Archive for the ‘地方の話しあれこれ…’ Category

近江湖東産地で、麻織物文化を守る「林与」さんの話

2015/04/01

林与(はやしよ)」さんは、滋賀県近江の麻織物メーカーで
近江上布(おうみじょうふ)の織元として
明治30年に創業しました。
現在、四代目が林与志雄社長です。
小さい工場ではありますが、シャトル織機を中心に
量産ではなかなかできない
質の高い丁寧なものづくりを行い
最近は海外からの需要も増えています。

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・・・シャトル織機の前に立つ林社長・・・

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・・・かつて生産されていた近江上布・・・

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・・・倉庫に眠っていた林与の近江上布のアーカイブ。
50年以上前に織られていた近江上布の見本が
数千枚から1万枚ほど確認されました・・・

林社長はとても志が高く、ものづくりの姿勢は
自らが綴る「リネン日記」からも伺えます。
1日1000件以上のアクセスがあるという人気ブログで
(4〜5年前の話ですから今はもっとあると思います)
テキスタイルやファッション業界に関わる方をはじめ
多くの方に読んでいただきたいブログです。

なかなか生産が難しい麻の高密度のキッチンリネン、
麻のデニム、先染めリネンをはじめ、
今では生産されていないアイリッシュリネン糸を織る
プロジェクトに挑戦したり、
自社のアーカイブの近江上布柄をプリント柄として
復刻させるなど、ちょっとずつ夢を叶えてきました。

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・・・林与にストックされていたアイリッシュリネン糸・・・

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・・・アイリッシュリネンハンカチプロジェクトで
製作されたハンカチ・・・

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・・・野州市の「紺九(こんく)」とコラボした
ヴィンテージ・アイリッシュリネンを本藍染めにした生地・・・

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・・・『インターテキスタイル上海2014』テキスタイルアワードで、
総合の3位を受賞したトロフィと賞状・・・

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・・・受賞したリネンのブラックデニム(左)・・・

しかし林社長が、最も危惧しているのが
かつては麻織物産地として名を馳せていた
近江湖東産地の衰退です。
後継者不足などもあり、年々廃業が続き
今では数えるほどしか織物工場が残っていません。
そのうち2つが今年廃業予定です。
廃業する工場が使用していた織機は
スクラップされ鉄くずとなってしまいます。

シャトル織機はもう生産されていない織機です。
しかも今回廃業される工場には「絽紋(ろもん)」という
ジャカードの「絽」を織る、とても希少な織機があります。
近江湖東産地の麻織物がなくなるということは
これまで職人さんが築き上げてきた
「日本の麻織物文化」がなくなることなのです。

林社長は、湖東地区の本場の麻織物の伝統を
なんとか残したい。
家族経営の中で大事に守られてきた方たちの思いを
なんとか自分が引き継ぎたい。
そのためには、まずはこの織機を守りたいと、
このたびクラウドファンディングの「REDYFOR」で
「近江湖東産地で、衰退しつつある
本場の麻織り文化を守りたい!」
というプロジェクトを立ち上げ、
支援を募ることになりました。

https://readyfor.jp/projects/ASAORIHOZON

これは、廃業する工場の織機を10数台移設し
稼働させるための資金集めのプロジェクトです。
期限は4月5日(日)で、目標金額は100万円です。
4月5日(日)23:00時点で100万円以上集まった場合のみ
決済が完了されます。

はじめは、告知不足でなかなか集まらなかった支援金も
皆様が知るとともに支援金が増え、
4月1日(水)現在で、110万円を超えました!
応援している一人として、本当に嬉しい限りです。

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・・・「プレミアム・テキスタイル・ジャパン2014」で、
ミラノ・ウニカのシルビオ・アルビーニ会長(中)と林与の林社長(右)・・・

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・・・ストールとワンピース生地の2種類を提案・・・

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・・・林与の近江上布柄をインクジェットプリントで
復刻させたもの。手前の小さな布が元の近江上布。
奥がプリントのストール。見た目はほとんど変わりません・・・

林社長は、現在ほとんど一人で国内外を動き回り
大変ハードな毎日を送られていますが、
「まだ40代という若い年代だからできる。
今をやらないと、多分できなくなると思う。
このタイミングを逃してはだめだ」と
頑張っておられます。
移設する織機を設置する建物や土地の購入資金とは
自力で捻出しようとしています。

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・・・近江湖東地区。水が上がってくることもあるので
土台を高くした上に建物が建てられています・・・

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・・・林与の工場内・・・

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・・・林社長とスタッフのインさん・・・

プロジェクトの締め切りまであと数日ではありますが
近江湖東地域の麻織物産地としての現状を
多くの方にまず知っていただきたい。
そして「Made in Japan」のものづくりが
過去の遺産にならないように、
産地で志を持って頑張っている方を
ぜひ応援して、次の世代へとつないでいきたいと
心より願っています。
これは近江湖東地区だけではなく、
日本の織物産地の多くに見られている現状ですから。

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.5林キルティング

2012/11/26

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。

大阪・岸和田の「林キルティング」は、キルティングの可能性を広げた
付加価値の高さが特徴です。
代表の林千尋さんは全国を走り回り、
ジャカード、刺繍、ステッチなど、
優れた加工技術を持つ工場を探し当てコラボレーション。
高度なテクニックを駆使した、
クリエイティブなキルティングを作り上げています。


