Archive for 01, 2011

中伝毛織の「オーダーシューズ」

2011/01/30

明治から続いている尾州の毛織物の老舗メーカー「中伝毛織株式会社」が
洋服の「ファクトリーブランド」と一緒に始めたのが
「オーダーシューズ」です。
中伝毛織さんのお客様の、トラッド好き・素材好きな方は
「靴好き」でもあることを発見し
昨年の10月から「オーダーシューズ」を始めたそうです。
現在はメンズだけですが、今後はレディスも予定。

サイズは21cm〜29cm、デザインも色も結構あります。
レディスでもいけるかも…
神戸の靴メーカーさんで作っています。

通常はオーダーしてから4週間くらいで仕上がりますが
現在は人気のため1カ月半くらいかかるとのこと。
オーダーはリスクが少ないからと始めたところ
予想以上の反響で
スタートしてから150足くらいのオーダーを頂いているそうです。
(通常のオーダーシューズより価格を低く設定)

ソールにもこだわり、イギリスのダイナイト社の
「ダイナイトソール」を採用。
滑りにくく耐久性のある人気のラバーソールです。

レディスのオーダーシューズも楽しみです。

中伝毛織が、ファクトリーブランドを始める理由。

2011/01/28

中伝毛織株式会社」のテキスタイルブランド「TEXTOR」の
2011/12秋冬コレクションの展示会があり
中島社長さんにいろいろお話をお伺いすることができました。
その様子を数回に分けてお伝えします。

中伝毛織さんは世界でも有数の毛織物産地である
尾州地区に本社を構える
明治から続いている毛織物の老舗メーカーです。
特に婦人服の毛織物では国内のトップメーカーとして知られ
有名アパレルやセレクトショップなどとの取引も多く
トレンド発信も積極的に行っています。

今回の展示会で特に興味深かったことは
中伝毛織さんが、生地メーカーに留まるだけでなく
アパレルとしてのもの作りも始めたことです。
景気低迷が続く今日の国内事情では
アパレルメーカーさんも「価格重視」に走り
素材や縫製などにこだわったもの作りができにくい状況にあります。
尾州にはいい技術と製品作りのノウハウがありながらも
それを活用できないことに憂いた中島社長さんが
「それなら自分たちで、とことんこだわったもの作りをしよう!」と
「ファクトリーブランド」の立ち上げを決心したのです。

まだ本格的な商品展開ではありませんが
第一弾としてレディスとメンズの「ピーコート」が提案されていました。

この素材は軍服のアーカイブから引っぱってきたもので
「サテン組織」で織っているそうですが
ウイップコードのような太い畝が走っている不思議な織りです。
柔らかな糸で織り上げ、樹脂加工を施します。
柔らかく着心地を良くしながらも
表面は少しかためにカチッと感を出し
ほっそり見えるシルエットに仕上げるという
計算されたものづくりです。

さらにこの生地の大きな魅力は「ションヘル織機」という
旧式の低速織機で織られていることなのです。
いま市場では、高速織機が当たり前の時代に
「シャトル織機」などの低速織機で織られる生地の魅力が見直され
じわじわ人気が高まってきています。
高速織機には出せない「ふわっと、あたたかい」織り味が
生まれるのです。
背広生地などでも低速織機で織られる
「ヴィンテージクロス」が静かなブームといいます。
いいウールは古くなると味が出て、服がだんだん良くなる…
とにかく長持ちするのだそうです。

中島社長さんも、ションヘル織機をできるだけ残し
こだわった生地を織っていきたいとおっしゃっていました。

クローズアップの写真を撮り忘れてしまいましたが
袖のカフスは生地の「耳」をそのまま使っています。
ションヘル織機だからできる「知る人ぞ知る」の
テクニックなのです!

裏地にも凝りました。裏地はリネン100%の先染めチェック。
横に等間隔で「再帰反射糸」を織り込んでいます。
暗いところで光る糸です。(白く見える部分です)
芯地にも凝り、ストライプにしました。

レディスはM・L・トールサイズ、メンズはM・L・LL
ショートコートとロングコートがあります。
価格は7〜8万円くらいを予定。
少し高いようにも思われますが
「いいものを長く着て欲しい」「着るほどに味の出る素材」
そういうもの作りを目指したファクトリーブランドだといいます。

展示会場には「オーダーシューズ」のコーナーもありました。
このリポートは次回お伝えします。

島精機プライベート展「デザインシステム」Vol.2

2011/01/26

ばりばりのプロのニットデザイナーの佐藤さんと
テキスタイルデザイナーの伊東さんが
すっかりはハマってしまった
島精機さんの「デザインシステムSDS®-ONE」を
ご紹介します。
同社の守山さんが丁寧に説明してくださいました。
まず最初は織りです。

糸の種類や番手、色、織り組織などを選び
設定していくと、あっという間に生地が織り上がります。

色はパソコン上からパントーンカラーなどで指定もできますが
「測色系」でとりたい色をスキャンすると
ほぼ似た色を取り込む事ができます。

糸の種類、色を替えながらイメージの織りを作り上げていきます。

織り上げた柄を実際の服や服飾のデザインに
置き換える事ができます。
「マッピング」というメッシュをかけ、生地の流れを指示すると
一瞬に出来上がり!


