Archive for 02, 2011

ボタンニストのいる、老舗のボタン専門店!

2011/02/28

とっておきのボタン専門店をご紹介します。
銀座で創業60年という、老舗のボタン専門店「ミタケボタン」は
ボタン好きの方にとっては“憧れ”のボタン屋さんです。
銀座らしい渋い趣のあるビルの4階に、一見お店とは気づかない店構えは
老舗の自信というのか、何か大人のカッコよさを感じます。

目立たないビルですので、1階のこの看板が唯一の目印。
この“手づくり感”がなんかいい感じです。

「ここお店?」と思えるくらい入り口はシンプル。
中はボタンがびっしり!窓際の大きなボタンが
「世界一有名なボタン屋さん」といわれるNYの「テンダーボタン」の看板みたい!
そういえば1階の看板も「テンダーボタン」のロゴマークに似ているかも…
老舗の香りですね!

雑誌などで取材されることも多く、店主の小堀孝司さん(写真上)は
日本唯一の「ボタンニスト」で、業界では有名な三代目オーナー。
お客様は人気スタイリストさんから、今は希少になった
紳士服オーダー店やクチュールの洋装店、アパレルのデザイナーさん
ボタン好き手芸好きの方など、ボタンに “こだわり”をもつ方が多いのです。

小堀さんは出しゃばらず、しかしお客さんに自然に寄り添い
上手にサポートしています。
ボタンの謂れなどを聞いて、感動して、迷って迷って…
やっと数個選んでいるお客様も。

雑誌『ku:nel』の表紙を飾ったゴージャスなボタンの上に、本物のボタンを乗せて!
60年代頃のもので、今はもう作ることのできない貴重なボタンです。

この年代物のスティールのボタンケースは、初代のおじいさんの頃から
使われていたもの。中にはまるで宝物のようなボタンがザクザク!
ちょっと興奮してしてしまいます。
ボタンは常に1000種類以上はあり、さらに大小のバリエーションがあるので…
棚卸しは1カ月以上かかるとか…気の遠くなるような作業のようです。

「ミタケボタン」の7〜8割はヨーロッパの輸入ボタンです。
イタリアやドイツのボタンを中心に、紳士・婦人用の国内外の珍しいボタンや
貴重なアンティークボタンなど、まさに「宝石のような」という形容詞がぴったりな
ボタンのセレクション!

しかし、小堀さんのボタンの考えは「はじめに洋服ありき」といいます。
1点で存在感を放すボタンはそれはそれで魅力がありますが
あくまでも「洋服との調和」の中で成り立つのがボタンといいます。
「ミタケボタン」はシンプルながらも小戯れた味のある
実用的なボタンもたくさん揃えているのも特徴です。

ボタン1個にこだわるのではなく、生地の厚みや素材感、デザインなど
トータルなバランスを考えてボタンを提案できる…
それが「ボタンニスト」なのです。

小堀さんにボタンの材料になる届いたばかりのべっ甲調のアクリルボードを
見せて頂きました。これからどんなボタンにするのか考えるのだそうです。
小売りだけではなく、卸も行っており
オリジナルボタン制作や、お客様の要望によりアレンジもしています。

ボタンは単にデザインだけではなく、その歴史的背景など
知るほどにはまってしまいそうです。
とっても興味がわいてきました。
次回は少しボタンのことをお話ししたいと思います。

自然の杢目と木の香り…「木織りの布」。

2011/02/23

木で織った作品の展示会があると伺い
さほどの期待もなかったのですが…
これが本当に「木で織った布」であることを知り、驚きました!
まさに「テキスタイルツリー」なのです。

それは、フランス語で「木肌」を意味する
boisette(ボワゼット)』という「木の織物」ブランドです。

展示会場の中央には手織りの織機がおかれ
「木の糸」が織り込まれていました。
たてに「絹糸」、よこに「木の糸」を使います。
自然の木肌と絹の光沢の美しいコントラストです。

20年前に「木を織物にできないか…」という
とんでもないロマンのもと、開発が進められました。
試行錯誤を重ね、木を柔軟にする加工技術と織り機を開発。
天然木がつくりあげてきた
自然の「杢目(もくめ)」と木の香りを残して
木そのものを柔軟な織物とにできる
全く新しい発想の「木の布」が誕生しました。

木織りに使われる木はヒノキ、ヒバ、屋久杉などの銘木を
0.08mm〜0.12mmに薄くスライスします。
木のカンナくずのようなものを特殊溶液に浸し
(ここがノウハウのようです)
和紙を裏打ちして0.6mmの糸状に裁断します。
これを自動織機で織れるのは
日本で(世界で!)、桐生と沖縄の2カ所だけです。
最近はほとんど使われなくなった低速織機で
1日4mくらいしか織ることができません。
ゆっくり織ることで暖かみある風合いが出せるのです。

一見「板」のようですが、実はこれが「木織りの布」。
樹齢2000年の屋久杉などがそのまま織り込まれ
天然の杢目が再びあらわれてきます。
しなやかな、まったく新しい「木」に生まれ変わるのです。