・・・・一見プリーツのようですが、“溶ける糸”を使用して
キルティング技術でつくったもの・・・・


・・・・キルティングした糸を溶かすと、絞りやプリーツのように
立体的な表面感となります。右はサテン、左はサテンにオパール加工を
施したもの。同じキルティングでも生地により表情が違います・・・・


・・・・さらに転写プリントを施したもの・・・・

「林キルティング」は、林さんが一代で築いたもの。
父親は青果業を営んでいましたが、父親とは違う職業を選びました。
しかし、事業家になりたいという林さんの志を父親はバックアップ。
大学を卒業後、キルティングの機械を導入し、
早速操業しましたが、初めの5〜6年は
まさに勉強の時代だったといいます。


・・・・大学卒業後創業し約30年。すべて独学でやってきたという林さん・・・・

林さんは、全国のキルティング工場を尋ね回り技術を学び、
さらに、ジャカード、刺繍、ステッチなどを得意とする工場と
協業することで、キルティングのさらなる可能性を広げました。
日本にはスパンコールやコード刺繍など、
特殊加工に高い技術を持つ工場があります。
しかし、規模が小さいために、残念ながら発信力が弱い。
そういう優れた特殊加工技術や設備をもつ工場と連携していくと
他にはなかなか真似のできない
オリジナリティのあるもの作りが可能になります。
このコーディネート力は、
全国を走り回った林さんならではのノウハウです。


・・・・ベルベットにオーガンジーを重ね、キルティング刺繍。
生地の色や刺繍の仕方により、表面感が違って見えます・・・・


・・・・絞りのようなキルティング・・・・

パリのプルミエールヴィジョンにも出展し、
オリジナリティのある高度なもの作りは
国内外の有名デザイナーからも高い評価を得ています。
林さんは、付加価値を求めるメーカーさんに向けて
小ロット対応を行ったり、
素材・福祉材・加工法からのアドバイスを含めた
商品開発も行っています。
もちろん海外への進出にも力を入れています。


・・・・「林キルティング」のイメージブランドの『マレンコ』・・・・


・・・・一見ジャカードのように見えますが、
オーガンジーを重ね、キルティング刺繍をして、
あと染めしたコート。色合いが立体的です・・・・


・・・・キルティングとニードルパンチの組み合わせ。
以前プラダにもこのテクニックが見られました・・・・


・・・・キルティングのパネル柄。かなり凝った柄ができます・・・・

工場を立ち上げ初めて製品ができた時、まずはともあれと、
「無鉄砲にも、コシノヒロコさんの門を叩いた」そうです。
コシノヒロコさんは、初めて見る林キルティングさんの
生地を気に入ってくださり、それは今日まで続いています。

そういえば、コシノヒロコさんも林さんも同じ岸和田出身。
もちろん林さんも生粋の「だんじり男」!
岸和田の「だんじり魂」でもって、
世界に大きく羽ばたいて行くことを、心より応援しております。

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.4伝統と革新の有松鳴海絞

2012/11/25

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。


・・・・ウールや麻、ポリエステルなどに二次加工をして新しく表現した「有松鳴海絞」・・・・

「有松鳴海絞(ありまつなるみしぼり)」は、
江戸時代より、愛知県名古屋市の有松地域(有松絞り)と、
鳴海地域(鳴海絞り)を中心に生産されている伝統的な絞り染めで、
木綿の絞りの手拭や浴衣地が代表的。
「括る・縫う・巻く」の3つの基本動作で、
手蜘蛛絞り、疋田三浦絞り、雪花絞り、鹿の子絞り、帽子絞りなど
100種類以上の絞りの技法が生み出され、様々な柄や形が作られます。
これが「有松鳴海絞」の最大の特徴となっています。

今回の『T・N JAPAN』には愛知県絞工業組合から
スズサン、(有)絞染色 久野染工場、(株)山上商店の3社が出展。
いずれも、伝統工芸品とは一線を画す、
現代のライフスタイルに根差した「有松鳴海絞」の
新しいクリエーションを展開しているメーカーや工房です。


・・・・左から藤井祥二さん(絞染色 久野染工場)、村瀬裕さん(スズサン)、
山上正晃さん(山上商店)・・・・

愛知県絞工業組合の理事も務める、「スズサン」の村瀬裕さんは、
「有松鳴海絞」の企画・製造・販売を行うかたわら、
絞りの体験教室や講習会など、
絞りの楽しさや可能性を広げる啓蒙活動にも力を注いでいます。

木綿に施す伝統的な「有松鳴海絞」だけではなく、
ウールや麻、ポリエステルに伝統的な括りや縫い取りの絞りを行い、
さらに塩縮加工、シュリンク加工、縮絨、ヒートセットなどの二次加工を施す、
新しい「有松鳴海絞」を開発。
「有松鳴海絞」の技法が、和の分野だけにとらわれることなく
ファッションやインテリア分野など、もっと自由に表現できるものとして
新たな価値を創造し続けています。


・・・・ヒートセットを施し、形態を安定させたベルベットの絞り。
シルクやポリエステルにヒートセットを施すことで、まるで不思議な
生物のような立体的な表面感を出すことに成功しました・・・・