ジャカードの平面柄を取り込んで
それを編み地に仕上げていく事もできます。
平面の柄がニット仕様に変換されてきます。

実際の編物を取り込んだ場合
柄は「色まとめ」という作業で
陰影をつけてリアルに表現できます。(簡単にできます!)

色替えしても陰影がきちんと出てきます。
この点がフォトショップなどではなかなか難しいところです。

配色などはイメージ写真から設定する事もできます。
これは桜をイメージした配色例です。

ニットは型紙にのせて編み地を指示できますので
サンプルとほぼ同じものを作る事ができます。
モヘアの糸で指示したジャカードです。
下からモヘアに変化していく様子が
お分かりになりますでしょうか。
編んだのと同じ状態で端の始末が出来上がってきたときは
そのリアルさに、歓声が上がりました!

デザインシステムSDS®-ONE」は
操作が簡単である事
かなりリアルなイメージが伝えられる事など
二人の評価もかなり高く「今すぐにでも欲しい!」との声が。

「これがあったらプレゼンにかなり説得力が…」と佐藤さん。

特に、ニットのわかるプロのニットデザイナーさん不足の日本では
これからの時代の必須アイテムになるのでは…
と思うようなシステムです。

けど気になるお値段は…というと
個人や小さな会社ではなかなか買えない価格であるのが残念。
このデザインシステムを時間で貸し出している
研修センターもあるらしく
価格やシステムの利用方法に今後の期待が高まるところです。

島精機プライベート展「デザインシステム」Vol.1

2011/01/25

先日、(株)島精機製作所さんの「プライベートショー」の
取材に伺いました。
今回はテキスタイルやニットのデザインソフトの
デザインシステムSDS®-ONE」や
「自動裁断機」などの展示説明会です。
顧客をお呼びしての商談ベースの展示会なので
一般の展示会ではなかなか味わえない
かなり丁寧な説明と実践的な実演が行われました。

一緒にお誘いしたのは
私のニットの先生でもあるニットデザイナーの佐藤さんと
こちらもまた私のパソコンの先生でもある
テキスタイルデザイナーの伊東さん。
独立し、キャリアばりばりで活躍している方々です。

私は既に島精機さんのデザインシステムは
『テキスタイル用語辞典』のニット制作でお世話になっている事もあり
デモンストレーションは軽く受けておりましたので
ある程度の知識はありましたが
お二人は初めての体験。

12月15日のブログもご覧ください

何しろ、テキスタイルデザイナーの伊東さんは
手で先染め柄やプリント柄を描いていた時代から
現在のフォトショップやイラストレーターを使って
パソコンで制作するまでを体験している方ですので
このシステムに興味津々。

ニットデザイナーの佐藤さんも
クライアントへのプレゼンや
サンプル制作で苦労をしているなかで
今回のデザインシステムがどの程度活用できるかへの
興味も高まっていました。

まずお二人が驚いたのは
テーブルに並べられていた本物の生地と
デザインシステムで制作された紙のバーチャル生地です。
これは手で触ってみなければ
どちらが本物かわからないほど、本当に精巧です!

この二人がすっかりハマってしまった
デザインシステムの実演に関してはまた次回お伝えします。

母手製の、絹の「どんぶく」。

2011/01/12

私の郷土(北秋田市)では
綿入れの半纏(はんてん)を「どんぶく」と呼んでいます。
2年前に亡くなった母は、かつて着物で過ごしており
また実家には着物の端切れも多く
丹前(たんぜん)や布団に再利用したり
「どんぶく」を作ってくれていました。

この写真の「どんぶく」は、結婚した当初
私とだんなさまに作ってくれたものです。
普通「どんぶく」は木綿であったり
最近はポリエステルが多いのですが
これは絹の着物地で、軽くて暖かく、当時は良く着ていました。
しばらくタンスに眠っており
最近ふと思い出し、引っ張り出しました。

これは私の「どんぶく」です。
ずいぶん染みになっていたり
虫が食ったような穴もあいていましたが
本当に軽く暖かく、また愛用し始めました。
「羽二重」に似た、しかし節がある生地で
薄く柔らかく繊細で、絹鳴りがするような…
おそらく羽織などの「裏地」に使われたものだと思います。

こちらはだんなさまの「どんぶく」です。
「唐桟縞(とうざんじま)」のような渋い縞柄で
しっかりした絹地です。
「江戸の粋人」になったようで、だんなさまのお気に入りです。