平織りだけではなくジャカードも織ることができます。
バッグ、帽子、小物雑貨をはじめ、洋服にも採用されました。
椅子張り、ランプシェード、パーテーションなどのインテリアも素敵です。
群馬県の植樹祭では木織りを使った椅子で両陛下をお迎えしました。
神社の木をお守りに…など使い方のアイデアはたくさんあります。

うっすらと木の香りのするテディベア。

服飾小物をプロデュースしているのが
浅草のレザー業界でも活躍している
レザーコーディネーターの成澤敏彦さんです。
ナチュラルな木の肌合いと
鮮やかなレザーのモダンなコントラストが新鮮です。

椅子などのプロダクトデザインは
小笠原利明さんが手がけています。
「玄関椅子」は腰掛け部分をひっくり返すと
また違うイメージで使用することができます。

ジャカードで織られた、クリエーター高橋隆男さんの作品です。

『boisette』を制作・販売している(株)東栄工業
営業部の大橋さんからお話しを伺いました。

本業は建築関係の仕事ですが
ケミカル方面の建築技術を活かすことができ
木織りの布を完成するに至ったと言います。

木に和紙を裏打ちして糸にする手法は
「引箔織り(ひきばくおり)」という
金銀などの箔織りに見られる、日本古来の織りです。

2000年も生きていた木に
長い歴史を持つ京都西陣の最高技術と
建築資材の科学者の技術と
織りの伝統工芸士の技が集積され
20年の歳月をかけて新たな命が吹き込まれました。

この「オンリーワン」の『boisette』は
各業界からの問い合わせも多く
いろんな可能性を秘めた「新素材」として活躍が期待されます。

夏涼しく、冬暖かい、綿紗(ガーゼ)の不思議。

2011/02/21

先日、晒しの話しをしましたが
「和晒し(わざらし)」という天然晒し製法にこだわり
京和晒綿紗(きょうわざらしめんしゃ)』というブランドをもつ
京都の「大東寝具工業株式会社」をご紹介します。

大正14年に、京都の壬生で布団製造販売メーカーとして創業。
現在はインテリアも含め
永年にわたり、繊維の中心地である京都の室町筋を通じて
「快眠とくつろぎ」をコンセプトにしたものづくりをしています。
環境や文化への取り組みも積極的で
大東利幸社長の人柄そのままのような、とても暖かな会社です。

「綿紗(めんしゃ)」とはガーゼの和名ですが
紗のような粗く透ける綿素材を総称する言葉でもあるようです。
「綿紗」という言葉の響きには、
どこか、古(いにしえ)から伝わってきた「布の気品や力」を感じます。
『京和晒綿紗』と名付けた由来にも
そういう気持ちが込められているのかもしれません。

実は、「和晒し」と「綿紗」の出会いには
大東社長のお子様への大きな愛情物語があるのです。
ひどいアトピーで苦しんでいたお子様のために
「肌に優しく安全な素材はないものか…」と
研究し開発して生まれたのがこの『京和晒綿紗』です。

今や希少になっている、昔ながらの「和晒し」は
ホルムアルデヒドなどの人体に影響を与える物質を含まず
繊維の不純物もきれいに取り除き
「残留物ゼロ」という、安心製法なのです。
しかも、4日間もゆっくり時間をかけて行うため
繊維にストレスがかからず
「コットンがもつ本来の力」を最大限に引き出してくれます。
つまり、綿紗(ガーゼ)のもつ「優れた吸汗速乾性」「非常にソフトな柔軟性」を
より際立たせてくれるのです。

ところで「綿紗(ガーゼ)」ですが
衣類や寝具としては「夏素材」というイメージが強いのですが
実は「暖かい素材」でもあることをご存知でしょうか。
1枚では薄く透けていますが、これを何枚も重ねることで
「空気層」ができて
夏は、「通気性・吸汗速乾性を高め涼しい」
冬は、「適度な保温性をもち暖かい」という特徴があり
まさにオールシーズンの素材なのです。

しかも洗濯するほど、使い込むほど表面が滑らかになり
風合いが良くなり、肌に馴染んでくるという
まさにミラクル素材。

・・・5重ガーゼの断面・・・

ガーゼを重ねた素材にはダブルガーゼのように
多重織りであらわしたものもありますが
『京和晒綿紗』は空気層の効果をいっそう高めるために
1枚ずつのガーゼを5枚重ねて1枚の生地として縫製するという
手法が取られています。
まさに「縫製屋さん泣かせ」の高度な技術です。
まるでミルフィールのような空気層が
ほどよい通気性と保温性を生み出し
絶妙な温度調節をするのだといいます。

『京和晒綿紗』は医療用寝具としても使われていますが
昨年よりこの素材を使用した
その素』という「晒しシャツ」のブランドが立ち上がりました。
ほんとうに気持ちのいい肌触りです。
「とにかく、洗って洗って、ふわふわの空気層を実感してください」と
メッセージをいただきました。
「長く着るほどに愛着のわく1着」になりそうです。

晒し(さらし)の力!