絞り卸製造業の(株)山上商店の山上正晃さんは、
主に製品の企画を行っています。
絞りの加工業者さんに発注し、製品化し、販売していく役割です。
新しいもの作りのマーケットの開拓なども行っています。


・・・・ウール100%に「絞り」+「縮絨」「染色」「抜染」の組み合わせにより
様々な表情があらわれることを示した、サンプルボード・・・・


・・・・ウール100%の加工しない生地・・・・


・・・・「手筋絞り」をして、黒く「染色」してから「抜染」したもの・・・・


・・・・「巻き上げ絞り」をして、藍色に「染色」してから「縮絨」を弱くかけたもの・・・・


・・・・「手筋絞り」をして、グレーに「染色」したもの・・・・


・・・・赤に「染色」してから「縮絨」を強くかけたもの。
膨らんでいる部分は“コイン”を入れて絞った「コイン絞り」・・・・

「スズサン」の村瀬裕さんは海外への進出も積極的で、ドイツで息子さんが
絞りの会社を作り、絞りのランプシェード、クッション、ストール、
ファブリックなどをヨーロッパやアメリカなどで展開しています。


・・・・海外販売も展開している「スズサン」の手絞りのランプシェード・・・・


・・・・非常に大胆でモダンな柄のクッション・・・・

今回の展示会にはいらしていませんでしたが、
(有)絞染色 久野染工場の代表である久野剛資さんは、
絞り作家としても活躍されている方です。
伝統的な和装絞りはもとより、
三宅一生をはじめとする国内外のデザイナーの作品、
舞台衣装、インテリアなど、幅広い分野を手掛けています。
久野さんもやはり、受け継がれてきた絞りの技術を
後世にも伝えていきたいと、名古屋芸術大学から
インターンを受け入れたり、見学者のために工房を開放したり、
体験教室なども開催しています。
今回の展示会にはインターンの藤井祥二さんがいらしていました。
インターンから久野染工場に入社する学生さんも少なくないようで
村井さんも卒業後の進路を期待されていました。


・・・・「板締め絞り」のウールのストール(左)・・・・


・・・・「帽子絞り」をして縮絨したウールのストール(右)・・・・


・・・・リネンに絞りを入れ、アルカリシュリンクを施したもの(左)・・・・

久野さんもまた「有松鳴海絞」を伝統工芸品に終らせるのではなく、
伝統に縛られることなく、垣根を取り払い、
もっと自由に表現していくことを望んでいます。
そのためには科学技術を利用して表現することも必要です。
伝統的な「有松鳴海絞」からしてみると、
“邪道” とも言われるかもしれませんが、
今の生活にマッチし、地域が活性化していくなら
時代とともに素材も表現も変わってもいいはずだと…。


・・・・絞りを入れた墨染め。シュリンク加工やヒートセットを施したもの・・・・


・・・・若いクリエーターとコラボした絞りのレギンス。
板締め絞りのポップな色・柄使いが新鮮です!・・・・

芸大の学生さんや、若いクリエーターがつくる絞りは
既成概念から解き放たれて、
新しい発想で非常に面白いものが仕上がってくるといいます。
久野さんも村瀬さんも、自分たちが受け継いだいいものを
次の時代につないでいくために、
惜しみなく技術や知識を伝えています。
山上さんは、それを形にしてプロデュース。
熱い3人の想いは、確実に若い人たちに伝わっているようです。

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.2宮下織物(株)

2012/11/10

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。

「濡れ巻き整経」でシルクサテンのドレス地を織り上げる唯一の織物企業

まず一番に伺ったのは、山梨県富士吉田の「宮下織物(株)」です。
宮下織物(株)は、細番手・高密度・ジャカードを中心とした
先染織物が特徴で、
シルクブロケード、サテンやタフタのウエディングドレス生地など、
フォーマル分野を得意としています。


・・・・ホログラムジャカードや、ゴージャスなカットジャカード・・・・

富士吉田には、今年の8月に産地見学のバスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で訪れ、
宮下織物(株)のテキスタイルデザイナー、宮下珠樹さんより
「濡れ巻き整経」でつくったシルクサテンのお話しを伺っていました。
また、「シケンジョテキ」のブログ
「濡れ巻き整経」のプラチナのような輝きの
「経玉(へだま)」という糸を巻いた塊や、
サテンの生地に魅せられていたので
今回の展示会はとても楽しみにしていました。


・・・・「濡れ巻き整経」の「機巻き」作業を行う、武藤うめ子さんの写真・・・・

「濡れ巻き整経」とは、通常は機械で行う整経を、ほぼ手作業で行う
山梨県郡内織物産地独特のシルクのたて糸整経技術です。
生糸を水で湿らせて柔らかくすることで
地合いが引き締まり、コシが強く丈夫になり、
非常に美しい光沢のある緻密な織りを生み出します。
しかし手作業で行う「濡れ巻き整経」は
気の遠くなるような時間と手間がかかるため、衰退の一途をたどり
後継者はほとんどおらず、職人さんは高齢化。
作れる方はほんのわずかです。

