Archive for 03, 2011

とことん使い切る、「南部裂織り」の話し(Vol.2)

2011/03/24

「裂織り(さきおり)」は、古布を細かく裂いて再び織り上げた「再生織物」です。
「布」が大変貴重だった時代、布を最後まで大切にしようとする
生活の知恵から生まれ、日本全国や世界のあちこちの国でも見られます。
貧しかった東北地方ではほんの端切れも大切に扱われ
「南部地方(青森県南東部と岩手県中部・北部)」では
古くから裂織りが盛んに行われていました。

・・・地機(じばた)で織られる「南部裂織り」・・・

特に寒冷地のため綿の栽培が困難だった東北地方は、「木綿」が大変貴重で
「木綿の反物」などは高価で庶民には手の届かないものでした。
江戸時代中期には「北前船(きたまえせん)」により
関西方面から「古手木綿(こてもめん):古着・古布のこと」が
大量に手に入るようになりましたが、古布とはいえ安いものではないため
大切に大切に最後の最後まで「使い切る布文化」が発達したといいます。

古手は、端切れを重ねて「刺し子」にしたり
縫い合わせて着物やこたつ布団にします。
すり切れるとまた継ぎ当てをし…(時代劇で良く見かけますね)
これもくたびれてくると、縫い目をほどいて、布を細く裂いて紐状にします。
裂いた布紐をよこ糸に、たて糸には麻糸を用いて織りあげたのが「裂織り」です。
こたつ掛け、夜着(やぎ)、仕事着、帯、前掛けなどにします。
「南部裂織り」は、赤などを効かせた、カラフルな彩りが特徴です。

・・・「コシェル2」の「南部裂織り」を使った「張り子」のバッグ。
もとの布からは想像もつかない織りが「裂織り」により表現されます。・・・

山形の庄内地方では布の補強のために「縫う・刺す」の「刺し子」技術が発展し
「庄内刺し子」と呼ばれる模様刺しが生まれました。
かつて庄内の農村部では刺し子をした「一生着られる分」の
農作業着物を用意して嫁入りをしたといいます。

裂織りにした布がくたびれると、また裂いて今度は「組み紐」にして
「背負子(しょいこ)」などを作るのに利用。
最後の最後は紐に火をつけ、煙を虫除けにし、灰は土壌改良として土に還る…

ここまで使われると「布」も本望でしょう!

それだけ昔の「布」は作り手の思いや技術が高く
丈夫で美しく「捨てられない魅力」を持っていたような気がします。
「思いが詰まった布を、長く、とことん使い切る」暮らしを
してみたいと思いました。

とことん使い切る、「南部裂織り」の話し(Vol.1)

2011/03/23

岩手県の胆沢郡金ヶ崎町で創作活動をしている「コシェル」さんから
“無事”のメールを頂きました。
「通常の業務に戻るには時間がかかりそうですが
沿岸の被害を考えたら人も家も無事なので、大丈夫です。」とありました。
今回の地震は、大変なことも「大変」といえないのかもしれません。

「コシェル」さんは東京・下北沢の店を閉め岩手県に移り住み
2010年より新ブランド「コシェル2」を立ち上げたばかりです。
岩手の「張り子」や「漆」の伝統技術でバッグやアクセサリーを作る
オリジナリティのあるクリエーションに取り組んでいます。
私もその作品を初めて見た時「釘付け」になりました!

その中に「南部裂織り(なんぶさきおり)」で作ったバッグがありました。(写真左)
「南部裂織り」と「張り子」がとってもファンタジーに仕上げられています。

以前、『テキスタイル用語辞典』の執筆で「裂織り」のことを調べた時に
「布をとことん使い切る文化」を知り感動しました。
「コシェル」の澤藤さんのお父様も、以前南部裂織り工場で働いていたそうです。
「コシェル2」でも「南部裂織り」シリーズをやっていきたいと話していました。
『テキスタイル用語辞典』にも取り上げたいので
南部裂織り工房の取材をお願いしていましたが
今回の地震で少し遅くなるかもしれません。

次回は素晴らしい「裂織り」の話しを書きたいと思います。

英国ロイヤルウェディングドレスの伝統素材は…

2011/03/11

4月29日に行われる英国のウィリアム王子とケイト・ミドルソンさんの
結婚式のウェディングドレスのデザイナーは誰か…と話題が持ちきりですが
英国王室に代々伝わる伝統的なウェディングドレスの素材があることを
ご存知でしょうか。

じつは私もつい最近のそのことを、
先月開催された「ふくしまのおりもの展」で
理事長の齋藤さんから伺いました。

代々英国王室に伝わるその素材は
日本では「プリンセス・サテン」と呼ばれている
地厚で上品な輝きを放つ最高級絹サテンです。
プリンセスダイアナのウェディングドレスもこの素材だったといいます。
日本で作られている「プリンセス・サテン」は
英国王室のものを若干アレンジしているそうですが
桂由美さんもお気に入りで、
ウェディングドレスの大ヒット素材ともなっています。

