Archive for 05, 2011

キャサリン妃のウエディングレースの話【VOL.2】

2011/05/24


英国ロイヤルウエディングでキャサリン妃の
ウエディングドレスのトップに使われていたのは
「カリクマクロス・レース」という、
アイルランドの伝統なチュール・レースです。
1981年のダイアナ妃ののウエディングドレスにも
使われました。

1820年にアイルランドの
カリクマクロス(キャリックマクロス)で始められたという
手工レースで、チュールの上に花や葉のモチーフを作り
アップリケとカットワークを駆使しながら作る
大変手間のかかるレースで、
1900年代初めにはほとんど姿を消したといわれています。
今回は英国王立刺繍学校の教師や生徒、卒業生により
作られたそうです。

アップリケされるモチーフは
フランスの「シャンティイ・レース」という
チュール・レースのモチーフをカットして使われました。
シャンティイ・レースは
特に「黒」のチュール・レースが有名ですが
かつてはハンドレースのウエディングレースや
ヴェールなどが作られていました。
マリー・アントワネットや
皇妃エリザベートに愛好されたことでも知られています。

シャンティイ・レースからカットされた花や葉のモチーフは
バラ(イングランドの国花)、アザミ(スコットランドの国花)
シャムロック(アイルランドの国花)、
スイセン(ウェールズの国花) で
これらがカリクマクロス・レースの技法で
ちりばめられています。
全て意味のある模様なのです。

なかなか写真では分かりにくかったのですが
ボディスとアンダースカートにもシャンティイ・レースや
英国の「クリュニー・レース」から切り抜かれたモチーフが
全面にアップリケされているようです。
「フランスのレースと英国のレースが結びついた」と
説明がありましたが、
これも何か国と国の意味するものがあるのでしょうか…

一見、シンプルでシックなウエディングドレスのように
思われますが、かなり手の込んだ装飾性があり
本当に吟味された素材と、二度と作ることはできないであろう
英国の素晴らしい伝統技術が隠されてれているのです。

ちなみに、ダイアナ妃20歳、キャサリン妃29歳の花嫁です。
初々しいダイアナ妃、おとなの魅力のキャサリン妃が
よくあらわれている
二つの「カリクマクロス・レース」のウエディングドレスです。

「クリュニー・レース」については、また次回お話しします。

キャサリン妃のウエディングレースの話【VOL.1】

2011/05/23


ロイヤルウエディングは自国の伝統文化や
経済の活性化に貢献することも大きな役割のひとつです。
ウエディングドレスは
単なる個人の好みだけで選ぶことはできないのです。
自国のデザイナーが採用され、
自国の素材や伝統技術を取り入れて
王室伝統のモチーフや
代々受け継がれてきたアイテムなどを身につけるのが
「ロイヤル」たるステイタスになるのです。

キャサリン妃のドレスは
1981年にロイヤルウエディングを行ったダイアナ妃と
よく比較されます。
ダイアナ妃の時代はバブリーな80年代を象徴するような
ゴージャスで華やかなウエディングドレスでした。
袖やスカートが大きく膨らみ
ドレスのトレーンの長さも7.62mあります。
ティアラは、実家のスペンサー家に伝わる
「スペンサーティアラ」。
17世紀に作られたもので、結婚持参品のひとつです。
まさに「お姫様」の夢を乗せたドレスでした。

これに対しキャサリン妃はとてもシンプルな
ほっそりしたウエディングドレスです。
トレーンの長さも2.7mとかなり短めです。
「皇太子妃」となるダイアナ妃と
皇太子の息子の「王子の妃」という、立場の違いもありますが
大不況の時代の結婚式ですので
華美にしないという、それなりの配慮もあります。
キャサリン妃が貴族出身でなかったこともあり
「庶民性」ことばが盛んに使われました。
ティアラはエリザベス女王からお借りしたものです。
1936年に作られたカルティエのティアラで
女王の父ジョージ6世が妻に贈り、
エリザベス女王18歳の誕生日にプレゼントされたものといいます。
いずれも由緒正しきティアラです。

