Archive for 11, 2010

信長が上杉謙信に贈った「輪奈(わな)ビロードVol.4」

2010/11/30

今回取材した「株式会社タケツネ」さんの武田社長から
織田信長が上杉謙信に送ったことで知られる
ビロードのマント「赤地牡丹唐草文天鵞絨洋套」が
「輪奈ビロード」であることを伺いました。
専門家の方からこのような見解を伺うのはとても信憑性があります。

当時はジャカード織りができなかったので
無地の総輪奈ビロードを織り
その上に絵柄を描き、絵柄のない部分をカットして毛羽(けば)を出します。
絵柄には輪奈が残り、柄のない部分は
いわゆる「ビロード」の光沢と起毛となります(赤がはっきり出ている部分)。

なかなか大きな写真がないので
わかりにくいとは思いますが
だいたいのイメージがつかめるのではないかと思います。

16世紀に鉄炮を包んでポルトガルから日本に伝来し
17世紀頃から日本で織られるようになったビロードですが
“本物”は、今なお多くの人を魅了しています。

輪奈ビロードのシリーズは今回で終了です。

スーパーブランドからオファー!「輪奈(わな)ビロードVol.3」

2010/11/27

今回取材した「株式会社タケツネ」さんの輪奈ビロードは
「紋織り(もんおり)」というもので
ジャカード織機で織る柄のあるビロードです。
ではその行程を写真でご説明します。

穴をあけて柄を表した「紋紙(もんがみ)」という
パンチングカードを用いて織るジャカード織機です。
最近はコンピュータジャカードが中心ですので
紋紙で織ることが少なくなっています。
ちなみに今日の「コンピュータ」の原理は
このジャカード織機のパンチングカードの発明が
もとになっているのです。

基本的には「白生地」という、白無地のジャカードを織ります。
色のついた針金(テグス)を差し込んでいるので
柄の輪郭がわかりやすくなっています。

織り上がった輪奈ビロードです。
以前は針金を使っていましたが
現在はポリエチレンのテグスを使っています。

「紋切り」の作業です。
柄などを毛羽(けば)だたせたいときは、テグスを入れたまま
このようなカッターで1本1本糸をカットしていきます。

最後は1本ずつテグスを抜いていく「針抜き」という作業です。


輪奈ビロードは「滋賀県伝統的工芸品」にも指定されています。
今回お話をして頂いた武田社長です。

実は今回とてもすごいお話しを伺いました。
誰もが知っているフランスのあのスーパーブランドが
タケツネさんの輪奈ビロードに惚れ込んで
生地を織って欲しいとオファーされたそうです。
しかし、着物が中心のタケツネさんの織機で
幅の広い洋服生地を織るには大変な技術と労力が必要とされるため
このお話はお断りになったとか…

しかし、武田社長は現在新しい織り方の輪奈ビロードにも
取り組んでおり、常に進化を目指している方なのです。

針金で織る「輪奈(わな)ビロードVol.2」

2010/11/26

ベルベットのことを「ビロード(天鵞絨)」ともいいますが
これはポルトガル語の「vellude」が語源とされています。
日本には1542年に南蛮貿易でポルトガルから伝来したといわれています。
ちなみに「天鵞絨」という漢字ですが
「天鵞」とは中国語で白鳥を意味し

「白鳥の羽根のように滑らかで優美な織物」ということらしいです。

ではその天鵞絨はどのようにして作られるのでしょうか…
専門家でない限り
なかなかビロードの織り方を知っていらっしゃる方はいないと思いますが
一般的なビロードは「パイル織」という
表面に毛羽(けば)や輪奈(わな)というループが表れる織り方です。
タオルを想像して頂くといいかもしれません。

織り方には2種類あって
ひとつは「二重織り」という織り方をし
2枚の生地の間をつないでいる糸を切って毛羽を出すやり方です。

もうひとつは細い針金を使って織る
「有線(ゆうせん)ビロード」という織法です。

織ったあとで、この針金を1本1本引き抜くと
引き抜いたところは糸が輪奈になっているのです。
これが「輪奈ビロード」です。

上の写真は細い針金を差し込んで織る「輪奈ビロード」です。
針金を引き抜くとこのような「輪奈状」の柄が現れます。
現在は、針金のかわりにポリエチレンのテグスを使って
織っています。
この隆起している輪奈の部分をカッターでカットしていくと
毛羽のある、見慣れたビロードに仕上がります。

輪奈ビロードを織っているところや
織り上がってからの「針抜き」作業や「紋切り」作業は
次回お伝えします。

毛並みも光沢もない「輪奈(わな)ビロード」知っていますか?

