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伝統技術×ハイテク、『エコマコ』岡 正子のエシカルスタイル

2012/09/29

長野を拠点に、エシカルなファッション・クリエーションを発信している
エコマコ』の2013春夏の展示会がありました。
エコや、エシカルをコンセプトに掲げたブランドで、
『エコマコ』のように透明感のあるきれいな色を打ち出しているブランドは少なく、
まさに会場はテーマの「光のカケラ」そのもの。
優しい光を浴び、会場全体にいい香りが漂うような心地良さです。


・・・・2013春夏『エコマコ』展示会・・・・

今シーズンは、『エコマコ』を代表するペールなファンタジー表現に加え、
「アンティーク×最先端」、「ビジネス×リラックス」、「トレンド×エコスタイル」の
3つのテーマで、新しい融合を打ち出しています。


・・・・「アンティーク×最先端」のテーマでは、クリムトやルネ・ラリックに
インスパイアされたプリント柄や刺繍がポイント。ジャカードは、
桐生の織物工場の40年〜50年前のアーカイブを復活させました・・・・


・・・・一見別々に染め分けた生地を使用しているかのように見えますが
これは1色の製品染め。異素材のため、1つの染料でこんなに違う
染まり方となってあらわれます・・・・


・・・・水玉のような刺繍は、地元の内職さんにお願いしています・・・・


・・・・水泡?、風船?不思議なディテール・・・・

デザイナーの岡 正子さんは、多彩な顔をもつことでも知られています。
(株)ECOMACOの代表であり、OKA学園トータルデザインアカデミー校長。
そして2011年からは、杉野学園 ドレスメーカー学院 院長に就任しました。
ナチュラルライフコーディネーター、カラーアナリストの肩書きもあります。

岡 正子さんは、流行を追い、大量消費・廃棄を繰り返すファッション界に疑問を抱き、
環境に配慮した、持続可能な社会のためのファッションへと方向転換。
試行錯誤を繰り返しながら、人にも環境にもやさしい
ポリ乳酸繊維やバンブー繊維、和紙繊維などと出会いました。
現在の『エコマコ』の基本となる素材です。


・・・・デザイナーの岡 正子さん・・・・

そしてもうひとつ、岡 正子さんが大切にしているのは、
日本の伝統的な職人さんの技術です。
特に京都西陣の福本染工との出会いは、
『エコマコ』のクリエーションを広げました。
福本染工は天然染色を得意とする、約130年も続く染色工房。
コンピュータ化され数値をデータ管理した染色工場が多い中
今なお、 “職人の長年の勘”による手法で染色が行われています。
染料の調合、染める釜の温度、染液に浸ける時間など、
その都度布の性質や状態を見計りながら染めます。
「繊維は生き物だから」です。


・・・・『エコマコ』としては初めての挑戦の「エコマコ・ブラック」。
キャリア向けの「ビジネス×リラックス」のテーマで展開されているもの。
プリーツや絞りはすべて京都の福本染工の職人さんの手仕事で、
絞りを入れながら染色が行われます・・・


・・・・絞りも駆使し、1回の染色で染め分けられる技術は、まさに職人技です・・・・

三代目となる伝統工芸士の福本久人さんは、
ポリ乳酸繊維やバンブー繊維、和紙繊維など、
ハイテクを駆使したエコ素材と飽くなき葛藤をして
今の『エコマコ』のクリエーションを導いてくれました。
同じ染料でも繊維により染まり具合は全く違います。
異素材組み合わせのデザインは何度も実験を重ね、
一色染めなのにピンクとグレー、ブルーとベージュに染め分けたり、
ラベンダー、ピンク、ブルー、ベージュなど、
ファンタジックなグラデーションに染め上がります。
絞りと染めを同時に行えるのも福本久人さんならではの技です。


・・・・ポリ乳酸繊維(PLA)は、主にトウモロコシを原料とした生分解性合成繊維で、
植物由来の全く新しい合成繊維です・・・・

一つ一つが、福本さんによる手作業の染色なので、
同じ染めのものは二つとありません。
この素晴らしい染めの技術を楽しんでもらうのも
『エコマコ』の大きな魅力です。
福本久人さんは、常に“挑戦し続ける”方だといいます。
微妙な色のニュアンスにこだわり続け、『エコマコ』の世界観を
デザイナーと一緒に作り上げてくれています。
だからこそ、このような素晴らしい作品が完成するのです。
京都の職人さんは、技術があるばかりではなく
「美意識の感性が研ぎすまされて」センスがいいといいます。