「濡れ巻き整経」の様子は、「シケンジョテキ」のブログをご覧ください。

「経枠」作業
http://shikenjyo.blogspot.jp/2012/03/blog-post_12.html

「組み込み」作業
http://shikenjyo.blogspot.jp/2012/03/blog-post_13.html

「機巻き」作業
http://shikenjyo.blogspot.jp/2012/03/blog-post_14.html


・・・・「新小石丸」を用いた「濡れ巻き整経」のシルクサテン。
生成りの上品な色合いです・・・

残念ながら、今回は「経玉(へだま)」は見ることはできませんでしたが
(かなり大きなものらしいです)
皇后御親蚕(美智子皇后が育てられている蚕)と同じ品種の
「新小石丸」を用いた「濡れ巻き整経」の
シルクサテンを見ることができました。
「経玉(へだま)」やサテンの素晴らしい輝きはぜひ
「シケンジョテキ」のブログでご覧ください。


・・・・リズムのある波形が衝撃を和らげ
優しく小物を包み込む小物用トレー『cune(クーナ)』・・・・

宮下織物(株)とプロダクトデザイナー ムラタ・チアキさんが手掛ける
『メタフィス』と協同開発した小物用トレー『cune(クーナ)』も
「濡れ巻き」のような輝きをもつポリエステルサテン生地です。
手でぎゅっとつかんだようなシワ感を求めたムラタ・チアキさんの難題に、
テキスタイルデザイナーの宮下珠樹さんが見事に応えました。
クッション性のある波形状は、よこ糸にポリウレタン糸を使い、
糸の性質で布の伸縮性と自然な凹凸感をあらわしています。
まるで布が呼吸しているようなイメージを持つことから
「レスピリズム・ファブリック」と名付けられています。
洋服やクッション、マットレスなどでも展開されます。
洋服になったデザインを見てみたいものです。

2013/2014A/Wは、“目の錯覚で浮き出る柄”を提案

2013/2014A/Wは、ジャカードが浮上しているシーズンとなっていますが
本来ジャカードを得意とする宮下織物(株)は
さらに“立体感”を特徴にしたテクニカルなジャカードを提案。
糸を切りっ放しにして柄を浮き立たせたカットジャカードや、
ホログラム糸で柄が浮き上がるような錯覚をあたえたものなど
輝きのある糸をポイントにした
大柄でゴージャス感のあるものが多く見られます。


・・・・ホログラム糸を使ったジャカード・・・・


・・・・ラメのアニマルジャカード・・・・


・・・・ゴージャスなカットジャカード・・・・


・・・・ラメ糸使いのカットジャカード・・・・


・・・・目の錯覚で砂絵のようなラメ糸部分のバラが浮き出て見えます・・・・

東京造形大学と富士吉田産地の蜜月(?)関係!

山梨の富士吉田織物産地は、4年程前から東京造形大学とコラボした
「Fujiyama Textile Project」を行っています。
若いクリエーターの感性を取り入れ、新規市場の開拓を目指すもので
約半年かけて新しいテキスタイルを開発していきます。
かなり完成度の高いものが仕上がり、
今回の宮下織物(株)のブースにも、一見クロコダイルやリザードのような
立体的なモダン柄のジャカードが展示されていました。


・・・・東京造形大学の学生とコラボしたジャカードでつくったバッグ・・・・

じつは、宮下織物(株)の若手デザイナー、渡辺絵美さんは
東京造形大学の卒業生。
富士吉田産地とのコラボがきっかけで入社することになりました。
同じようにコラボがきっかけで富士吉田で働いている同期には
「シケンジョ」の臨時職員として活躍している
高須賀 活良さんがいらっしゃいます。
とくにテキスタイル学科は、学生時代から授業で織機と親しんでいるので
かなりのレベルまでのことができ、入社して“即戦力”になるそうです。
福岡県出身の渡辺絵美さんは、
自分の手で自分の感性を生かしたテキスタイルが
つくれる喜びを語ってくれました。


・・・・デザイナーの渡辺絵美さん・・・・


・・・・渡辺絵美さんが初めてつくった「ナバホ」(右)と
「タテガミテキスタイル モサモサ」(左)・・・・


・・・・子供服メーカーに依頼されてデザインした生地・・・・

富士吉田産地は、学生コラボがそのまま産地の
若手後継者育成へと繋がり、企業と学校の関係が
上手くかみ合っているようです。
これは「東京に近い産地」という地の利はもちろんですが、
シケンジョ」が中心になり、上手に産地をまとめながら
今の時代の空気感にあった発信をしているからではないでしょうか。
特に他の産地と違うのは「デザインの発信力」が
できていることだと思います。


・・・・ジャカードをテキスタイルの魅力溢れるカルトナージュにして展示・・・・

一般的に産地の中心となって技術支援や経営支援を行っている機関は
「技術系」の職員が多く、「デザイン」「トレンド」などの
ソフト面への気配りが少ないような気がします。
「シケンジョ」はとても“見せかた”や“発信のしかた”が上手です。
これは…それに関わっている「人の力量」としかいえません。
担当者自身から、この仕事が「好きだから」「楽しいから」という気持ちや
「産地のいいものを伝えたい」という熱意がとても伝わってきます。
そういうところに、同じような気持ちを持つ人たちが
集まってくるのだと、思わずにいられませんでした。