この2つの生地はかつて誰が着ていたものか
何に使われていたものかを聞かなかったことが
悔やまれます。

家族の絆。美智子さまのリフォーム。

2011/01/11

いつの時代からか、ものが簡単に安く手に入るようになってから
「ものを大切に」しなくなってきたようです。

自分で糸を紡いで織り上げたものは愛着があります。
綿や絹がなかなか手に入らなかった時代は
「使い切る」暮らしをしてきました。

古くなった着物は、端切れを縫い合わせて着物にしたり
(今でいうパッチワークですね)布団にしたりします。
布がくたびれてくるとそれをほどいて布を裂き
細い紐にして再び織り上げます。
これが「裂き織り(さきおり)」です。

これも使い古されてくると、さらに布を裂いて
今度は組み紐に作り直し
「背負子(しょいこ)」やワラジなどに利用されました。
最後は紐の端に火を付けて燃やし
煙は虫除けになり、灰は土に還ります。

私の母も、着物や毛糸をほどいてリフォームを
当たり前のようにしていました。
いまも母が着物地で作った綿入れ半纏(はんてん)がありますが
宝物のように思えます。

天皇ご一家も
美智子さまがお召しになったドレスを
ちょっと仕立てなおして紀宮さまが身につけられるなど
洋服のリフォームは、当たり前のこととしてなされて来たそうです。

この紀宮さまのコートは、はたしてどうなのでしょうね。

「もったいない」だけではなく
こうして捨てられない家族の思いがつまったリフォームには
「親子の絆」「家族の絆」が生まれるのだと思いました。

山で見つけた緑色の繭、天蚕(てんさん)。

2011/01/09

昨日TVで、安曇野の有明で織られている
「天蚕(てんさん)」という緑色の繭が特集されていました。
そういえば、山歩きのお友達のキヨコさん
( 私は“山の達人”と尊敬しています)からいただいた
天蚕の写真がありましたのでお見せします。

すこし蚕(かいこ)の説明をします。
絹は蚕の繭(まゆ)から作られます。
一般的に知られている白い繭は
「家蚕(かさん)」という、家で飼われている蚕で
桑の葉を食べて大きくなります。
一方山野など自然に生息している蚕は
「野蚕(やさん)」といい、野生の植物を食べます。

野蚕には「天蚕(てんさん)」と「柞蚕(さくさん)」があり
天蚕(山繭:やままゆともいいます)はクヌギやナラなどの葉を食べ
繭の色が葉っぱのような明るい緑色です。
一方の柞蚕はクリ、カシ、カシワなどの葉を食べ
繭の色は淡褐色で、繭は少し大きめです。
蚕は食べる葉により繭の色や硬さなどの性質が変わってくるのです。

上の緑色が「天蚕」です。多分下は「柞蚕」だと思います。

TVで見た天蚕糸は髪の毛よりも細く
7本の糸を撚って1本の糸を作っていました。
天蚕は「繊維のダイヤモンド」と言われるそうですが
繊細で、その高貴な輝きは本当に見事なものでした。

柞蚕はサッサーともいい、節(ふし)が多く、太くて丈夫。
織り上げると自然の茶系の濃淡が美しくあらわれます。
「タッサー」や「シャンタン」という織物は
この柞蚕で織ります。

絹織物の歴史は古く紀元前3000年頃といわれ
皇室ともゆかりが深く
明治以来、歴代の皇后さまは御養蚕所で
養蚕を引き継いでいます。
繭を紡いで、糸にして、布を織り上げ
それを衣服に仕立てるのは
遥か昔から女性にまかされた大きな仕事だったといいます。

いま、女性たちが
糸を紡いだり、機織りに惹かれてしまうのは
どこかにこのDNAがあるからなのかもしれませんね。

高橋大輔選手の金襴

2011/01/04

「金襴(きんらん)」という素材をご存知でしょうか。
「金襴緞子(きんらんどんす)の帯び締めながら…」の歌でも知られる
金糸で模様を織り出した絢爛豪華な織物です。
ちなみに「金襴緞子」とは
「緞子」という、帯に多く使われる光沢のある豪華な紋織物に
金糸で模様を織り出したさらにゴージャスな絹織物です。

この「金襴」の本場が京都の西陣で
昨年の11月に金襴専門の「株式会社 伴戸商店」さんに取材に伺いました。

実は昨年のバンクーバーオリンピックで
高橋大輔選手がエキシビジョンで着ていたた衣装が
「露芝に桜尽くし」という伴戸商店さんの金襴なのです。

映画『大奥』などを始め、NHK大河ドラマの『篤姫』など
時代劇に無くてはならない豪華なシーンでは
伴戸商店さんの「金襴」が登場してるといいます。

『テキスタイル用語辞典』への素材協力もして頂きました。
初めて見るたくさんの金襴は、本当に雅な世界です。
金襴には一つ一つの織物に名前がついており
またそれも興味深いものがあります。
その話しはまた次回に…