Archive for 10, 2010

ヴィンテージ生地を織りなす「シャトル織機」の魅力!VOL.2

2010/10/30

シャトル織機の魅力を
近江の麻の老舗の「林与」さんの林社長が語ってくれました。
経験者しか語れない、とても奥の深い内容です。

下記の動画から、「林与」さんの50年前の希少な織機が
シャトルを交換しながらリネンストールを織っている
様子を見ることができます。
ガチャンガチャンという独特のリズムのレトロな響きがいいです!
レピア織機の工業的なガーという音とは全く違います。

林与04
林与の工場でシャトル織機が並ぶ様子です。

<シャトル織機は万能織機>
私にとってのシャトル織機の魅力は今の織機と違って
基本的に全てが機械仕掛けなので
動きをたどっていくとマニュアルがなくても
考えれば調整が可能であるということです。
ネジによってほとんどの部品の位置を微調整が可能ですので
糸の状態に合わせて、織機のほうを調整してあげることで
同じ織機で、極太から極細まで織りこなせるのです。
レピア織機では織れないものが織れるのもシャトル織機の魅力で
「万能織機」と呼ばれることもあります。
林与02
リネン25番手を高密度に織り上げたリネンタオルです。
耐久性、吸水性抜群でファンも多く、キッチンタオルやバスタオルなど
幅広く使えます。

<同じ規格でもふっくらと、しっかりした織り上がり>
織りあがった織物に関しまして思うところは
レピアで織ったものとくらべてやはりふっくらとしています。
キバタでみても、違う気がします。

同じ規格の織物を織ってもレピア織機ですと薄く感じるのに
シャトル織機で織ったものはしっかりとしているのです。
これは、縦糸がしっかりと開口するにもかかわらず
縦糸にも、横糸にも負担を掛けないように(引っ張らないように)
布が織りあがるからだと私は考えています。

レピアと違って旧式のシャトル織機の場合、それだけ調整が可能なのです。
レピア織機だと、「打ち切れ」という現象が起こる繊細な織物でも
シャトル織機で織ると糸切が起こらず織りあげることができます。
林与06
シャトル織機の上にあるのはリネン125番手のストールです。
奥に見えるのがよこ糸を通す「シャトル」です。

<環境に優しいリネンを織ることが可能>
林与のシャトル織リネンが環境に優しいのも
シャトル織機で丁寧に織り上げるからです。
リネン糸をそのまま織物に織りあげることができ
糊や薬剤の使用を最小限に減らすことができ
エコロジーなリネンを織ることも可能です。

<シャトル織機と付き合うのは人と付き合うような感覚>
シャトル織機には、「生産性が低い」とい弱点がありますが
それ以外にも、リネンなどの品質の安定が難しい素材の無地ライクな織物では
シャトルの変わり目で、色段などができやすいことです。
たとえば、生成のリネンの無地などでも
紡績時のスピンドルが異なれば糸の表面の癖が出たり
同じスピンドルの糸でも最初と途中では違ったりするので
シャトルの変わり目で段が出ます。

また、シャトル織機は基本的にはピックファインダーと呼ばれる機構が
ついていませんので
織り間違えたときに糸を1本1本抜きながらバックできません。
糸を切って戻るので、どのくらいギアを戻すかなど
職人的な要素が絡んできます。
初心者と熟練工では、織り段の数はかなり異なります。
織機ごとに部品の一つ一つが手作りのようなものなので
織機の一台一台の癖があって
織機ごとにその癖に応じて織り手が合わせてあげるような感じです。
シャトル織機と付き合うのは人と付き合うような感覚です。

ヴィンテージ生地を織りなす「シャトル織機」の魅力!VOL.1

2010/10/29

「シャトル織機」をご存知ですか。
よこ糸を内蔵したシャトル(「杼=ひ」ともいいます)を使い
糸を左右交互に打ち込んで製職するものです。
産業革命の先駆けになった画期的な織機ですが
スピードの限界があるため現在は「レピア織機」など
シャトルを使わない高速織機が主流になっています。

