かしてながら、
新しい技術を上手に取り入れている会社です。
「傘地」という分野に特出しているのも魅力です。
今回は時間がなくて見せていただけませんでしたが、
200年前の素晴らしい織りサンプルもたくさんあり、これにも興味津々です。
いいものを見せていただきありがとうございました。

カトリーヌ・ド・メディシスの「メディチ・レース」の秘密Vol.-2

2012/08/07

レースセンター原宿が主催する
アンティークレース鑑定家、ダイアン・クライスさんの
レースレクチャーがありました。
今回のテーマは「カトリーヌ・ド・メディシスのレース」。
世界で5枚といわれるカトリーヌ・ド・メディシスのレースの
1枚を所有しているダイアンさんから見せていただいたレースには
驚くような秘密が隠されていました。


・・・・カトリーヌ・ド・メディシスが使用したベッドリネンのレティセラ・レース・・・・

イタリアの名門メディチ家からフランス王の王妃となった
カトリーヌ・ド・メディシスにとって
「王の子孫」を作ることは、命がけの大役です。
カトリーヌは占いにも熱心で、ノストラダムスなどの占星術師を
重用し、様々なアドバイスを得ていたといいます。
王族にとって“後継者”を生むことは最も重要な仕事。
“寝室”は子孫を得るための重用な場所です。
寝室は夫婦だけのプライベートルームではなく、
たくさんの人々によって“子づくり”のための協業が行われます。

ベッドカバーなどの装飾品にも“子孫繁栄” を意味する
様々なシンボルが盛り込まれています。
ダイアンさんが、カトリーヌがベッドルームで用いていた
レースの装飾模様をリーディングしてくれました。


・・・・大陽のようなモチーフのレティセラ。回りは花のアップリケ・・・・

装飾カバーとして使われていたレースは、
カットワーク、ドロンワーク、刺繍を併用した「レティセラ」というものです。
中央に3つの大きな「メダリオン」があり、
その回りには「ロゼット」が配置。
メダリオンの回りには花などがアップリケされています。

メダリオンとは「大型メダル」のことで、
大陽、魔除け、宇宙のシンボライズなど様々な解釈があります。
カトリーヌのレースには、大陽とはっきりわかるデザインもあります。
「ロゼット」は中央から放射状に広がる円形模様で、菊花紋にも似ています。
元来はバラの花から由来し、一種の大陽マークともいわれています。
大陽は、“不滅”のシンボルです。


・・・・正方形の中にロゼット模様があり、回りは花のアップリケ・・・・

以前、ダイアンさんのレクチャーで
サークル(円)とクロス(十字)を組み合わせ、
回りをスクエア(四角)で囲んだ「レティセラ」の模様について
伺ったことがあります。
サークルは「天国」を意味するものでもあり、
クロスは「天と地の中心」で生命をあらわします。
そしてスクエアは「地球」。
正方形は下記の4つの重要なシンボルだといいます。
(1)4つの元素「土・水・空・火」
(2)4つの季節「春・夏・秋・冬」
(3)4つの方向「東・西・南・北」
(4)楽園の4つの小川(エデンの園にある東西南北にクロスになった川)

興味深いのはメディチ・レースに縫い込まれた
アップリケされた花や小枝や果物です。
これらのモチーフには、
結婚、母、多産、妊娠、陣痛などを意味するキーワードが読み取れます。
「カーネーション」は、“結婚”の重要なシンボルであり
すべての人々の“母”の象徴。
“マリア”をあらわすものでもあり、キリストの受難を象徴します。


・・・・回りの花のアップリケのはカーネーションのよう・・・・

「アイリス」は、キリストとマリアの“威厳” の象徴。 “忍耐”を意味します。
「シクラメン」はイタリアやフランスでは、
陣痛が速やかになるように身につけるといいます。
「葡萄の房」は、キリストのシンボルであり、多産のシンボルでもあります。
ベッドリネンでは重用なモチーフです。
「スズラン」は、キリストと花嫁の愛の象徴。結婚の象徴的な価値を意味します。


・・・・左上に見えるのは葡萄のアップリケ・・・・

そして「ドングリ」には、メディチ家独特の意味が隠されているようです。
ルネサンス期に銀行家として君臨したメディチ家の
「金を溶かす壷」であり、「たくさんの成長」を意味するといいます。
カトリーヌは「フランスの王位を救わなければならない」という
使命感を感じていました。
ドングリは強健な後継者の象徴であり“王冠”をあらわしているのです。


・・・・回りにはドングリのアップリケ・・・・

カトリーヌは、結婚して10年間子宝には恵まれませんでした。
妊娠するために、アーティーチョークや鶏の砂肝などの
特別な料理を食べたり、はたまた騾馬の尿を飲むなど
あらゆる手段を用いたとされます。
その後カトリーヌは男子を出産し、合計9人の子供を授かっています。