・・・・一回の染めで、まるで辻が花のような微妙なニュアンスの
ぼかしの染めは、まさに職人技・・・

よく、いい染色だと思い、染めているところを伺うと
大概は「京都」の染色屋さんの名前が上がってきます。
繊細な美の伝統をもつ京都で、切磋琢磨された職人さんは
研ぎすまされた感性を技術に上乗せし、
依頼された以上の仕上がりを見せてくれます。
“あか抜けている”とでもいうのでしょうか…
地域のもの作りにはその土地が育んだ
独特のニュアンスがあらわれます。
日本人の持つ繊細さのあらわれなのかもしれません。
このようなもの作りの伝統は、なくしたくないものです。


・・・・このパンツスカートも、桐生の織物工場のアーカイブ。
模様をパンチカードに入れた、昔ながらの紋紙を用いて織ります・・・・


・・・・ 透明感のある繊細な素材に、ナチュラルな手刺繍がほどこされています・・・・

岡 正子さんが大切にしている3つめのもの作りに「手仕事」があります。
前述した日本の伝統技術・職人の技を
次世代に伝えていきたいことはもちろんですが、
クラフト要素を入れた「手の温もり」を感じる服づくりをしたいという
思いも込められています。
子供の頃お母様が、何でもない洋服に刺繍をしてくれ、
それが自慢の洋服になったという嬉しさが、
手仕事への愛着のきっかけになったといいます。


・・・・子供もペットのお洋服もお揃いです・・・・


・・・・ブライダルのドレスにも手刺繍やアップリケ。・・・・

『エコマコ』のもの作りには、刺繍やアップリケなどの
クラフト要素があちこちにあり、
しかもこれは地域の内職さんや、
授産施設のみなさんとの協業によって作られています。
生まれ育った長野を愛し、長野を拠点に制作活動をしている岡 正子さんは
地域の方達と一緒に、地域に貢献できるもの作りを
していきたいと考えています。

また、ウエディングドレスなどでは、披露宴への出席者が事前に
「Fuxico(フキコ)」というモチーフを作り、それをウエディングドレスに付けて
思い出のドレスに仕上げます。
手の温もりが、家族の絆となることを知っている
岡正子さんならではの発想だと思いました。


・・・・ウエディングドレスは、染め直して
パーティドレスなどに使用することができます・・・・


・・・・ウエディングドレスのスカート部分には「Fuxico(フキコ)」のモチーフ。
Fuxicoとはブラジルの伝統的な手芸の一つで、
日本では「ヨーヨーキルト」と呼ばれています・・・・

カラーアナリストでもある岡 正子さんは、色の持つ力を知ってもらいたいと
親子で色にふれあい、色を楽しむワークショップ「光のカケラ プロジェクト」を
今年スタートさせました。
何事も「無駄にしたくない」とする岡 正子さんは、
『エコマコ』の“残布”を利用して「Fuxico(フキコ)」を作って
モチーフとしてストールや小物雑貨に利用。
最盛期が終わり捨てられる花を染料にした、長野限定のグッズも作りました。
ワークショップでは、さらに端切れをフェルトのようにして
アップリケのようなクラフトワークの小物を制作します。
「最後まで使い切る」のも岡 正子さんのエコ哲学です。


・・・・親子で参加する「光のカケラ プロジェクト」・・・・


・・・・残布は色見本に沿って染められ、「ペパーミントの香り」「初恋」などと
ネーミングされた容器に分類されます・・・・


・・・・ワークショップでは、こんな時計が作られました・・・・


・・・・残布をミシンで縫ってフェルトのように固め、アップリケしたクッション・・・


・・・・残布を利用したたくさんのFuxicoは、授産施設のみなさんが作ってくださいます。
カラフルなFuxico作りを楽しんでくださるようで、とても丁寧な作りです・・・

そして岡 正子さんにはもう一つ大きな役割があります。
次世代のクリエーターの育成です。
1946年お母様の岡 久子さんが創立したOKA学園は、
長野でも歴史のある専門学校。
岡 正子さんは1997年に校長に就任し、現在はトータルデザインアカデミーとして、
ファッションをはじめ、グラフィック、WEBデザインなどの
プロフェッショナルを育成しています。
そして2011年には、
母校でもある杉野学園 ドレスメーカー学院 院長に就任しました。
岡 正子さんのエコ哲学の元で学び育っていく学生さんは、本当に楽しみです。