この時代遅れともいえる「シャトル織機」の良さが
いま、見直されてきているのです。


カヌーのような船型がシャトルです。
穴の中によこ糸を巻いたボビンを入れ
たて糸の間によこ糸を通して織り上げていきます。
木の材質と形が何ともいえぬ暖かみがあります。
(この写真は麻の老舗の「林与」さんの林社長が、
このブログのために朝早く写して送ってくださいました!感激です…)
林与03
「林与」さんのシャトル織機です。チェックの生地の上にシャトルが見えます。

先日NHKの「美の壷」で「背広」というテーマで
背広のヴィンテージ生地を織っている
愛知県・一ノ宮の工場が紹介されました。
http://www.nhk.or.jp/tsubo/program/newprogram.html

昭和20年ころに作られた「低速織機」で織り上げるのですが
それが「シャトル織機」です。
高速織機が一日200m織り上げるのに対しシャトル織機は8mといいます。
生産性としてはものすごく効率が悪いのですが
時間をかけて織るこの「遅さ」が
生地にふっくらと空気をまとったかのような
自然な膨らみをもたらし暖かみのある風合いを作り出すのです。

いま、このヴィンテージクロスが
静かなブームになっているようです。
いいウールは古くなると味が出て、服がだんだん良くなってくる…
とにかく長持ちするのだそうです。
そのウールの良さを引き出してくれるのが
ヴィンテージクロスなのです。

近江の麻の老舗の「林与」さんも
シャトル織機の良さを見直している企業のひとつです。
アイリッシュリネンのプロジェクトをはじめ
ストール、繊細な細番手、丈夫なリネンタオル用など
いろんな種類がシャトル織機で織られています。

林社長が語ってくれたシャトル織機の魅力を
次回お話しします。

幻のアイリッシュリネンが麻の老舗の「林与」にあった!

2010/10/27

『テキスタイル用語辞典』の執筆中に
「アイリッシュリネン」を調べていたら
本物のアイリッシュリネンの糸がリネン業界でも
もう手に入らないことを知りびっくり!
アイルランドではフラックス(リネンの草の状態をフラックスといいます)も
栽培されていないし、リネンの心臓部も言える紡績も
すでに行われていないのです。

「アイリッシュリネン」と言えば世界最高峰と言われたリネンです。
なんとかこれが手に入らないものかといろいろ調べていたら
あったのです!

なんと明治30年創業の近江の麻の老舗の「林与」さんの倉庫に
びっくりするくらいの良い保存状態で糸が眠っていたのです!
林与さんでは世界で一番良いものを手がけたいという思いで
本物のアイリッシュリネンの超細番手を織るプロジェクトを
開始いたしました。
最高峰といわれた本物のアイリッシュリネン糸を
日本の織りの技術で再現したいと考える
「究極のリネンプロジェクト」です!

林与07

上はvintageirishlinen です。
30年以上前のハードマンズ社サイオンミル紡績の
(ハートマンズ社は最高級のリネンを作るメーカーです)
リネン140番手とリネン100番手の糸と
それを織りあげたストールです。
アイリッシュリネンは少し黄味がかった本当にきれいな色で
その柔らかさは、デリケートなシルクのような…
「リネンの宝石」とでも表現したい感触です!

このことを「林与」さんのHPで知り
http://www.hayashiyo.com/
ぜひ訪ねてみたいもの…と思っていたら
先日のジャパンクリエーションで偶然
林与雄社長とお会いすることができました!

四代目の林社長は本当に良い方で
アイリッシュリネンの提供を快くお引き受けいただきました。
ありがとうございます!