実はイギリスの大不況の時代に行われた
もうひとつのロイヤルウエディングがあるのです。
1840年ドイツのアルバート公と結婚した
ヴィクトリア女王のロイヤルウエディングです。

重厚なロイヤルウエディングの慣例とは違う
ゴージャスでありながも可憐なスタイルが打ち出されました。
現代のウエディングスタイルの原点となった
白のウエディングドレスや、ウエディングケーキなどは
ヴィクトリア女王のロイヤルウエディングが起源なのです。
この話しはまた別の機会に書きたいと思います。

ロイヤルウエディングにとって
「レース」はとても重要な意味を持ちます。
宝石にも等しい優美な手工レースは
歴史をも揺るがすほどで
かつては国の基幹産業でもあり
レース産業は国策として保護されてきました。
ヴィクトリア女王はドレスやヴェールに
英国の「ホニトン・レース」を採用し
以後これが英国王室御用達のレースとして
娘たちのウエディングドレスなどにも受け継がれる
英国王室の伝統レースとなりました。

今回キャサリン妃は身につけていたのは
このホニトン・レースではなく
アイルランドの伝統的な「カリクマクロス・レース」です。
「カリクマクロス・レース」はダイアナ妃のウエディングドレスにも
使われていたレースで、これもヴィクトリア女王時代からの
英国王室の伝統レースのひとつです。

次回はこの「カリクマクロス・レース」についてお話しします。

「PTJ 2012」カイハラ(株)

2011/05/20

5月11・12日開催された
「Premium Textile Japan2012(以後PTJ)」リポートです。

会場では久しぶりに貝原会長にお会いしました。
カイハラ(株)さんには
高速織機でデニムを織った時に廃棄物になる
(年間地球2周分の「デニムの耳」が廃棄物となり捨てられます)
「デニムの耳」の有効活用をしようと立ち上がった
デニムの耳PROJECT』のコラボなど
デニムイベントでもお世話になっております。

今回の『テキスタイル用語辞典』制作でも
デニムの加工などのサンプル提供で協力
いただけそうです。
そのデニムの加工について東京営業所の関原さんが
色々お話ししてくださいました。

カイハラ(株)さんでは高速織機で織られるデニムとは別に
「ヴィンテージ・デニム」と呼ばれる
昔ながらの「シャトル織機」で織るデニムにも
こだわったものづくりをしています。
デニムというのは“マニアック”な世界なので
特にメンズは「微妙な差」の
素人目には「どこが違うの?」というようなところに
こだわるのです。

その感覚が分からないと営業もできないので
カイハラ(株)さんの社員は全員がデニム好き!
デニムのことを本当に良く知っています。
見せて頂いたのはシャトル織機で織ったヴィンテージ・デニム。
「セルヴィッチ」と呼ばれる「耳」がついているのが特徴です。
高速織機で織ったデニムには「耳」がありません。

この2つのデニムは全く同じデニムですが
加工技術でこのような「微妙な色落ちの差」を表現できるのです。
この差が「マニアには良くわかるんですよ!」と
関原さんが説明してくださいました。

相変わらずヴィンテージ志向は続いていますが
「微差」をどれだけマニアにアピールするかが
企画の “腕”になるようです。
このこだわりができるのが「日本のデニムの魅力」でしょう。

今回の「PTJ 2012」で気がついたのは、
いいものづくりをしているメーカーさんは
シャトル織機などの「低速織機」にこだわった
ものづくりをしていることろが多いことです。
自社で素材企画ができ、
何よりも「素材が好き!」「いいものを作りたい!」と思っている
“人の情熱”が、いい製品を生み出していることを感じました。
生産効率や価格だけではない「職人魂」が「日本のものづくり」を
支えてくれていることに、大きな希望を見いだせたような気がします。(完)

 

「PTJ 2012」敦賀繊維(株)