・・・・2012年、スティービーアワードで金賞を受賞・・・・

岡 正子さんのことは、知れば知るほど、驚くことが多く
その経歴や受賞歴には目を見張ります。
今年の8月もスティービーアワード(米国)主催の国際ビジネス大賞において
「Most Innovative Company of the Year」カテゴリーで金賞を受賞。
こつこつ積み重ねて来たエシカルな活動が、世界からも評価されています。
これからの、日本のファッション界・教育界を引っ張って欲しい
今後の活躍を多いに期待したいクリエーターです。

『ヤマナシ ハタオリトラベル』(有)テンジン

2012/09/10

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(有)テンジンをご紹介します。

(有)テンジン<テンジンファクトリー>
は、富士吉田の織物産地で
最も注目されている織物工場のひとつです。
かつては服地の裏地を織り、その後は傘地やネクタイを作ってきました。
ほとんどの織物工場は、コンバーター(問屋)からの注文を受けて
生地を織ります。


・・・・テンジンファクトリーの自社ブランド『ALDIN』のロゴマーク・・・・


・・・・『ALDIN』のパンフレットもオシャレでいい感じです・・・・

しかし、三代目の小林新司さんは、100%外注のシステムに疑問を感じました。
産地の機屋も自分たちで企画して、生地だけではなく製品も販売できる
メーカーとならなければこれからの時代を生き延びていけないと考え、
2000年にリネンブランド『ALDIN(アルディン)』を立ち上げました。
織物工場が企画して製品を販売する「ファクトリー・ブランド」の誕生です。
「生地を織り、デザインし、仕立てる」すべての工程を手掛けます。
織機もあえて高速のレピア織機から、昔ながらの低速のシャトル織機に切り替え、
ふっくらと温かみのある麻織物づくりにこだわりました。


・・・・(有)テンジンの専務であり、三代目の小林新司さん(左)・・・・


・・・・“機械美”に圧倒されるシャトル織機を揃えた工場・・・・


・・・・シャトル織機に柄を織りなすドビー装置を装着した「ドビー織機」。
パンチカード(紋紙)に図柄のデーターを組み込んで使用します。
コンピューター化が多い中で、パンチカードを使用して織るのは
非常に希少です・・・・


・・・・タイプライターのようなこの機械は、
ドビーのパンチカード(紋紙)を作るものです。
初めて見ました!もちろん現役で使用されているからすごい・・・・

小林新司さんは、かつて織物が丁寧に織られ、大切に使われた時代のように
長く使い込まれ“アンティークリネン”“ヴィンテージリネン”となるような
製品づくりを目指しました。
ヨーロッパでは当たり前のように親から子へと受け継がれている「リネン文化」を
富士吉田の地から発信し始めたのです。


・・・・シャトル織機は熟練した職人さんたちの技術なくしては織れません・・・・


・・・・よこ糸を巻いたスピンドルを中に入れて使用するシャトル・・・・


・・・・シャトルが往復して(折り返し)よこ糸を織りなしていくシャトル織機は、
両端が織り込まれ、「耳(セルヴィッチ)」と呼ばれる独特の端が織り上がります。
セルヴィッチもデザインのひとつとして、色を代えて配色したりします・・・・

シャトル織機は、糸や機械を手で微調整しながら、
長年の勘と経験で織る“職人さん”の熟練した技術が活かされる織機です。
小林新司さんは、代々伝えられてきた「高い“技術”を受け継いでいくこと」を
大きな使命としたのです。
そのためには完成度の高い“デザイン”を吹き込んでいくことが
不可欠と痛感していました。
いくら素晴らしい技術を持っていても、製品としてのデザイン的な魅力がなければ
マーケットで受け入れてもらうことができません。
目指したのは、流行に左右されない「ロングライフデザイン」でした。


・・・・ショールームで説明してくださったのは、小林新司さんの奥様。
アルディ事業部を担当しています・・・・


・・・・ショールームは心地良い日が入り、
アトリエ風のオシャレな雰囲気を醸し出しています・・・・


・・・・オリジナルブランドの『ALDIN』のカタログも丁寧に作られています。
織りから製品まですべて地場で作り上げており、
「YAMANASHI,JAPAN」の文字が印象的でした。
「YAMANASHI」をブランド化しようとする意思が伺えます・・・