毎日1000以上のアクセスがある社長の「リネン日記」は
面白いし、ためになるしぜひ「お気に入り」に入れてください!
http://www.hayashiyo.com/diary

林与さんには麻好き、テキスタイル好きにはたまらない
ネタがいっぱい!
これから小出しにアップしていきますので
オ・タ・ノ・シ・ミ・ニ!

ジャパンクリエーションでの嬉しい出会いとお礼

2010/10/26

現在制作中の『テキスタイル用語辞典』の素材収集に関しては
たくさんの協会や企業の皆様にご協力を頂いています。
少し遅くなってしまいましたが
ジャパンクリエーション(10月13日〜15日開催)でお世話になった皆様に
あらためてお礼を申し上げます。

日本絹人繊織物工業会の芝村さんには
かけずり回りながらあちこちの産地の皆様にお声掛けしていただき
本当にお世話になりました。大変感動しております。
桐生、福島、丹後、小松などの日本の伝統的な絹織物産地の皆様
心地よく素材提供をお引き受けいただき、本当にありがとうございます。

Textile Treeは、ようやく芽を出したばかりですが
こうしてテキスタイルを通じて根や枝が広がっていくのは
本当にありがたい限りです。

「絹織物」は歴史も古く日本が誇れる伝統産業でもあります。
なかなか産地の皆様とふれる機会も少なかったのですが
今回を通じ絹織物産地の奥の深さを少し垣間みたような気がします。
いま、若いクリエーターや生活者は
流行に左右されない「本物」を求め始めています。
後継者不足や絹から合繊への移行、中国などの海外生地の圧迫など
問題も抱えていますが、
このすばらしい伝統技術を進化させていって欲しいものです。
ぜひ産地の方にも伺い、取材したいと思っています。

ところで、今回のジャパンクリエーションでは
私がお会いしたいと思っていた近江の麻の老舗「林与」さんに
偶然にもお目にかかることができました。
その話は次回に…

日本製軍服生地の復刻版があのブランドに!

2010/10/25

ニッケ衣料繊維分野の「ニッケのモノ作りの真価」を伝える展示会の続きです。
愛知県の一宮にある「ニッケ創作工房」には
1860年頃から約100年間にわたり収集された
ヨーロッパの生地見本帳や大正末期から現存する
日本毛織の織物見本などが数多く所蔵されています。
その一部が今回展示されていました。

にっけ4-2ニッケ4-4

大正時代の陸軍の外套を復刻した生地(メルトン)

ニッケ4-3

昭和11年の海軍の緋絨(ひじゅう)の復刻。緋絨は軍服に使う赤(緋色)の生地です。

ニッケ4-1

1859〜1981年の「近代ヨーロッパコレクション」
ラシャ織物屋さんから寄贈されたものだそうです。
これらは「ニッケ創作工房」で閲覧することができます。
訪ねてくるデザイナーさんも多いようです。

プルミエールビジョンで採用された生地が製品化されたものが
展示されていました。
大々的にはご紹介できないので小さな写真や部分写真ですが…
ちょっとだけ!

ニッケ2-8

右から3番目はフランスのスーパーブランドBの製品。
軍服の復刻版生地が採用されたものでかなり固くハリがあります。
このブランドのデザイナーが好みそうなかっちりした
フォルムの作れる素材です。

こちらは08年春夏にフランスの人気ブランドCに採用された
ウールのシフォンジョーゼットです。
上品なシャリ感、落ち感があるしなやかな素材で
手触りもまるでシルクのようです。
現在も国内外で非常に人気の高い素材です。

ニッケ5-1

「近代ヨーロッパコレクション」復刻版のモヘアループネップツイードです。
ハリのあるモヘアループとカラーネップのミックス感が絶妙なツイード素材です。
05年AWにアメリカのJ社に採用されています。

このほか300番手の極細シフォン天竺など
究極の技術とクオリティを目指した織物や数々の機能素材も
展示されていました。
新技術の機能素材はこちらのHPでも検索できます。
http://www.nikke.jp/tech/index.html

昨今「なぜ2位ではだめなのですか?」という発言が話題になりましたが
世界一を目指すからこそ、
日本の技術力や品質が注目され信頼へとつながっていくのです。

日本一高い山が「富士山」であることは知っていても
2番目に高い山を知っている人などほとんどいませんものね。

1番でなければ話題にはならないのです。

もちろん1番になろうと思っても簡単になれるものではありません。
単なるビジネスだけではなく、
研究費をかけ、より上を目指して頑張っているニッケに
おおいにエールを送りたいものです!