『ヤマナシ ハタオリトラベル』(有)テンジン

2012/09/10

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(有)テンジンをご紹介します。

(有)テンジン<テンジンファクトリー>
は、富士吉田の織物産地で
最も注目されている織物工場のひとつです。
かつては服地の裏地を織り、その後は傘地やネクタイを作ってきました。
ほとんどの織物工場は、コンバーター(問屋)からの注文を受けて
生地を織ります。


・・・・テンジンファクトリーの自社ブランド『ALDIN』のロゴマーク・・・・


・・・・『ALDIN』のパンフレットもオシャレでいい感じです・・・・

しかし、三代目の小林新司さんは、100%外注のシステムに疑問を感じました。
産地の機屋も自分たちで企画して、生地だけではなく製品も販売できる
メーカーとならなければこれからの時代を生き延びていけないと考え、
2000年にリネンブランド『ALDIN(アルディン)』を立ち上げました。
織物工場が企画して製品を販売する「ファクトリー・ブランド」の誕生です。
「生地を織り、デザインし、仕立てる」すべての工程を手掛けます。
織機もあえて高速のレピア織機から、昔ながらの低速のシャトル織機に切り替え、
ふっくらと温かみのある麻織物づくりにこだわりました。


・・・・(有)テンジンの専務であり、三代目の小林新司さん(左)・・・・


・・・・“機械美”に圧倒されるシャトル織機を揃えた工場・・・・


・・・・シャトル織機に柄を織りなすドビー装置を装着した「ドビー織機」。
パンチカード(紋紙)に図柄のデーターを組み込んで使用します。
コンピューター化が多い中で、パンチカードを使用して織るのは
非常に希少です・・・・


・・・・タイプライターのようなこの機械は、
ドビーのパンチカード(紋紙)を作るものです。
初めて見ました!もちろん現役で使用されているからすごい・・・・

小林新司さんは、かつて織物が丁寧に織られ、大切に使われた時代のように
長く使い込まれ“アンティークリネン”“ヴィンテージリネン”となるような
製品づくりを目指しました。
ヨーロッパでは当たり前のように親から子へと受け継がれている「リネン文化」を
富士吉田の地から発信し始めたのです。


・・・・シャトル織機は熟練した職人さんたちの技術なくしては織れません・・・・


・・・・よこ糸を巻いたスピンドルを中に入れて使用するシャトル・・・・


・・・・シャトルが往復して(折り返し)よこ糸を織りなしていくシャトル織機は、
両端が織り込まれ、「耳(セルヴィッチ)」と呼ばれる独特の端が織り上がります。
セルヴィッチもデザインのひとつとして、色を代えて配色したりします・・・・

シャトル織機は、糸や機械を手で微調整しながら、
長年の勘と経験で織る“職人さん”の熟練した技術が活かされる織機です。
小林新司さんは、代々伝えられてきた「高い“技術”を受け継いでいくこと」を
大きな使命としたのです。
そのためには完成度の高い“デザイン”を吹き込んでいくことが
不可欠と痛感していました。
いくら素晴らしい技術を持っていても、製品としてのデザイン的な魅力がなければ
マーケットで受け入れてもらうことができません。
目指したのは、流行に左右されない「ロングライフデザイン」でした。


・・・・ショールームで説明してくださったのは、小林新司さんの奥様。
アルディ事業部を担当しています・・・・


・・・・ショールームは心地良い日が入り、
アトリエ風のオシャレな雰囲気を醸し出しています・・・・


・・・・オリジナルブランドの『ALDIN』のカタログも丁寧に作られています。
織りから製品まですべて地場で作り上げており、
「YAMANASHI,JAPAN」の文字が印象的でした。
「YAMANASHI」をブランド化しようとする意思が伺えます・・・

『ALDIN』の製品のデザインにはデザイナーの妹さんご夫婦が
携わることになりました。
妹さんご夫婦は、人気ブランド『R&D.M.Co-』を手掛けている
オールドマンズテーラーの、しむら祐次さんと、とくさんです。
ヨーロッパのハウスリネンのような、手仕事風の刺繍、シンプルでモダンなドビー柄、
かすれ感を出したスペック染め、ネクタイの織り技術を応用したやすら織り、
バイオ加工でソフトに仕上げるなど、懐かしく生活に馴染んでいくような製品です。
テンジンファクトリーでは、他にもネクタイやストールの『LOPEN』、
カーテンなどの『Processus』などのブランドを展開しています。
OEMもやっていますが、すべて地場で作る丁寧なもの作りが特徴で
大量生産はできません。


・・・・・高密度のワッフル織り(蜂巣織り)のリネンタオル・・・・


・・・・シャトル織機で織った証しの「耳」もきれいです・・・・


・・・・優しい肌触りのリバーシブルの水玉柄・・・・


・・・・パリパリにかたい生機(きばた)状態のリネンのソムリエエプトンですが…・・・・


・・・・洗い込んでいくとソフトでとってもいい風合いになっていきます・・・・


・・・・かつて本業だったネクタイも麻素材で展開・・・・


・・・・先染めのチェックやストライプも素敵なカーテン地に・・・・


・・・・シンプルな麻のドレスやエプロン・・・・

富士吉田の織物産地は、小規模な家族経営が多いのが特徴です。
テンジンファクトリーは、織りから製品のデザインまでを家族で作ることのできる
理想のファクトリーブランドとなり、
富士吉田の織物工場の新しい方向のお手本となっています。