『ALDIN』の製品のデザインにはデザイナーの妹さんご夫婦が
携わることになりました。
妹さんご夫婦は、人気ブランド『R&D.M.Co-』を手掛けている
オールドマンズテーラーの、しむら祐次さんと、とくさんです。
ヨーロッパのハウスリネンのような、手仕事風の刺繍、シンプルでモダンなドビー柄、
かすれ感を出したスペック染め、ネクタイの織り技術を応用したやすら織り、
バイオ加工でソフトに仕上げるなど、懐かしく生活に馴染んでいくような製品です。
テンジンファクトリーでは、他にもネクタイやストールの『LOPEN』、
カーテンなどの『Processus』などのブランドを展開しています。
OEMもやっていますが、すべて地場で作る丁寧なもの作りが特徴で
大量生産はできません。


・・・・・高密度のワッフル織り(蜂巣織り)のリネンタオル・・・・


・・・・シャトル織機で織った証しの「耳」もきれいです・・・・


・・・・優しい肌触りのリバーシブルの水玉柄・・・・


・・・・パリパリにかたい生機(きばた)状態のリネンのソムリエエプトンですが…・・・・


・・・・洗い込んでいくとソフトでとってもいい風合いになっていきます・・・・


・・・・かつて本業だったネクタイも麻素材で展開・・・・


・・・・先染めのチェックやストライプも素敵なカーテン地に・・・・


・・・・シンプルな麻のドレスやエプロン・・・・

富士吉田の織物産地は、小規模な家族経営が多いのが特徴です。
テンジンファクトリーは、織りから製品のデザインまでを家族で作ることのできる
理想のファクトリーブランドとなり、
富士吉田の織物工場の新しい方向のお手本となっています。

富士吉田産地のみならず、高い技術を持っている老舗の織物工場は、
大きな帰路に立っております。
技術に自信を持っている工場は、外注100%の単なる織物工場から
自分たちで企画ができ、製品化まで行える「ファクトリーブランド」に
転身したいと考えているところも多くなってきました。
しかし、マーケットニーズがよくわからなかったり、
製品化の工場背景がなかったり、何をどうやって作っていいのか
模索しているところが多いのも現状です。

もちろん「デザイン力」は非常に重要な要素ですが
自分たちが何を目指し、どういうものを作っていこうとするのかという
「コンセプト」や「ディレクション」がなくしては細部にばかり目がいってしまい
“核”のないもの作りとなってしまいます。
まずは、ブランドとしての哲学をきちんと持ち、
スタートされることを願うばかりです。


・・・・工場の前は木造のショールーム。ペンキを塗ったカントリーハウスのような
温もりのある佇まい。廻りには緑の山が広がります。「こういうところで働きたい…」
そう思わせる環境も重要な気がします・・・・

 

 

『ヤマナシ ハタオリ トラベル』(株)槙田商店

2012/09/09

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(株)槙田(まきた)商店をご紹介します。
(株)槙田商店は慶応2年(1866)創業という、
江戸時代末期から続いている機屋(はたや)さん(織物メーカー)です。
創業当初は、山梨県の織物産地である「郡内地方」特産の
甲斐絹(かいき)織物卸商を営んでいましたが、震災や戦争、
そして時代の需要の変化などで服の裏地、そして傘地へと切り替えました。
ジャカードや先染めの傘地では、国内生産の約80%のシェアを占めます。


・・・・レピア織機が並ぶ(株)槙田商店の工場・・・・・

甲斐絹は羽織りの裏地に使われた「薄く・軽く・滑りの良い、高級先染め織物」です。
かつては一世風靡した甲斐絹も、非常に高度な技術を要するため途絶え、
現在は“幻の織物”となってしまいました。
しかし、甲斐絹のもつ「先染め・細番手・高密度・紋織り」などの特性を生かし
「服の裏地」「傘地」「ネクタイ地」「布団地」などへとシフトしている
織物メーカーが多いのも、郡内産地の特徴です。

146年という歴史を持つ(株)槙田商店ですが、
最先端技術の導入にも積極的です。
コンピュータージャカードも早々導入し、
現在はレピア織機を中心に、服地や傘地の120cm〜180cmの
広幅を織ることができます。
特に傘などに使用されるオリジナルジャカードは、他社には製造できない
大きな織り柄表現を可能にし、デザインの領域を広げています。