学校の制服生地をあのスーパーブランドが採用!

2010/10/24

ニッケ(日本毛織)のとっても面白い展示会を取材してきました。
(10月20・21日に品川インターシティホールで開催)

ニッケ07

秋冬の生地の展示会かなと思いきや
ニッケ衣料繊維分野の「ニッケのモノ作りの真価」を
伝える展示会とのことで
「こんなに大掛かりな展示会は10年に1度くらいかな」と
誇らしげに企画開発部の田中さんが
とてもわかりやすく説明してくださいました。
(田中さんありがとうございました!)

ニッケのアーカイブから、プルミエールビジョンの実績
世界トップクラスの素材開発など
本当に見応えのあるすばらしい展示会です。
大阪(10/27・28)、名古屋(11/4・5)もあるので
ぜひご覧になっていただきたいです!

ニッケ02
その中で興味を引かれたのは
ニッケのスクールユニフォームコレクション。
7000色の中から約400色を展示。
それぞれの生地には使用されている学校名が書かれていて
それぞれが微妙に違う…
こんなにも「紺」って奥が深いのかってちょっと感動もの!

ニッケ01

さらにはスクールタータンチェックのコレクション。
2003年から2008年間に作られた約10000点の中から
約3000点が展示されています。

ニッケ03

どうです、このタータンチェックのすだれのオブジェ!
これが全部学校のユニフォームですよ!

スクールユニフォームは毎日長く着るものですから
丈夫でかっちりした織りが基本。
「ストレッチ素材にすればもっと着心地がいいのに」と
単純な質問をしたところ
「伸縮性のあるストレッチ素材は確かに着心地がいいのですが
毎日長く着ているとどうしても、よく動かす部分が伸びてしまい
長持ちしなくなるんですよ」

なるほど…納得です。

スクールユニフォームは本当によく考えられた素材です。

最近は「トレーサビリティ(追跡可能)」を打ち出した
素材も提案されています。
自分の学校の制服が
「オーストラリアの○○さんの牧場の羊毛で採取された…」
と言う具合に、どこの国の誰の牧場の羊毛で、
どういう行程で作られた生地なのかということが一目瞭然。
制服に特徴を持たせるために
学校側からの需要も高まっているようです。

プルミエールビジョンで採用された生地の製品を展示。スーパーブランドがずらり!

このスクールユニフォームに着目した
スーパーブランドがありました!
このスクールユニフォームの生地でブレザーを作っているのです。
裏地はスカーフ柄でリッチなイメージですが
表地はまさに制服地そのもの!
価格はウン10万ですが…
この製品も今回の展示会にはディスプレイされているので
もちろんご覧になれるのですが
今市場に出ている製品なので撮影は遠慮してくださいというので
残念ながらご紹介はできません。
ブランドの頭文字を言ったらすぐわかるので
それも控えるとして…

それにしても
デザイナーの目のつけどころはすごいと思いました。
今「制服」はとても面白い素材の宝庫です!

ニッケ04

学生服はもとより
ホテルマン、ポストマンなどの制服生地
昔の軍服などにも優れたものがたくさんあります。

そういうアーカイブの中からを軍服生地復刻させたところ
それを採用したスーパーブランドがありました。

その作品も展示されています。
これは数年前の作品ですので次回少しだけ写真付きでご紹介します。

お楽しみに!