富士吉田産地のみならず、高い技術を持っている老舗の織物工場は、
大きな帰路に立っております。
技術に自信を持っている工場は、外注100%の単なる織物工場から
自分たちで企画ができ、製品化まで行える「ファクトリーブランド」に
転身したいと考えているところも多くなってきました。
しかし、マーケットニーズがよくわからなかったり、
製品化の工場背景がなかったり、何をどうやって作っていいのか
模索しているところが多いのも現状です。

もちろん「デザイン力」は非常に重要な要素ですが
自分たちが何を目指し、どういうものを作っていこうとするのかという
「コンセプト」や「ディレクション」がなくしては細部にばかり目がいってしまい
“核”のないもの作りとなってしまいます。
まずは、ブランドとしての哲学をきちんと持ち、
スタートされることを願うばかりです。


・・・・工場の前は木造のショールーム。ペンキを塗ったカントリーハウスのような
温もりのある佇まい。廻りには緑の山が広がります。「こういうところで働きたい…」
そう思わせる環境も重要な気がします・・・・

 

 

『ヤマナシ ハタオリ トラベル』(株)槙田商店

2012/09/09

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(株)槙田(まきた)商店をご紹介します。
(株)槙田商店は慶応2年(1866)創業という、
江戸時代末期から続いている機屋(はたや)さん(織物メーカー)です。
創業当初は、山梨県の織物産地である「郡内地方」特産の
甲斐絹(かいき)織物卸商を営んでいましたが、震災や戦争、
そして時代の需要の変化などで服の裏地、そして傘地へと切り替えました。
ジャカードや先染めの傘地では、国内生産の約80%のシェアを占めます。


・・・・レピア織機が並ぶ(株)槙田商店の工場・・・・・

甲斐絹は羽織りの裏地に使われた「薄く・軽く・滑りの良い、高級先染め織物」です。
かつては一世風靡した甲斐絹も、非常に高度な技術を要するため途絶え、
現在は“幻の織物”となってしまいました。
しかし、甲斐絹のもつ「先染め・細番手・高密度・紋織り」などの特性を生かし
「服の裏地」「傘地」「ネクタイ地」「布団地」などへとシフトしている
織物メーカーが多いのも、郡内産地の特徴です。

146年という歴史を持つ(株)槙田商店ですが、
最先端技術の導入にも積極的です。
コンピュータージャカードも早々導入し、
現在はレピア織機を中心に、服地や傘地の120cm〜180cmの
広幅を織ることができます。
特に傘などに使用されるオリジナルジャカードは、他社には製造できない
大きな織り柄表現を可能にし、デザインの領域を広げています。


・・・・コンピュータージャカードのコントローラー。
柄のデーターを組み込んだUSBを入れて使用します・・・・


・・・・レピアのジャカード織機。柄を織る「紋織り」には「ドビー」と
「ジャカード」があり、たて糸の動かし方で、より複雑な柄を織ることができるのが
ジャカードです・・・・・


・・・・・たて糸は「綜絖(そうこう)」という細い金属棒の穴に1本1本通します。
1本1本のたて糸を上下運動させながら、その間によこ糸を通し
複雑な紋織り(ジャカード)を作り上げることができます。
(株)槙田商店にはたて糸の数が4000口〜12000口のジャカード織機があります。
1本1本の綜絖に糸を通すことを「綜絖通し」といい、とても根気のいる作業です・・・・・

自動織機は、よこ糸を巻いた「シャトル(杼:ひ)」を使用して織る
「シャトル織機(有杼織機)」と、シャトルを使用しない「無杼織機」に大別できます。
織るスピードの違いから前者を「低速織機」、後者を「高速織機」ともいいます。
生産性の高い「高速織機」を代表するのが「レピア織機」で、
織機に「ジャカード装置」を取り付けたものを「ジャカード織機」と呼びます。
(株)槙田商店のものは、レピア織機にジャカード装置を取り付けた「ジャカード織機」です。


・・・・・「レピア」とは「細い槍状の剣」の意味で、よこ糸をつかみ、
たて糸の間に差し込んで織ります。左側にある「レピア」がわかるでしょうか?・・・・・


・・・・「レピア」を拡大したものです・・・・


・・・・反対側から伸びてきた「レピア」に糸を手渡しするように、つかみ替え、
よこ糸を通します・・・・


・・・・「シャトル織機」は、「シャトル」が往復してよこ糸を通すので、
糸が織り込まれ、両端は「耳」と呼ばれる形状になります。
「レピア織機」は一方通行なので両端は房状になり、織り上げた後に切断されます。
切断された紐状のものは「房耳(ふさみみ)」と呼ばれます。
房耳は、以前は廃棄されていましたが、最近は手編みや手織りなどに
利用されるようになってきました。クラフト素材としても注目されはじめています・・・・


・・・・ジャカード織機はたて糸が上に長く伸び、2階建てになっていて、
上部にたて糸のコントローラーがついていいます。
2階に人がいるのがわかりますか?・・・・


・・・・2階に上がり糸のコントローラーを見学です。
自動織機になる前の手機(てばた)の時代は、紋織り(ジャカード)を織るときは
2階建て部分に人が上がり手で糸を上げ下げしていました・・・