・・・・コンピュータージャカードのコントローラー。
柄のデーターを組み込んだUSBを入れて使用します・・・・


・・・・レピアのジャカード織機。柄を織る「紋織り」には「ドビー」と
「ジャカード」があり、たて糸の動かし方で、より複雑な柄を織ることができるのが
ジャカードです・・・・・


・・・・・たて糸は「綜絖(そうこう)」という細い金属棒の穴に1本1本通します。
1本1本のたて糸を上下運動させながら、その間によこ糸を通し
複雑な紋織り(ジャカード)を作り上げることができます。
(株)槙田商店にはたて糸の数が4000口〜12000口のジャカード織機があります。
1本1本の綜絖に糸を通すことを「綜絖通し」といい、とても根気のいる作業です・・・・・

自動織機は、よこ糸を巻いた「シャトル(杼:ひ)」を使用して織る
「シャトル織機(有杼織機)」と、シャトルを使用しない「無杼織機」に大別できます。
織るスピードの違いから前者を「低速織機」、後者を「高速織機」ともいいます。
生産性の高い「高速織機」を代表するのが「レピア織機」で、
織機に「ジャカード装置」を取り付けたものを「ジャカード織機」と呼びます。
(株)槙田商店のものは、レピア織機にジャカード装置を取り付けた「ジャカード織機」です。


・・・・・「レピア」とは「細い槍状の剣」の意味で、よこ糸をつかみ、
たて糸の間に差し込んで織ります。左側にある「レピア」がわかるでしょうか?・・・・・


・・・・「レピア」を拡大したものです・・・・


・・・・反対側から伸びてきた「レピア」に糸を手渡しするように、つかみ替え、
よこ糸を通します・・・・


・・・・「シャトル織機」は、「シャトル」が往復してよこ糸を通すので、
糸が織り込まれ、両端は「耳」と呼ばれる形状になります。
「レピア織機」は一方通行なので両端は房状になり、織り上げた後に切断されます。
切断された紐状のものは「房耳(ふさみみ)」と呼ばれます。
房耳は、以前は廃棄されていましたが、最近は手編みや手織りなどに
利用されるようになってきました。クラフト素材としても注目されはじめています・・・・


・・・・ジャカード織機はたて糸が上に長く伸び、2階建てになっていて、
上部にたて糸のコントローラーがついていいます。
2階に人がいるのがわかりますか?・・・・


・・・・2階に上がり糸のコントローラーを見学です。
自動織機になる前の手機(てばた)の時代は、紋織り(ジャカード)を織るときは
2階建て部分に人が上がり手で糸を上げ下げしていました・・・

織物工場見学のあとは、傘工房の見学です。
織り上げられた傘生地は4枚くらいに重ねられ、三角定規のような
専用のスケールで職人さんが丁寧に手で裁断します。


・・・・・メモや写真を撮りながらみなさん真剣です・・・・


・・・・これが傘を裁断する時に使用するスケール。デザインやメーカーの規格により
たくさんの種類が用意されています・・・・


・・・・(株)槙田商店のジャカードや先染めの傘地は、
国内生産の約80%のシェアを占めます。プリントと違い、ジャカードは
傘の裏側も織り柄があらわれて、きれいです・・・・


・・・・・(株)槙田商店は、傘生地の提供ばかりではなく、オリジナルの傘も作っています。
ジャカードの傘は、絵柄に合わせ織り方を変えているので、とても高級感があります
(老舗っぽいタグです!)・・・・


・・・・1本1本手づくりの傘は、ひとつつひとつ柄合わせもしっかりされていきます・・・・


・・・・・傘生地は上糸だけで縫う特殊なミシンを使用します。
上糸だけでチェーン状に縫い上げるので、ニットのように
縫い代が伸び縮みできるのが特徴です・・・・


・・・・・裁断した生地はこのように縫い合わせられ、傘らしくなっていきます・・・・


・・・・・縫い代は三つ巻にされます。日本洋傘振興協議会(JUPA)では
JUPA(ジュパ)基準を設定し、会員の洋傘の品質・信頼・安心の証として、
JUPAマークを添付しています・・・・


・・・・「傘を買うならMEDE IN JAPANで<JUPA>マークのあるものを!」と
職人さんの説明にも力が入ります。携帯電話の写真を使っての熱い解説です!・・・・