2010/11/22

今日から、近江・京都取材日記を少しずつアップしていきます!

「ビロード(天鵞絨…こんな漢字を書きます)」という言葉を
聞いた事があるかと思いますが、「ベルベット」をいう和語です。

最近では「ビロード」という場合は
ベルベットの懐古的な表現や
「高級和服地のシルクベルベット」を言うことが多いようです。

一般的に「ベルベット」や「ビロード」は
毛羽(けば)や光沢のある滑らかなものをいいます。
さわると柔らかな毛並みの感じられるものです。

ところが、毛並みも光沢もない
「輪奈(わな)ビロード」というものがあります。
輪奈(わな)とは「ループ」のことで
普通のビロードは織り上げた後
この輪奈(ループ)をカットして毛並みを出していくのですが
輪奈をカットしないで残したままのものがあります。

それが「輪奈ビロード」です。(写真下)

光沢のない部分は輪奈(ループ)を残して柄を織ったものです。
光沢のある部分の柄(色の濃い部分)は、織り上げた後
手で輪奈(ループ)部分をカットして毛羽(けば)を出し
いわゆるベルベット風に仕上げたものです。
写真をクリックして拡大写真を見るとよくわかるかと思います。

滋賀県名長浜にある「株式会社タケツネ」は
この輪奈ビロードを織る数少ない織元さんです。

『テキスタイル用語辞典』の執筆でベルベットの事を調べていたら
「輪奈ビロード」というものがある事を知り
どうしても訪ねたくて今回のタケツネさんの取材となりました。

その貴重な製法などは、次回写真でお伝えします。
お楽しみに!

近江・京都取材日記Vol.1「ありがとうございました!」

2010/11/20

興奮冷めきらぬ思いで、近江・京都取材を終え昨夜帰京。
お目にかかりましたみなさま、大変お世話になりました。
この場をお借りして、心よりお礼申し上げます。

取材の内容を伝えたい事は山ほど!
それは少しずつやる事にして、
まずは、ざっと取材日記の概要を…

18日朝6時30分に出発し、
最初の目的地は滋賀県近江の麻の老舗「株式会社 林与」さんのある能登川。
10時30分近くに到着し、駅には林社長がお迎えに来てくださいました。

林社長の話しは、本当に面白く
林与の歴史、近江上布の事、現在のアパレルさんの話し、
そして工場見学など、あっという間に4時間が過ぎて
あわてて次の目的地の長浜へ!

林社長にはTextile Tree『この人にフォーカス!』にも
登場して頂くので、乞うご期待!

林社長が悔しそうに見せてくれたアイリッシュリネンの糸。
「何万円もする糸がネズミにやられ、ぼろぼろですよ…」

長浜は、特殊な技法で織る「輪奈ビロード」織元の
株式会社 タケツネ」さんを訪問。
武田社長には駅まで送迎いただきありがとうございました。
初めて見る「有線ビロード」も興味津々でした。

情緒ある町並みの長浜の一角にあるタケツネさんの会社は
「昔の女学校」を移築したという、映画の舞台にもなりそうな家屋!

すっかり暗くなった長浜を後に
Textile Tree編集部の鈴木さんと待ち合わせている京都駅へ!

大阪から京都に入った鈴木さんは
丹後織物工業組合が主催している「丹後織物求評会」を取材。
二人ともお昼を食べそこね、おなかぺこぺこ状態で
まずは荷物をホテルに置いていざお食事へ!

行った先はお世話になっている福島さんが経営している
祇園の人気イタリアンの「Vineria t.v.b」!
しかし残念ながら予約無しだったため満員で入れず
泣く泣く近くの和食屋さんへ…

これが大当たりで、何を食べても美味しく、特にカブラ蒸しは絶品!
ということで、その日はホテルに帰りバタンキュー!

19日は今回の取材で大変お世話になった
岩野商店さんの岩野さんが朝ホテルにお迎えに来てくださり
西陣会館近くの金襴(きんらん)織物専門の「株式会社伴戸商店」さんへ。

NHKの大河ドラマの大奥の衣装や、
バンクーバ五輪で高橋大輔選手がエキシビジョンで着た衣装なども
伴戸商店さんの商品です。

お茶の世界でも活躍している伴戸社長が
丁寧に説明してくださいました。
専門的なお話し、大変ありがとうございました。

その後に鞍馬にある「株式会社川島織物セルコン」さんへ。
インテリア事業部の北村さん、亀星さん
そして「織物文化館」や工場を説明してくださった
多田さん、本当にありがとうございました。
説明とてもわかりやすく面白かったです!