カトリーヌがイタリアからもたらした
「ブラトー・レース」や「レティセラ」などのレースは
ベッドリネンやテーブルセンターをはじめ
ファッションでもヨーロッパに一大ブームを巻き起こしました。
特に「レティセラ・レース」と「プント・イン・アリア」を組み合わせた
「ラフ」という顔を覆うような扇状の襟は“オーラ”のシンボルであり、
16世紀の王侯貴族やブルジョワジーのステイタスとなりました。
レース襟にはワイヤーが入れられ、糊付けされ、高さや大きさが競われました。
鯨の骨を入れたコルセット、上品なランジェリー
軽い香りの香水をフランスにもたらしたのもカトリーヌだといいます。


・・・・大粒の宝石やパールを縫い取った衣装を身に着けた
マリー・ド・メディシス
(1575〜1642)・・・・

その後メディチ家からは、カトリーヌの遠縁にあたる
マリー・ド・メディシスアンリ4世に嫁ぎます。
メディチ家の莫大な財産を目当にした政略結婚ともいわれていますが、
マリーは持参金を宝石で着飾った衣装につぎ込み
イタリアの贅沢なファッションをフランスにもたらします

この時代の宝石類は、アクセサリーにするのではなく
衣装そのものに、金やパール、宝石類を
惜しげなくふんだんにちりばめるのが特徴です。
16世紀後半には、まるで宝石で織った衣装のごとくの
宝石ファッションが最盛期を迎えます。

2012年5月にスイスのオークションで、
アンリ4世がマリー・ド・メディシスにプレゼントし、戴冠式で身に着けた
ボーサンシー(Beau Sancy)」と呼ばれる35カラットのダイヤモンドが
7億700万円で落札されました。
このダイヤモンドは17世紀にはオランダに渡り、その後イングランド、
そしてプロイセン王家へと受け継がれてきたものです。
一体どなたが買われたのでしょう…
レースや宝石…ヨーロッパの歴史的な芸術品にロマンが広がります。

 

 

カトリーヌ・ド・メディシスの「メディチ・レースの秘密」Vol.-1

2012/08/04

ザ・レースセンター原宿が主催する
アンティークレース鑑定家のダイアン・クライスさんの
レースレクチャーがありました。
今回のテーマは「カトリーヌ・ド・メディシスのレース」。
私の好きな歴史分野であり、期待も高まりましたが
期待以上のものすごいサプライズがありました!


・・・・カトリーヌ・ド・メディシス(1519〜1589)。夫亡き後は
宮廷で隠然たる政治力を発揮。フランスの王位継承のために尽力しました・・・・

イタリアの新興富豪一族メディチ家に生まれたカトリーヌ・ド・メディシスは、
1533年、14歳でフランス王フランソワ1世の第2王子、後のアンリ2世と結婚。
当時のイタリアは、ファッション、芸術、食文化などの最先端にありました。
カトリーヌ・ド・メディシスの結婚は
イタリアからフランスにレースや食のマナーや料理などをもたらし
フランスのレース産業や食文化の発展に
貢献したことでも知られています。
手づかみで食事をしていたフランスに
テーブルクロスとテーブルセンターを掛けたテーブルセッティング、
ナイフとフォークを用いる食事作法などの新しいプロトコールができ、
アイスクリームやマカロン、オムレツもイタリアから伝わりました。

16世紀頃のレースは「宝石」にも匹敵する価値のあるものです。
莫大な利益をもたらすレース産業は“国策産業”として門外不出。
ヴェネチアでは「レース職人が国外でレースを作ると死刑」
という法律があったほどです。


・・・・ネットの生地に模様をかがっていくフィレ・レース&ブラット・レース
(ダイアン・クライスさん所蔵)・・・・

カトリーヌ・ド・メディシスは、「美しい手を持っていた女性」と評されています。
メディチ家で培われた知性とエレガンスが漂い、芸術への造詣も深く
しかも優れた刺繍技術を身につけていました。
彼女がフランスにもたらした手芸は、中世からイタリアに伝わる
「ブラトー・レース」または「ブラトー・ネット」と呼ばれる白糸刺繍です。
正方形のネット状の基布に模様をかがっていく
初期のレース技術のネット刺繍で、
ルネサンスの花や動物の装飾モチーフを施します。
「カトリーヌ・ド・メディシス刺繍」という名前でも知れ渡っています。
フィレ(網目)にニードル(針)で模様を施すものもあることから
フィレ・レースとも呼ばれます。

その後カトリーヌは、イタリアから刺繍職人も呼んでおり、
ハイレベルなネット刺繍がベッドカバー、枕カバー、
カーテンなどの室内装飾に用いられ、
「ア・ラ・モード」としてフランスに広がっていきました。