ウェディングドレスの人気素材といえば
「ミカドシルク」が知られていますが
じつはこれも福島のシルクが発祥なのです。
重厚な最高級シルクを日本の最高位の「帝(みかど)」に見立て
「ミカドサテン」と命名しました。
これがニューヨークに輸出され、
その後ヨーロッパでウェディングドレスに使われ
いつの間にか、「ミカドシルク」と呼ばれるようになったといいます。
日本に名前が逆輸入され、こちらの名前の方が有名になったという
いきさつを伺いました。

果たして4月の英国のロイヤルウェディングには
「プリンセス・サテン」がどんなウェディングドレスとなって
あらわれるのでしょうか。
福島はフォーマルウェアなどに使われる絹織物産地として有名ですが
これを機に、ロイヤルウエディング効果が訪れて欲しいものです。

世界に発信!日本一のネクタイ産地「YAMANASHIネクタイ」

2011/03/10

富士山麓に位置する、山梨県の東部・富士五湖の郡内地域は
全国でも有数の織物産地です。
江戸時代には絹の先染め織物の「甲斐絹(かいき)」の産地として花開き
現在では、ネクタイ、ストールのネックウエアや
衣料、インテリア雑貨など様々な高級生地や製品を生産しています。

山梨が「日本一のネクタイ産地」であることは以外に知れておらず、
今回の展示会
『YAMANASHIネクタイフェア〜ネクタイ無しでは生きられない〜』は
あらためて「YAMANASHI=ネクタイ」を国内はもとより
世界に発信しようとする狙いがあるようです。

そう、「imabari=タオル」のように、
世界的なトレンド情報&企画会社の「TREND UNION」とコラボして
「産地のブランディング」を図ろうとするものです。
そのブランディングアイテムとして
日本一の生産量を誇るネクタイにスポットがあてられました。

「TREND UNION」がディレクションしたテーマを映し出したスクリーン。

山梨県富士工業技術センターの繊維部・主任研究員の五十嵐哲也さんに
展示の内容を説明して頂きました。
五十嵐さんは山梨の伝統織物の「甲斐絹」をPRしている
甲斐絹ミュージアム』の企画・制作にも携わっています。
素晴らしいサイトなので、こちらもぜひご覧ください。
「甲斐絹」に関してはまた別の機会に書きたいと思います。

今回の展示会のネックウエアの出展企業9社のパンフレット。
会社の「顔」の9人が登場した、カッコイイ編集です。
一部をお見せします。

ストール、マフラー企業(株)郷田商店の郷田洋志さん。
展示会でも自社のストールを首に巻き、自らがモデル兼営業マンです。

絹×麻、絹×ウールのネクタイを提案していた
(有)テンジンの小林新司さん。
この日は麻のスーツに絹麻交織のネクタイがステキでした!
山梨の産地の皆さんは若々しく
お洒落なスタイリングの方が目立ちました。

アーカイブ柄から掘り起こし、アレンジしたネクタイ。
「職人技」ともいえる精密なジャカードが見事です。(有)リード

フォーマルネクタイを得意とする羽田忠織物は
新しい試みで、自転車やバイクのライフスタイルシーンを意識した
帽子やストールを提案。

麻のスーツにぴったりな、シルク/リネンのネクタイ&ストール。
シルクに麻やウールの交織を、たて密度を変える実験を重ねながら
結びやすく、風合いの良い織り柄を作り上げています。(有)テンジン

ドビーやジャカードのネクタイやストールを製造しているツタキ織物。
赤に絞り込んだ展示がきれいでした。

自社のストールを首に巻いて、丁寧な説明をする
(株)郷田商店の郷田洋志さん。「オンリーワン」に力を入れた
織りに凝ったジャカードストールが提案されていました。

今回の展示会では
「TREND UNION」が山梨産地のアーカイブの整理や企業の特性を調査。
それを元に、伝統を生かしながらもカラーや質感などで新しさを出したり
ライフスタイルをふまえた提案がされています。

各企業は、それぞれの役割分担をしながら
「made in YAMANASHI」の「YAMANASHIネクタイ」で
ブランドビジネスを進めていくのでしょう。
今後の発展におおいに期待したいものです。

山梨織物産地、本気の「ブランディング」。

2011/03/08

ちょっとお洒落な織物産地の展示会がありました。
クールビズなど、メンズのカジュアル化が進む中で
日本一のネクタイ産地が
『NO TIE,YOU DIE. 〜ネクタイ無しでは生きられない〜』
と打って出て『YAMANASHIネクタイフェア』を開催。

・・・インビテーションカードです・・・

主催は「山梨県絹人繊織物工業組合」です。
普通、産地の展示会というと
デザイナーや学生とコラボして製品を作ったり
生地がハンガーにかけられた「生地ありき」が中心。
組合の“お偉いさん”が談笑しているイメージがあったのですが
原宿のアートギャラリーで開催されたこれは
「お〜っ、カッコイイじゃない!」
中にいる方も、ちょっと“ギョウカイ風”