2011/05/19

5月11・12日開催された「Premium Textile Japan2012(以後PTJ)」リポートです。

敦賀繊維株式会社

敦賀繊維は「エンブロイダリーレース」の会社です。
『テキスタイル用語辞典』執筆でレースのことを色々調べて
エンブロイダリーレース機が
幅広いレースを作ることができるのに驚きました。
ケミカルレース、チュールレース、穴開き刺繍のボーラーレース
生地全面に刺繍やレース加工をしたオールオーバーレースなど
大概のレースはエンブロイダリーレース機で作ることができるのです。


敦賀繊維の小室社長さんのお話しによると
エンブロイダリーレースの業界は
7割がインナーレース、2割は細幅レース、
残り1割が服地と産業用資材なのだそうです。
敦賀繊維はその数少ない服地を作っているメーカー。
社長を含めた7人のスタッフは全て企画ができ
営業専用の人はいないということです。
自社で糸を持ち、全て自社工場で作れるのが強み。
8割は別注で、自社の「企画力」を大切にした
ものづくりをしているとのこと。

またエンブロイダリーレース機は
高速機が当たり前になっている時代に
敦賀繊維は低速機に改良してレースを作ってると聞き驚きました。
低速機にすることで、細番手の糸や、番手違いや意匠糸ミックスなど
様々な糸使いが安定していくのだそうです。

ちょっとクラシックやアンティークのテイストを醸し出せるのも
こういう低速機ならではのものなのでしょう。
いいものづくりをしているところは
「低速機」を使っているところが多いことを感じます。

「PTJ 2012」 (株)日本ホームスパン

2011/05/19

5月11・12日開催された「Premium Textile Japan2012(以後PTJ)」リポートです。

株式会社日本ホームスパン

岩手県花巻市で、世界のスーパーブランドの生地を作っていると
聞いていたので、とても興味があった会社です。
ツイードを中心にした親子3代のファミリー企業のようで、
ものづくりにも、暖かさとセンスの良さが感じられます。

甘さのある柔らかなツイードは色も装飾性も適度で
「そうそう、こんなのが欲しかったの!」と思うものばかり。
女性の心をくすぐる、今の気分のツイードです。

一緒に行った『yourwear』の佐藤さんが
「こんなスカート作りたいな…」と。

ネットショップでは小岩井農場の羊の毛で織った商品や
手紡ぎのツイードマフラーも販売されています。
Textile Tree特派員のソルトレイクのあいちゃんの取材でも
ローカル素材にこだわり、
地元の羊の毛糸で手紡ぎのニット作品を作っている
ジュリアナの話しがありましたが
ローカルの魅力を最大限に生かして頑張っている企業は
ぜひ応援したいものです!

「PTJ 2012」 (株)林与

2011/05/19

5月11・12日開催された「Premium Textile Japan2012(以後PTJ)」リポートです。

株式会社 林与

近江の麻の老舗の、林与社長さんにお会いするのが
とても楽しみでした。
この日は3月に林与さんを訪ねた
yourwear』の佐藤さんも一緒で、
佐藤さんは林与さんの
30年以上前に織られた麻で作ったハンカチを
林社長と私にプレゼントしてくれました。
いい麻は年月が経つほどに艶を増すとのことで
本当に色合いも光沢感も今のものとはひと味違いました。
このハンカチのことは佐藤さんのブログでご覧ください。


・・・林社長と、いつも笑顔が素敵なスタッフのお二人・・・

林社長のブログ「リネン日記」は
ファッションに携わる方にぜひ読んで頂きたいものです。
知識として役立つばかりでなく、ものづくりの心が伝わってくる
私の大好きなブログです。

林社長はPTJのビジネスマッチングにも積極的に参加し
『matohu』さんともいいお話しができたと喜んでいました。
今回の展示会はかなりお客様の数も多く、手応えを感じているようでした。
林社長は麻の話をしたら1日中話しているくらい
思いや研究心が熱い方です。


林与さんは「幻の糸」ともいわれるアイリッシュリネンの糸を持っている
貴重なメーカーさんです。


この麻のブラウスも20年前の麻で作ったものです。
昔のいい麻は「黄味」がかった何ともいえないいい色合いです。
しかし今の麻は「灰味」がかった色合いです。
いい麻は洗うほど柔らかくなり光沢も出るといいます。