実はダイアンさんは、最近凄い発見をしたのです。
オランダのレース専門家のレポートを読んでいたところ
そこにカトリーヌ・ド・メディシスが所有していた
上質のリネンで作られた16世紀の「レティセラ(初期のニードル・レース)」や
「ニードルポイント・レース」のベッドカバーが紹介されていました。
3つの大きなメダリオン飾りがあり、
その回りにはロゼット、薔薇飾りのトリミング。
ニードルポイント・レース、ボビンレース、カットワーク、アップリケなどが
ミックスされた珍しいものでした。

カトリーヌのベッドルームで、装飾用のカバーとして使用されていたものです。
レースは世界に5枚あるとされ、3枚はオランダに、1枚はイギリスに、
そしてもう1枚は、なんと日本にあるというのです。


・・・・世界で5枚しかないとされるカトリーヌ・ド・メディシスのレース
(ダイアン・クライスさん所蔵)・・・・

といって…
ダイアンさんは、カトリーヌ・ド・メディシスのレースを取り出し
広げてくれました。
そこに集まっていたみなさんからは、驚きの声が!
目の前に16世紀のメディチ家の遺産が広げられているのです。

日本にあるという、もう1枚のレースの所有者は
なんとダイアンさんだったのです。
ボビンレースの名人で、レースコレクターでもあった
ダイアンさんの祖母から譲り受けたものですが
カトリーヌ・ド・メディシスのレースと知ったのはつい最近。
その瞬間、ダイアンさんは思わず声を上げ、鳥肌が立ったといいます。


・・・・『テキスタイル用語辞典』p228「レティセラ」の解説・・・・

そして私は別の意味で、大変感動しました。
なぜなら、このレースは『テキスタイル用語辞典』に載せるために
撮影させていただいた、
見覚えのある「レティセラ」レースだったからです。
博物館クラスの歴史的なレースを辞書に載せることができたことは
本当に光栄です。

レースにはカトリーヌ・ド・メディシスの
たくさんの秘密が隠されていました。
その話しは次回のお楽しみです。

美しく、かつ快適。トリアセテートの「COOLバランス」Vol.2

2012/06/15

三菱レイヨン・テキスタイル2013春夏展示会の第2弾です。

今年2月のプルミエールビジョンに出展し
海外ブランドから人気の高かったベスト15がピックアップされていました。
日本では、ソフトな肌触りを求める傾向があり
トリアセテートとポリエステルの組み合わせがほとんどですが
海外ではトリアセテート100%も定番素材として使われ
黒を中心に縮緬風などの需要もあります。

・・・・2013春夏のトレンドカラーのオレンジ・・・・


・・・・プルミエールビジョンのPICKUP15・・・・

最近ではセリーヌなど、トレンドセッターのブランド需要も増え
鮮やかな色使いやスポーティな表現など
随分トリアセテートのイメージも変化してきました。

布帛やカットソーが中心の「ソアロン」ですが
「接触冷感性」「吸湿速乾性」「ウォッシャブル性」などが見直され
横編みニットでも注目されはじめました。


・・・・美しい光沢と着心地の良さを訴求する「ソアロン」の横編み・・・・

トリアセテートは“黒”の発色がいいことから
ブラックフォーマル素材として定評があります。
これは繊維に溝があるため、乱反射することで
深みのある染色が可能になるのだといいます。
今回の展示会ではレースのトリアセテートにも力が入っていました。

・・・・美しいピンワークでドレーピングしたドレス。
ピンワークのできるデコレーターさんもほとんどいらっしゃらなくなったようです。
三菱レイヨン・テキスタイルでは今後も続けていきたいと話していました・・・・


・・・・通常、エレガントなレースはレーヨン素材が多いですが
トリアセテートのレースだとウォッシャブルが可能になります。
トリアセテート無地とレーヨンレースの切り替えのデザインに起っていた、
「水洗いすると縮みができてしまう」という問題も解消されます・・・・

トリアセテート素材は、米沢、新潟、尾州、桐生などの産地とコラボしたり
企業とコラボして、さらなる機能素材にも生まれ変わっています。
先日の尾州産地の『尾州マテリアルエキシビジョン』でも
清涼感のある春夏の有力素材としてトリアセテートの提案も目立っていました。

・・・・蝶理(株)に「ソアロン」の原糸を提供し、蝶理(株)が開発したコート用の機能素材・・・・

今回の展示会で貫かれていたのは
「“いい素材”はトータルなバランスでみると、決して高いものではない」
ということです。
このことは最近の低価格傾向と対極にあらわれてきているもので
いい素材、いいクォリティの商品を着ることは結果的には長持ちしているし、
「いいものを着ていることが自分の自信にも繋がる」ということに
気がつきはじめた人も多くなってきました。
新しい日本のマーケットの動きに期待がかかります。