・・・木の壁面を上手に使い、まさにギャラリーのイメージ・・・

驚いたのはこの展示会のディレクションを行ったのが
「TREND UNION」と知った事です。
フランスの有名なファッション関連のトレンド情報&企画会社で
創設者のリー・エデルコートさんはトレンド予測のパイオニア。
『TIME』誌で、世界で最も影響力のある25人に選ばれた事もあります。
トレンドブックはかなり高額な事でも知られていますが
「TREND UNION」にディレクションを依頼するとは…
山梨産地もかなり本気で「産地のブランディング」に取り組むのかと
興味津々の取材です。

昨年10月に「TREND UNION」が産地や各企業の特性調査を行い
今回の展示会は、9社のネクタイ企業が
それぞれの個性を打ち出すネクタイを展示。
産地に眠る膨大なアーカイブをひもとき
蓄積されてきた産地の技にスポットを当てながら
未来に向けた新しい表現を作りあげたといいます。

産地の若手が頑張っている、展示の詳しい内容は次回お伝えします。

ジャポニズムで一世風靡した、「薩摩ボタン」の話し。

2011/03/03

銀座の老舗ボタン専門店「ミタケボタン」さんで
牡丹や藤の花、浮世絵のような絵を描いた陶磁器のボタン見つけました。
「薩摩ボタン」と書いていました。
聞き慣れない名前なので調べてみたら
幕末に薩摩藩が軍資金調達のために「薩摩焼」のノウハウをもとに
藩の御用窯で陶磁器のボタンを作って輸出したものだそうです。

右下が薩摩ボタンです。
「薩摩焼」は「貫入(かんにゅう)」というひび割れが特徴です。
ちょっと写真では見えにくいですが、「ミタケボタン」さんで
ぜひ直接ご覧になってください。

薩摩といえば、ご存知「篤姫」でも知られるところ。
義父島津斉彬は「集成館事業」という、日本最初の洋式産業を起こした方で
そのひとつとして「薩摩焼」にも力を入れていました。
「薩摩焼」はウイーン万博やパリ万博にも出品され
日本的・東洋的な絵付け、金彩を多用した華麗な作風が欧米人に好まれ
「SATUMA」の名前はまたたく間に世界に広まりました。

大きな花瓶や置物や人形、小さなものとしてこの「薩摩ボタン」や
ベルトバックル、ブレスレットなども輸出されていいました。
当時の「ジャポニズム」ブームも相まって、
「小さな日本画」の陶器のボタンも「SATUMA」の愛称で大人気に!
その後には京都、九谷、有田など各地で
「SATUMA」の意匠を模したボタンが作られ
「京都SATUMA」「金沢SATUMA」「横浜SATUMA」などの名を付けて
輸出されていたようです。

こちらも焼き物のアンティークボタンです。
七宝かポーセリンのボタンかと思います。

陶器のボタンといえば、私の大好きな陶芸家の「ルーシー・リー」も
第二次世界大戦中から戦後にかけて陶器のボタンを制作していました。
物資が不足していた時代、ファッション界から注文が殺到していたようです。
三宅一生さんも、彼女のボタンのコレクターとして知られています。
「ルーシー・リー」の展覧会は時々行われていますが
現在も開催されているようです。
http://www.lucie-rie.jp/

また近くで開催される機会がありましたらこちらも見に行きたいものです。

英国貴族の召使いの、「リバリーボタン」の話し。

2011/03/01

昨日ご紹介した、創業60年の老舗のボタン専門店「ミタケボタン」は
ヨーロッパを中心とする輸入ボタンが7〜8割という品揃えで
1個しかないゴージャスなアンティークから
実用的な貝ボタンまで、1日いても飽きないような品揃えです。

これはくるみボタンを作る機械です。
「鉄のオブジェ」のような存在感が、いいですね!

額に入れられて飾られていた、宝石ボタン。

年代物のボタンBOXが、いい味を出しています。

チョコレートのような遊びのある演出もありました。
(バレンタインシーズンだったから?)

このボタンをつけるだけで、今年注目のマリントラッドが!

ちょっと珍しいボタンの話しをご紹介します。
これは「リバリーボタン」といいます。
リバリーliveryとは「召使いのお仕着せ」のことで
英国貴族が召使いのお仕着せに着させた服についているボタンです。
およそ年100年〜200年前のものらしいです。
ブラスボタン(真鍮ボタン)はそんなに珍しいものではなく
学生服やミリタリーなどの制服によく見られるものです。
しかし「リバリーボタン」を見たのは初めてです。

『テキスタイル用語辞典』の執筆で、「ハウスチェック」を調べていたら
(※「ハウスチェック」とはバーバリーやアクアスキュータムのように
ブランドを象徴する独自のチェック柄のことです)
もとはスコットランドの領主が、家臣や使用人の衣服を定める習慣があり
それに使われていたチェックという事がわかりました。
「ハウスチェック」は家族から使用人まで着せていた「お仕着せ」なのです。
おそらく「リバリーボタン」に描かれているのも
貴族の家系の紋章、宗教や何らかの団体をあらわした記章なのでしょう。
そういうロマンを馳せながらボタンを選ぶのも楽しいものです。

次回は「薩摩ボタン」について書いてみたいと思います。