こちらのサンプルは、文化学園の学生さんが
作ってくださったものだそうです。
林社長はゆくゆくは上質な麻で
アンティークのランジェリーのようなものを作りたいと話していました。

「PTJ 2012」天池合繊(株)

2011/05/19

5月11・12日開催された「Premium Textile Japan2012(以後PTJ)」リポートです。

天池合繊 株式会社

天池合繊株式会社は「世界一薄く・軽い」超極細繊維で
知名度を高めた『天女の羽衣』を打ち出しています。
ラグジュアリーブランドから
「スーパーオーガンザ」と命名されたことから、
世界的にはこちらの名前の方がよく知られています。
一般的なストッキングの1/5の細さの7デニールの
スーパーファイン・ポリエステル・モノフィラメントを使用。
1㎡の生地の重さがわずか11gという
「空気のような透明感」「空気のような軽さ」が特徴で、
ほんの少しの空気にも揺らめく美しさは、
まさに「天女の羽衣」!

・・・「天女の羽衣」を纏った美しいモデルさんがとても目立っていました!・・・


・・・空気のような透明感と軽さの色とりどりの羽衣・・・・

『プレミアム・テキスタイル・ジャパン2012』

2011/05/15

5月11・12日開催された「Premium Textile Japan2012(以後PTJ)」は
トップクラスの技を持つ国内外のメーカーの展示商談会です。
バイヤーと招待客に来場者を限定したことや
会場が青山という立地の良さもあり
実質レベルの商談会となり
来場者も当初の予想を上回リ大盛況でした。

「天池合繊株式会社」さん、近江麻の「株式会社林与」さん、
今回の大震災で大変な思いをした
福島シルクの「齋栄織物株式会社」さんなど
『テキスタイル用語辞典』の制作で素材協力をいただいている
メーカーさんも出展するので、お会いできるのが楽しみでした。

レースの魅力と怖さ…

2011/05/13


このところ『テキスタイル用語辞典』の「レース」の執筆に
のめり込んでしまい、すっかりブログもご無沙汰してしまいました。
4月29日の英国のロイヤルウエディングの
ドレスやレースの素材も気になるところだし、
色々調べていたらあっという間に時間が経ってしまい…

ヨーロッパにとって「レース」というのは
歴史を動かすくらいに重要なものです。
16世紀〜18世紀のレースといえばハンドメイドレースのこと。
熟練の職人が1cm四方を織る(編む)のに、
15時間〜25時間もかかるといいます。
気の遠くなるような時間と作業を経て作られる
まさに「宝石」に匹敵するほどの希少価値があるものなのです。
「レース産業」は国の基幹産業として
莫大な利益を生み出すものですから、その技術は門外不出。
イタリアのヴェネチアでは、レース職人が国外で仕事をすると
死刑になったといいます。

映画などで貴婦人がレースのハンカチを落として
殿方の気を惹くというシーンがありますが
何しろこの時代は「宝石」を落としたようなものですから
それはそれは大変なことなのです。
ハンカチを男性に差し上げるということは
「自分の心を差し上げる」に等しいこと。
そのことを題材にした歴史物語も数多くあります。
王侯貴族の肖像画は何はともあれ
レースだけは正確に描くことを要求されたようです。
フランス革命の原因のひとつはマリー・アントワネットの
レース好きによる浪費といわれ、
フランス革命後、フランスのレース産業は潰されています。

「レースマニアの世界」はファッションとはまた別の次元で
私も今までなかなかアンティーク・レースのことを
勉強する機会が無かったのですが
今回徹底して調べたことでその奥の深さに驚きました。
特に「歴史とレースの物語」には心が惹かれます。
もう少し時間ができたらもっと調べてみたいものです。

そして先日のロイヤルウエディングのレースですが
ロイヤルウエディングには英国伝統のレースが使われ
その背景にある話も大変興味深いものがあります。
そのことは次回に書きたいと思います。