2011/02/11

テキスタイル用語辞典』の執筆は新しい発見があり
とってもわくわくします!
中でも興味を持ったのは綿や麻などの「晒し(さらし)」です。

今回はちょっと晒しの話しを…
晒しとは染色する前に、織り上がった布の繊維に付いた
不純物や糊を取り除いたり、色素や臭いをとる
「精錬(せいれん)・漂白」工程のことです。

晒しの方法には「天然晒し」と「薬品晒し」があります。
天然晒しは「天日干し(てんぴぼし)」と呼ばれる
「太陽に晒す」ものが代表的。
空気中のオゾンの力で除菌・消臭・漂白するものです。
河原や芝生に干す「天日晒し(てんぴざらし)」
オゾン発生効果の高い雪の上で晒す「雪晒し(ゆきざらし)」などが有名です。
ちなみに、透け感のある素材の「ローンlawn」の語源は
「芝生lawnで晒した素材である」ことから来ている説があります。

つまり本来の「晒し」は自然の力で
除菌・消臭の効果を持たせた素材だったのです。

現在は薬品晒しが主で、石鹸やソーダなどで煮たあとに水洗いし
熱やテンション(張力)、塩素系漂白剤を加え、
繊維にストレスを付加しながら短時間で処理します。

そしてもうひとつ…
「晒し」という意味には「精錬・漂白」をするという他に
「晒し」そのものが生地の名前でもあるのです。

そう、あの真っ白い布です。

「包丁を1本、晒しに巻いてエ〜」という歌や(古っ!)
やくざの討ち入りや(極端!?)お祭りで腹に巻く「晒し」
昔は包帯代わりに「晒し」を使ったといいます。
非常に優れた衛生素材だったのですね。

天然晒しはまたの名を「和晒し(わざらし)」ともいいます。
天日晒しのほかに、蒸気加熱でじっくり仕上げる特殊な釜で(上の写真)
繊維にストレスをかけないで不純物を何日もかけて
しっかり取り除く方法があります。
ホルムアルデヒドなど人体に影響を与える物質を
「残留ゼロ」の無添加素材に仕上げます。

この製法で『京和晒綿紗(きょう わざらし めんしゃ)』という
ブランドを展開している京都のメーカーさんがあります。
とっても暖かなお話しを…次回ご紹介します。

いま、気になる「流儀」本。

2011/02/03

一昨日『英国の流儀』という本をご紹介しました。
英国トラッドの素材やアイテムの知識や歴史を知る上で
大変参考になる本です。

そしてもう1冊ご紹介したいのが
『ヘミングウェイの流儀』
今村楯夫/山口淳 著(日本経済新聞出版社)です。

いつもよれよれの同じような服装で
服装やお洒落には無頓着と思われていたヘミングウェイですが
「ホンモノ」にこだわる姿勢と目利きぶりが
豊富な写真とともに描かれています。
あらためてお洒落というものは
その人の「生きる姿勢」に通じるものだと納得させられます。

折しもこの2冊のタイトルに共通しているのは「流儀」。
辞書で調べると
「物事の仕方、やり方」
「技術・芸能などで、その人や流派に伝わっている手法・様式」
のことですが
「流儀」と正面切っていえるには、単なる「オレ流」ではなく
「ホンモノである」という自負が込められているような気がします。
凛とした硬派の姿勢と品格が伺えます。
世の中のトレンドに振り回されない
「自分のスタイル」をきちんともっている…
やはりいくつくところはコレでしょうか。

「英国トラッド」のバイブル本。

2011/02/01

早いもので今日から2月ですね!
トラッド熱が高まる中で、おすすめの2冊のご紹介です。

ファッションの流れも持続可能な「サスティナビリティ」に向かい
「英国調トラッド」が2011秋冬のトレンドに本命視されています。
英国調といっても、60年代や70年代のアイビーやトラッドを
経験したのは団塊世代や、その前後世代。
今はトラッド素材もトラッドアイテムも、よくわからない人が大半です。

『英国の流儀BRITISH STYLE』
『英国の流儀Ⅱ  TRADITIONAL FASHION』
林 勝太郎 (朝日新聞社)は
「英国トラッドとは何か」を知ることはもちろん
素材やアイテムの産地や歴史なども
現場を訪ねてリアルに面白く綴った、名著です。

いい素材、いい仕立ての服を「着つくす」
魅力的なライフスタイルを教えてくれます。
サヴィルロウの仕立て屋で誂えた上等な注文服を
生地がテカテカになるまで着古し
セーターやツイードジャケットの肘の辺りが
すり切れたら肘に革を当てる。
決して最初から「エルボーパッチ」のある服は着ないのです。
英国紳士は、たくさんのいい服はもたず
同じものを長い間着込むことを誇りに思っているといいます。

『テキスタイル用語辞典』の執筆でも、ずいぶん参考になりました。
この本を読むと「いい服」が欲しくなります。
一生懸命に作ったいいものは
着る側も最後まで丁寧に着つくしたい…
「愛着服」を、探しにいきたくなりました。