・・・・山梨県南都留郡西桂町にある創業慶応2年(1866)の(株)槙田商店です。
なまこ塀の蔵がある、歴史を感じる建物です。回りは山に囲まれ、
とてもきれいな気持ちになれる環境です・・・・

(株)槙田商店は伝統技術を活かしてながら、
新しい技術を上手に取り入れている会社です。
「傘地」という分野に特出しているのも魅力です。
今回は時間がなくて見せていただけませんでしたが、
200年前の素晴らしい織りサンプルもたくさんあり、これにも興味津々です。
いいものを見せていただきありがとうございました。

『ヤマナシ ハタオリ トラベル』産地見学バスツアー

2012/09/03

山梨県富士工業技術センターが主催する
産地見学のバスツアー『ヤマナシ ハタオリ トラベル』(8月27日)に参加しました。
(協力:山梨県絹人繊織物工業組合台東デザイナーズビレッジ
織物産地は生地問屋(コンバーター)との取引が一般的なため
アパレルと交流することがほとんどありません。
このツアーでは、デザイナーさんなどと直接交流することにより、
産地の特性を知っていただき、また産地もデザイナーさんの要求を知り、
もの作りの活性化を図ろうとするものです。


・・・・台東デザイナーズビレッジに集合し、ここから出発です。
東京からは15〜16人が乗車しました・・・・・


・・・・山梨に向けて出発です!それにしても暑い…・・・・

山梨県富士工業技術センターは、
山梨県内企業の振興と技術の高度化を支援するための機関で
通称「シケンジョ」と呼ばれています。
繊維部の公式ブログ「シケンジョテキ」は
この織物産地の活動を知るためにもとても参考になります。
何よりも、写真のクォリティの素晴らしさと、
人の温かみが伝わってくる編集視点が私は大好きです。
「シケンジョ」には『テキスタイル用語辞典』の制作時でも
甲斐絹(かいき)などの写真や生地提供で大変お世話になりました。
山梨産地は「シケンジョテキ」を通じてとても興味を持っていましたので
今回のバスツアーは期待感でいっぱいでした。


・・・・とてもいい資料となった『ヤマナシ ハタオリ トラベル』公式ガイドBOOK・・・・


・・・・今回のツアーのスケジュールを地図で示したガイドマップ・・・・

山梨県の織物産地は、山梨県の東側の
郡内(ぐんない)」と呼ばれる地域にあります。
富士北麓に位置するこの地域は、
目の前に広がる大きな富士山に見守られながら、
江戸時代頃から絹や絹織物の産地として発展してきました。
特に羽織などの裏地に使われる「甲斐絹(かいき)」という
先染めの高級絹織物が一世を風靡。
しかし、着物の需要が激減したことや、
機械化で作ることのできない高度技術を要する織物であることから
生産が激減。今では幻の織物となっています。

第二次世界大戦前まで、日本は生糸や絹織物、綿織物などの繊維産業が
基幹産業として輸出の主座を占めていました。
明治20年頃には大きな製糸工場が全国で約650ありましたが、
現在は2つだけだといいます。
織物工場は残っていても、製糸工場はほとんど無くなっています。


・・・・織物産地の「郡内」は、山梨県の東側にあり、江戸時代から
江戸を取り囲むように発展した「絹と絹織物」の産地のひとつです・・・・

今回のツアーでは、富士吉田産地のアドバイザーもしている
台東デザイナーズビレッジ村長の鈴木淳さんがナビゲーターとなっています。
山梨に向かうバスの中で、産地の背景や、今回訪れるメーカーさんの特徴などを
話してくださいました。移動時間を有効に使う見学前の勉強会はとても良かったです。


・・・・・「ドビー」と「ジャカード」の説明がとってもわかりやすかったです!・・・・

“産地”というのは、愛知県一宮の「毛織物」、
兵庫県西脇産地(播州織物産地)の「綿織物」、
静岡県福田地区の「コーデュロイ」、今治の「タオル」、
和歌山県高野口の「パイル織り」、福井・石川の「合繊」などのように
産地特性のもの作りをしているのが一般的です。
知名度が高くなり、産地のブランディングが図れますが
需要が減ると、産地全体に大きな打撃を受けやすいという難もあります。

