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ホログラム箔金襴と、文化学園大学のファッションショー

2012/04/23

(有)中村金襴(きんらん)工場が「ホログラム箔金襴」を織ることになった
いきさつをお話しします。

中村金襴工場は「引箔金襴(ひきばくきんらん)」という伝統的な技術を
従来の掛け軸用ばかりではなく、新しくインテリア部門も開発し
新たな市場を求め、昨年10月下旬には
中東のドバイで展示会も行っていました。


きらびやかな引箔金襴はゴージャス好きなドバイでも
きっと受け入れられると意気揚々と出かけましたが
しかし…見事に沈没…
見た目の派手なゴージャスさを好むドバイでは
渋みのある輝きは「地味過ぎ」て、ほとんど興味を示さなかったといいます。
日本の高度な技術も、ドバイの方々には関心外。
ドバイで人気だったのはインド製のきらびやかな織物でした。

中村社長は「なんとかしてドバイの人たちをアッと言わせたい!」と
日本に帰り、さまざまな素材や手法で新しい織物を試作。
引箔織りのホログラムもそのひとつで、
それが私のところに送られてきたというわけです。


ホログラムは、3Dの立体画像を記録した特殊フィルムのことで、
空間に浮かんだように見える画像を作り出すことができます。
光の当たり具合で色や模様がキラキラ変化し、
紙幣の偽造防止などにも使われている技術です。
これをフィルム糸状にして引箔織りの技法で織り込んだものです。
シート状のホログラムを貼った布はありますが
ホログラムを“織り込んだ”技術は非常に難しく
おそらく世界初ではないかと思います。

中村金襴工場が試作した「ホログラム箔金襴」は
一見ラメや一般的なフィルム糸で織ったもののように見えますが
見る角度により色の表情が変わるのは
ホログラムならではのものです。
織り方によっては、立体的な柄を
浮き立たせることも可能だそうですが
これにはかなり高度な技術を必要とします。


・・・テキスタイル企画コースの学生さんは『微細美』をテーマに
昆虫の体の美しさを表現・・・

文化学園大学服装学部の服装造形学科のショーでは
テキスタイル企画コースの学生さんが
「ホログラム箔金襴」を使用した作品を作りました。
当初より昆虫をテーマに企画しており、
玉虫のような質感の素材を探していたので
服装造形学科の鈴木教授や文化ファッション研究機構の森川機構長が
この「ホログラム箔金襴」を見た時に、“これだ!”と思ったようです。


・・・ショー終了後、ホログラム箔金襴を使用したドレスを撮影する
中国放送のカメラマン・・・


・・・アゲハチョウをイメージした作品。中に着ているドレスがホログラム箔金襴・・・


・・・靴もホログラム箔金襴で作っています・・・

中東のドバイへの進出計画、インテリア部門の開発など、
中村金襴工場の新しい試みに注目していた広島の中国放送は
今回の文化学園大学のいきさつにも興味を持ち
中村社長のドキュメンタリーの一環として
ショーを取材することになりました。
新しく生まれ変わった地元メーカーの古典素材が、
若い学生さんにどう表現されるかは
中村社長も多いに期待するところでした。


・・・メールなどで何度もやり取りしていましたが、
お会いするのは本日初めてで、感無量の中村社長(左)と森川機構長(右)・・・


・・・中国放送の取材を受けるホログラム箔金襴の作品を製作した学生さんの一人・・・

初めて学生さんのショーを見学した中村社長は
そのレベルの高さに驚いていました。
これからのファッション業界を担う学生さんや若いクリエーターに
素晴らしい技術を持った日本の伝統素材を知っていただき
新しいクリエーションで受け継いでいって欲しい。
そう願う中村社長の願いは、日本に残り少なくなった老舗メーカーさんの
切なる思いでもあるのです。


・・・中村社長の祖父の名前(カイチ)を付けたmodan kinran brand『CAITI』
を立ち上げ京都でデビューしました。ドバイのリベンジになるのか…・・・

 

 

中村金襴工場のホログラム箔金襴

2012/04/22

4月20日に行われた文化学園大学 服装学部 服装造形学科の
ファッションショーに、広島のTV局の中国放送が取材に来ました。
取材したのは、広島県福山市の(有)中村金襴(きんらん)工場
ショーに提供した「ホログラム箔金襴(はくきんらん)」と名付けられた織物です。
そのいきさつと、中村金襴工場のことをご紹介します。


・・・中村金襴工場の中村幸弘社長と「ホログラム箔金襴」を使った
ショーの作品を撮影する広島中国放送・・・

中村金襴工場は昭和29年(1954年)創業で、
掛け軸や額装に使われる金襴や緞子(どんす)の製造では
日本の70〜80%のシェアを占める織物メーカーです。
「金襴」は金箔糸や金糸で模様を織り出した絢爛豪華な織物で、
金銀箔を織り込んだものは
「引箔織り(ひきばくおり)」「引箔金襴」ともいいます。

手織りだった引箔金襴を自動化する
「引箔金襴自動装置」を自社開発したことで
安価な提供が可能になりシェアを広げました。
現在、引箔金襴を織れるのは日本のみとなっており、
文字通り世界トップの生産メーカーとなっています。


・・・金襴を織る織機がずらりと並ぶ中村金襴工場・・・


・・・引箔金襴自動装置を取り付け、金襴が織られます・・・


・・・よこ糸に使われる金・銀・銅などの平箔(金箔糸)・・・

しかし、年々掛け軸の需要は減少。
新しい販売シェアを求めて中村社長は、新商品の開発や
インテリア部門の進出などに積極的に動き始めました。
そのひとつに、引箔織りの技術で「ホログラム」を織り込んだ
織物の試作があり、これを文化ファッション研究機構
森川陽 機構長に私が紹介したことで
中村金襴工場と文化学園大学の出会いが生まれました。


・・・見る角度により色合いが変化する「ホログラム箔金襴」・・・

森川機構長は引箔織りのホログラムに大変興味を示され
この素材を文化学園大学服装学部服装造形学科の
鈴木正文教授に紹介しました。
鈴木教授は4月に行われる造形学科のショーに使いたいので
中村金襴工場に生地の提供をお願いし、
中村社長はこれを心良く引き受けました。
伝統技術で新しく表現した素材を、
次世代のクリエーターに表現して欲しかったからです。


・・・4月19日の新聞では「ホログラム箔金襴」の紹介と
文化学園大学のファッションショーで発表される記事が掲載・・・


・・・『テキスタイル用語辞典』でも解説している「金襴」・・・

次回は「ホログラム織り」を織ることになったいきさつを
お話ししたいと思います。