横一列に多人数が並んで織る
綴れ織り(つづれおり)の緞帳(どんちょう)の制作作業は、圧巻でした!

オセオセになった最後は伏見の「大東寝具工業株式会社」さんへ。
大東社長が、アトピーだったご自分お子さんのために開発した
「京和晒綿紗(きょう わざらし めんしゃ)」のお話しと商品に感動!

肌にもこころにも優しいガーゼの話しは、また別の機会に…
大東社長には駅まで送って頂き本当にありがとうございました!

そして、今回(も)京都をきめ細かくコーディネートしてくださった
岩野さん、またしても大変お世話になり、ありがとうございました!

こうして皆様のお陰で、無事予定通り取材ができ
素材提供協力を得る事ができました。
感謝、感謝です!

圧巻!近江上布のアーカイブ

2010/11/17

近江の麻の老舗「林与」さんは
近江上布(おうみじょうふ)の機元として明治に創業しました。

「上布」とは上質なラミーで織った高級な薄手麻織物で
江戸幕府への「上納布、献上布」とされたものです。

近江上布は非常に高度な織り方の絣柄(かすりがら)が特徴です。
通常の近江上布が紺地に幾何学模様をあしらったものが多いのに対し
林与さんの近江上布は華やかな大柄など「ハイカラ」な色使いに
特色があるそうです。

林与さんの倉庫には50年以上前に織られていた近江上布の見本が
なんと数千枚から1万枚ほど確認されました。

「すべてが本麻で、熟練した織り子さんが
一本一本を左右に振って織る手織り絣柄なので
柄として奇麗なだけではなく、そのひとつひとつの味わいと
気の遠くなるような手間は、見ると本当に感動します。
産地でも林与が近江上布の織元として名高かった訳ですが
残念ながら今は林与では生産はできません。」

「こういうものが数千点何種類も倉庫に眠っていたというのは
私自身も信じる事のできない発見です。
博物館でもこれほどの数は難しいと思います。」

「普通はハギレなので消えてしまったり
欲しい誰かの手に移っていくものなのですが
作ることの難しさを一番知っている林与の代々が
自分の手元に大事に残しておりました。
今見ても斬新さがある、素晴らしいものです。」

林与さんの林社長の言葉からは近江上布への深い思い
代々への尊敬の念、感動が伝わってきます。

林与さんの近江上布がたくさん載っているHPです。
こちらもぜひご覧下さい。
http://www.hayashiyo.com/page/4

明日から、近江の林与さんや京都に取材に行きますので
本物に触れられると思うと、わくわくします。

老舗のアーカイブは宝の山!

2010/11/09

このところファッションは自社ブランドのアーカイブ柄を
復活させる傾向が見られます。
エミリオ・プッチ、イヴ・サン ローラン、グッチなども
50年代〜70年代のアーカイブ柄を発掘したコレクションが
続いています。
2011春夏のコレクションではドルチェ&ガッバーナ
シチリアなど南イタリアの伝統レースをたくさん披露しました。

伝統や過去の時代の良いものに心を動かされる
スーパーブランドのデザイナーもずいぶん増えました。
時代を超えて輝いているものにクリエーションが刺激されるようです。

先日ニッケの展示会で「ニッケ創作工房」の
アーカイブの一部が展示されていましたが
それをブログでお知らせしたところ、たくさんの反響を頂きました。
(ブログのアーカイブで見てください!)
ニッケの企画開発室の田中さんにもお誘いを受けていますが
一ノ宮の「ニッケ創作工房」もぜひ取材に伺いたいです!

そして驚いたのは
近江の麻の老舗「林与」の林社長さんが送ってくださった
「近江上布(おうみじょうふ)」の柄のアーカイブです!

「上布」とは上質なラミーで織った高級な薄手麻織物で
江戸幕府への「上納布、献上布」とされたものです。

林与さんは、近江上布の機元として明治に創業しました。
50年以上前に織り上げた近江上布の柄生地を
見本の形で数千柄残してあり、その写真を送ってくださったのです。
今では林与さんでも生産できない絣柄と言います。

「数千種類のこういう柄が倉庫に残っていたとは
私自身も信じる事のできない発見でした」と
林社長さんがおっしゃっていましたが、
その素晴らしい近江上布を次回ご紹介いたします。