織物工場見学のあとは、傘工房の見学です。
織り上げられた傘生地は4枚くらいに重ねられ、三角定規のような
専用のスケールで職人さんが丁寧に手で裁断します。


・・・・・メモや写真を撮りながらみなさん真剣です・・・・


・・・・これが傘を裁断する時に使用するスケール。デザインやメーカーの規格により
たくさんの種類が用意されています・・・・


・・・・(株)槙田商店のジャカードや先染めの傘地は、
国内生産の約80%のシェアを占めます。プリントと違い、ジャカードは
傘の裏側も織り柄があらわれて、きれいです・・・・


・・・・・(株)槙田商店は、傘生地の提供ばかりではなく、オリジナルの傘も作っています。
ジャカードの傘は、絵柄に合わせ織り方を変えているので、とても高級感があります
(老舗っぽいタグです!)・・・・


・・・・1本1本手づくりの傘は、ひとつつひとつ柄合わせもしっかりされていきます・・・・


・・・・・傘生地は上糸だけで縫う特殊なミシンを使用します。
上糸だけでチェーン状に縫い上げるので、ニットのように
縫い代が伸び縮みできるのが特徴です・・・・


・・・・・裁断した生地はこのように縫い合わせられ、傘らしくなっていきます・・・・


・・・・・縫い代は三つ巻にされます。日本洋傘振興協議会(JUPA)では
JUPA(ジュパ)基準を設定し、会員の洋傘の品質・信頼・安心の証として、
JUPAマークを添付しています・・・・


・・・・「傘を買うならMEDE IN JAPANで<JUPA>マークのあるものを!」と
職人さんの説明にも力が入ります。携帯電話の写真を使っての熱い解説です!・・・・


・・・・山梨県南都留郡西桂町にある創業慶応2年(1866)の(株)槙田商店です。
なまこ塀の蔵がある、歴史を感じる建物です。回りは山に囲まれ、
とてもきれいな気持ちになれる環境です・・・・

(株)槙田商店は伝統技術を活かしてながら、
新しい技術を上手に取り入れている会社です。
「傘地」という分野に特出しているのも魅力です。
今回は時間がなくて見せていただけませんでしたが、
200年前の素晴らしい織りサンプルもたくさんあり、これにも興味津々です。
いいものを見せていただきありがとうございました。

『ヤマナシ ハタオリ トラベル』産地見学バスツアー

2012/09/03

山梨県富士工業技術センターが主催する
産地見学のバスツアー『ヤマナシ ハタオリ トラベル』(8月27日)に参加しました。
(協力:山梨県絹人繊織物工業組合台東デザイナーズビレッジ
織物産地は生地問屋(コンバーター)との取引が一般的なため
アパレルと交流することがほとんどありません。
このツアーでは、デザイナーさんなどと直接交流することにより、
産地の特性を知っていただき、また産地もデザイナーさんの要求を知り、
もの作りの活性化を図ろうとするものです。


・・・・台東デザイナーズビレッジに集合し、ここから出発です。
東京からは15〜16人が乗車しました・・・・・


・・・・山梨に向けて出発です!それにしても暑い…・・・・

山梨県富士工業技術センターは、
山梨県内企業の振興と技術の高度化を支援するための機関で
通称「シケンジョ」と呼ばれています。
繊維部の公式ブログ「シケンジョテキ」は
この織物産地の活動を知るためにもとても参考になります。
何よりも、写真のクォリティの素晴らしさと、
人の温かみが伝わってくる編集視点が私は大好きです。
「シケンジョ」には『テキスタイル用語辞典』の制作時でも
甲斐絹(かいき)などの写真や生地提供で大変お世話になりました。
山梨産地は「シケンジョテキ」を通じてとても興味を持っていましたので
今回のバスツアーは期待感でいっぱいでした。


・・・・とてもいい資料となった『ヤマナシ ハタオリ トラベル』公式ガイドBOOK・・・・


・・・・今回のツアーのスケジュールを地図で示したガイドマップ・・・・

山梨県の織物産地は、山梨県の東側の
郡内(ぐんない)」と呼ばれる地域にあります。
富士北麓に位置するこの地域は、
目の前に広がる大きな富士山に見守られながら、
江戸時代頃から絹や絹織物の産地として発展してきました。
特に羽織などの裏地に使われる「甲斐絹(かいき)」という
先染めの高級絹織物が一世を風靡。
しかし、着物の需要が激減したことや、
機械化で作ることのできない高度技術を要する織物であることから
生産が激減。今では幻の織物となっています。

第二次世界大戦前まで、日本は生糸や絹織物、綿織物などの繊維産業が
基幹産業として輸出の主座を占めていました。
明治20年頃には大きな製糸工場が全国で約650ありましたが、
現在は2つだけだといいます。
織物工場は残っていても、製糸工場はほとんど無くなっています。


・・・・織物産地の「郡内」は、山梨県の東側にあり、江戸時代から
江戸を取り囲むように発展した「絹と絹織物」の産地のひとつです・・・・

今回のツアーでは、富士吉田産地のアドバイザーもしている
台東デザイナーズビレッジ村長の鈴木淳さんがナビゲーターとなっています。
山梨に向かうバスの中で、産地の背景や、今回訪れるメーカーさんの特徴などを
話してくださいました。移動時間を有効に使う見学前の勉強会はとても良かったです。