山梨織物産地は出荷規模では「富士吉田」で全国の30位程度、
「都留(つる)」で40位程度という、家族経営を中心とした規模の小さな産地です。
このような小さな産地は“個性”を出すことで生き延びてきたといいます。
甲斐絹の生産が激減した時に、先染め・細番手・高密度・紋織りなどの
特性を生かし「服の裏地」「傘地」などへとシフト。
現在ではそれらに加え「ネクタイ(日本一の生産量)」「ストール」「婦人服地」
「カーテン地」「座布団地」「布団地」「ハンカチ」「掛け軸の表装地」「バッグ地」など
実に多彩な生地を、それぞれの機屋さん織っているという
ユニークな産地となっています。
時代の流れに上手く乗っていける産地なのかもしれません。

八王子の産地と並び、東京から非常に近い産地でありながら
「何を作っている産地?」という印象が薄いため
今回のようなバスツアーを通じ、
多くのクリエーターに知って欲しいというのも大きな目的です。


・・・・山梨では「シケンジョ」の五十嵐さん、上垣さん、高須賀さんが迎えてくれ
メーカーを案内してくれました。岐阜や京都からも参加者が加わり、
約20名くらいのツアーとなりました・・・・


・・・・五十嵐さんが手にしている「ヤマナシ ハタオリ トラベル」のフラッグは、
上垣さんが、データを作り「シケンジョ」にあるジャカード織機で織り上げた
ものだそうです。オリジナルのジャカードがすぐ織り上げられるとはすごい!・・・・


・・・・「(株)槙田商店」では、傘生地が織られているジャカード織機と
傘生地を裁断している工程を見学・・・・


・・・・三角定規のようなスケールで傘生地を裁断します・・・・

今回のバスツアーのスケジュールは、
傘生地・傘などを作っている慶応2年(1866年)創業の「(株)槙田商店」を見学し、
B級グルメとしても人気の富士吉田ならではの“太うどん”、「吉田のうどん」で昼食。
午後からは、染色・整理加工の「(株)富士セイセン」、
すべてをあえてシャトル織機に切り替え、
麻を主にしたファクトリーブランドで注目されている「(有)テンジン」を見学。
次に「シケンジョ」に伺い、「(有)渡小織物」「宮下織物(株)」のプレゼンのあと、
「シケンジョ」の貴重な甲斐絹の資料なども見せていただきました。


・・・・「(有)テンジン」のドビー織機。昔ながらのシャトル織機にこだわり
麻生地を織っています・・・・


・・・・ショールームではテンジンのファクトリーブランドの『ALdin』を
見せていただきました。企画・デザインも含め、家族でやっている
ファミリーブランドでもあります・・・・


・・・・「(有)渡小織物」は、アパレルの「ネバアランド」とコラボして開発した
新タイプネクタイの「リボニッシュタイ」の話しを。
(ネバアランドの3人の女性たちが身に付けているものです!)・・・・


・・・・・忌野 清志郎のステージ衣装のテキスタイルもデザインした、
宮下織物(株)」のテキスタイルデザイナー宮下珠樹さん・・・・

夕方からは産地の方とお食事を介しての懇親会。
夜は富士吉田の浅間神社の「すすき祭り」を見物。
パワースポットとしても注目される富士浅間神社は、
以前より大変興味のある神社でした。
吉田の火祭り」は“日本三奇祭”ともいわれる不思議なお祭りです。
諏訪神社と北口本宮富士浅間神社の両方のお祭りで、
夏の富士山の山じまいのお祭りとして毎年8月26日・27日に行われます。
27日のお祭りは「すすき祭り」と呼ばれています。
「シケンジョ」の気の利いたスケジュールで迫力ある祭り見物ができ大満足。


・・・・お昼は富士吉田名物の「吉田のうどん」を!これは「肉つけうどん」・・・・


・・・・懇談会ではツー参加者や産地の方達の自己紹介。自分の作品を持ち寄っての
自己PRも!私はもちろん『テキスタイル用語辞典』を!・・・・・


・・・・「すすき祭り」。松明の灯りのなか、赤富士の神輿を担ぎ、すすきの穂を持った
氏子を従えて浅間神社の“高天原”を七廻りする姿に、鳥肌が立ちました・・・・

朝は事故渋滞で1時間も遅れて到着し、
かなりの厳しいスケジュールをこなしたツアーも、
帰りはスムーズで、夜9時30分頃に台東デザイナーズビレッジに到着。
あっという間の盛りだくさんの見学ツアーでした。
見学させていただいたメーカーのレポートは
次回にアップしますのでお楽しみに!