ボッテガ・ヴェネタの日本製羽二重

2010/11/08

2011春夏コレクションの素材トレンドでは麻や綿が大きく浮上し
シンプルでありながらモダンなフォルムを作る
「ハリ感・膨らみ感」が重要になっています。

一方では風をはらむ、分量感たっぷりの「エアリーな素材」や
「ドレープ感」のある素材も見逃せません。

今シーズンのボッテガ・ヴェネタの代表作の一つに採用された
エアリーな素材は、なんと日本製の「羽二重(はぶたえ)」です。

といってもこれはシルクではなくポリエステル。
どこのメーカーの製品かはわかりませんが
「HABUTAI」として提案されています。

羽二重は日本の代表的な高級絹織物で
古墳時代から織られていたともいわれ
「HABUTAI」の表記は既に国際用語として認知されております。

特に羽二重の中でもエアリーな軽目の羽二重が珍重され
明治から大正にかけては日本の特産品として盛んに輸出されていました。
この軽目羽二重の産地が福島県の川俣(かわまた)なのです。
欧米では「KAWAMATA」と言えば軽目羽二重をさす言葉として
定着しているほどです。

実は先日、川俣の「福島県絹人繊織物構造改善工業組合」さんから
『テキスタイル用語辞典』で使わせて頂く
絹のサンプル生地を送って頂きました。
普段なかなか「本物の高級絹」にふれる機会は少なく
その美しさには本当に驚きました!

まさにエアリーという言葉がぴったりな羽二重のしなやさ
サテンの品格のある強い輝きが、ポリエステルとは全く違いました。
絹がこんなにも美しいものかと本当に驚きました。

川俣羽二重

川俣サテン

写真ではお伝えしにくいのですが川俣産地の羽二重とサテンです。

昨今、価格の安い生地にばかりに企画が走りがちですが
こういう「本物」を、一つは大事に持ちたい!
そう思わずにはいられない体験でした。

ストライプは反逆、異端、悪魔の柄?!

2010/11/01

『テキスタイル用語辞典』の執筆は思わぬ発見もあり、
本当に楽しい作業です。
何気ない流行も、歴史を知るとまた見方も変わってきます。

ファッションのトレンドでは数年前から
ストライプやボーダー、アニマル柄の人気が続いています。
2011春夏のコレクションでもパリ、ミラノ、NY、ロンドン
そして東京の多くのデザイナーが、いつもより増して
ストライプ、ボーダー、アニマル柄を提案しています。

ジル・サンダーはカラフルなエレクトリック・カラーと
大胆なボールド・ストライプです!
http://www.style.com/fashionshows/complete/S2011RTW-JLSANDER
ジュンヤ・ワタナベはすべてボーダー&ストライプです。
http://www.style.com/fashionshows/complete/S2011RTW-JNWATNBE
プラダは「ラテン・バロック」のマルチカラー・ボーダーです。
http://www.style.com/fashionshows/complete/S2011RTW-PRADA

ストライプ(縦縞)もボーダー(横縞)も日本名では「縞」といいますが
実はこれがとんでもないルーツを持っていたのです。

縞模様の服といえば思い起こすのは囚人服、強制収容所、旅芸人や道化師
船乗り、ルネサンス期の肖像画、フランス革命のロベスピエール…

ミシェル・パストゥロー『縞模様の歴史ー悪魔の布』は
縞模様の歴史を書いたとても面白い本です。
中世では縞模様は排斥された者たち…私生児、農奴、受刑者
ハンセン氏病患者、異端者などに着せられた服なのです。
明らかに「区別」するために「縞」が用いられました。
「縞」は、軽蔑的・悪魔的な意味をもっていたとされます。
しかし時代とともにその性格も変わってきますが
「革命」「反骨」などの要素のある柄とも分析しています。

とても奥の深い柄なので一言では語れませんが
興味深い写真ビジュアルもあり、読みやすい本ですので
ぜひ一読を!

また面白いことに、ここ数年人気が続いている
ボーダー、ストライプ、水玉、チェック、そして幾何柄ですが
実はこれらの柄が大流行した時代があるのです。

そう、それは1929年の世界大恐慌の影響を大きく受けた1930年代です。

お得意様のアメリカマーケットが失われ、
織物産業も不況に見舞われました。
高価な商品が売れなくなったため、手の込んだ複雑な柄よりも
簡単で安価に作れる単純柄に業界はシフトしていったのです。
当時マチス、ピカソ、ブラック等の抽象芸術が脚光を浴びていた事も
幾何柄などのモダン柄人気につながったようです。

歴史は繰り返すのでしょうか。
流行する色や柄にも「性格」があるようです。
そういうことを知って身につけると良いかもしれませんね。