・・・・・「ドビー」と「ジャカード」の説明がとってもわかりやすかったです!・・・・

“産地”というのは、愛知県一宮の「毛織物」、
兵庫県西脇産地(播州織物産地)の「綿織物」、
静岡県福田地区の「コーデュロイ」、今治の「タオル」、
和歌山県高野口の「パイル織り」、福井・石川の「合繊」などのように
産地特性のもの作りをしているのが一般的です。
知名度が高くなり、産地のブランディングが図れますが
需要が減ると、産地全体に大きな打撃を受けやすいという難もあります。

山梨織物産地は出荷規模では「富士吉田」で全国の30位程度、
「都留(つる)」で40位程度という、家族経営を中心とした規模の小さな産地です。
このような小さな産地は“個性”を出すことで生き延びてきたといいます。
甲斐絹の生産が激減した時に、先染め・細番手・高密度・紋織りなどの
特性を生かし「服の裏地」「傘地」などへとシフト。
現在ではそれらに加え「ネクタイ(日本一の生産量)」「ストール」「婦人服地」
「カーテン地」「座布団地」「布団地」「ハンカチ」「掛け軸の表装地」「バッグ地」など
実に多彩な生地を、それぞれの機屋さん織っているという
ユニークな産地となっています。
時代の流れに上手く乗っていける産地なのかもしれません。

八王子の産地と並び、東京から非常に近い産地でありながら
「何を作っている産地?」という印象が薄いため
今回のようなバスツアーを通じ、
多くのクリエーターに知って欲しいというのも大きな目的です。


・・・・山梨では「シケンジョ」の五十嵐さん、上垣さん、高須賀さんが迎えてくれ
メーカーを案内してくれました。岐阜や京都からも参加者が加わり、
約20名くらいのツアーとなりました・・・・


・・・・五十嵐さんが手にしている「ヤマナシ ハタオリ トラベル」のフラッグは、
上垣さんが、データを作り「シケンジョ」にあるジャカード織機で織り上げた
ものだそうです。オリジナルのジャカードがすぐ織り上げられるとはすごい!・・・・


・・・・「(株)槙田商店」では、傘生地が織られているジャカード織機と
傘生地を裁断している工程を見学・・・・


・・・・三角定規のようなスケールで傘生地を裁断します・・・・

今回のバスツアーのスケジュールは、
傘生地・傘などを作っている慶応2年(1866年)創業の「(株)槙田商店」を見学し、
B級グルメとしても人気の富士吉田ならではの“太うどん”、「吉田のうどん」で昼食。
午後からは、染色・整理加工の「(株)富士セイセン」、
すべてをあえてシャトル織機に切り替え、
麻を主にしたファクトリーブランドで注目されている「(有)テンジン」を見学。
次に「シケンジョ」に伺い、「(有)渡小織物」「宮下織物(株)」のプレゼンのあと、
「シケンジョ」の貴重な甲斐絹の資料なども見せていただきました。


・・・・「(有)テンジン」のドビー織機。昔ながらのシャトル織機にこだわり
麻生地を織っています・・・・


・・・・ショールームではテンジンのファクトリーブランドの『ALdin』を
見せていただきました。企画・デザインも含め、家族でやっている
ファミリーブランドでもあります・・・・


・・・・「(有)渡小織物」は、アパレルの「ネバアランド」とコラボして開発した
新タイプネクタイの「リボニッシュタイ」の話しを。
(ネバアランドの3人の女性たちが身に付けているものです!)・・・・


・・・・・忌野 清志郎のステージ衣装のテキスタイルもデザインした、
宮下織物(株)」のテキスタイルデザイナー宮下珠樹さん・・・・

夕方からは産地の方とお食事を介しての懇親会。
夜は富士吉田の浅間神社の「すすき祭り」を見物。
パワースポットとしても注目される富士浅間神社は、
以前より大変興味のある神社でした。
吉田の火祭り」は“日本三奇祭”ともいわれる不思議なお祭りです。
諏訪神社と北口本宮富士浅間神社の両方のお祭りで、
夏の富士山の山じまいのお祭りとして毎年8月26日・27日に行われます。
27日のお祭りは「すすき祭り」と呼ばれています。
「シケンジョ」の気の利いたスケジュールで迫力ある祭り見物ができ大満足。


・・・・お昼は富士吉田名物の「吉田のうどん」を!これは「肉つけうどん」・・・・


・・・・懇談会ではツー参加者や産地の方達の自己紹介。自分の作品を持ち寄っての
自己PRも!私はもちろん『テキスタイル用語辞典』を!・・・・・


・・・・「すすき祭り」。松明の灯りのなか、赤富士の神輿を担ぎ、すすきの穂を持った
氏子を従えて浅間神社の“高天原”を七廻りする姿に、鳥肌が立ちました・・・・

朝は事故渋滞で1時間も遅れて到着し、
かなりの厳しいスケジュールをこなしたツアーも、
帰りはスムーズで、夜9時30分頃に台東デザイナーズビレッジに到着。
あっという間の盛りだくさんの見学ツアーでした。
見学させていただいたメーカーのレポートは
次回にアップしますのでお楽しみに!