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2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.5林キルティング

2012/11/26

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。

大阪・岸和田の「林キルティング」は、キルティングの可能性を広げた
付加価値の高さが特徴です。
代表の林千尋さんは全国を走り回り、
ジャカード、刺繍、ステッチなど、
優れた加工技術を持つ工場を探し当てコラボレーション。
高度なテクニックを駆使した、
クリエイティブなキルティングを作り上げています。


・・・・一見プリーツのようですが、“溶ける糸”を使用して
キルティング技術でつくったもの・・・・


・・・・キルティングした糸を溶かすと、絞りやプリーツのように
立体的な表面感となります。右はサテン、左はサテンにオパール加工を
施したもの。同じキルティングでも生地により表情が違います・・・・


・・・・さらに転写プリントを施したもの・・・・

「林キルティング」は、林さんが一代で築いたもの。
父親は青果業を営んでいましたが、父親とは違う職業を選びました。
しかし、事業家になりたいという林さんの志を父親はバックアップ。
大学を卒業後、キルティングの機械を導入し、
早速操業しましたが、初めの5〜6年は
まさに勉強の時代だったといいます。


・・・・大学卒業後創業し約30年。すべて独学でやってきたという林さん・・・・

林さんは、全国のキルティング工場を尋ね回り技術を学び、
さらに、ジャカード、刺繍、ステッチなどを得意とする工場と
協業することで、キルティングのさらなる可能性を広げました。
日本にはスパンコールやコード刺繍など、
特殊加工に高い技術を持つ工場があります。
しかし、規模が小さいために、残念ながら発信力が弱い。
そういう優れた特殊加工技術や設備をもつ工場と連携していくと
他にはなかなか真似のできない
オリジナリティのあるもの作りが可能になります。
このコーディネート力は、
全国を走り回った林さんならではのノウハウです。


・・・・ベルベットにオーガンジーを重ね、キルティング刺繍。
生地の色や刺繍の仕方により、表面感が違って見えます・・・・


・・・・絞りのようなキルティング・・・・

パリのプルミエールヴィジョンにも出展し、
オリジナリティのある高度なもの作りは
国内外の有名デザイナーからも高い評価を得ています。
林さんは、付加価値を求めるメーカーさんに向けて
小ロット対応を行ったり、
素材・福祉材・加工法からのアドバイスを含めた
商品開発も行っています。
もちろん海外への進出にも力を入れています。


・・・・「林キルティング」のイメージブランドの『マレンコ』・・・・


・・・・一見ジャカードのように見えますが、
オーガンジーを重ね、キルティング刺繍をして、
あと染めしたコート。色合いが立体的です・・・・


・・・・キルティングとニードルパンチの組み合わせ。
以前プラダにもこのテクニックが見られました・・・・


・・・・キルティングのパネル柄。かなり凝った柄ができます・・・・

工場を立ち上げ初めて製品ができた時、まずはともあれと、
「無鉄砲にも、コシノヒロコさんの門を叩いた」そうです。
コシノヒロコさんは、初めて見る林キルティングさんの
生地を気に入ってくださり、それは今日まで続いています。

そういえば、コシノヒロコさんも林さんも同じ岸和田出身。
もちろん林さんも生粋の「だんじり男」!
岸和田の「だんじり魂」でもって、
世界に大きく羽ばたいて行くことを、心より応援しております。

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.4伝統と革新の有松鳴海絞

2012/11/25

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。


・・・・ウールや麻、ポリエステルなどに二次加工をして新しく表現した「有松鳴海絞」・・・・

「有松鳴海絞(ありまつなるみしぼり)」は、
江戸時代より、愛知県名古屋市の有松地域(有松絞り)と、
鳴海地域(鳴海絞り)を中心に生産されている伝統的な絞り染めで、
木綿の絞りの手拭や浴衣地が代表的。
「括る・縫う・巻く」の3つの基本動作で、
手蜘蛛絞り、疋田三浦絞り、雪花絞り、鹿の子絞り、帽子絞りなど
100種類以上の絞りの技法が生み出され、様々な柄や形が作られます。
これが「有松鳴海絞」の最大の特徴となっています。

今回の『T・N JAPAN』には愛知県絞工業組合から
スズサン、(有)絞染色 久野染工場、(株)山上商店の3社が出展。
いずれも、伝統工芸品とは一線を画す、
現代のライフスタイルに根差した「有松鳴海絞」の
新しいクリエーションを展開しているメーカーや工房です。


・・・・左から藤井祥二さん(絞染色 久野染工場)、村瀬裕さん(スズサン)、
山上正晃さん(山上商店)・・・・

愛知県絞工業組合の理事も務める、「スズサン」の村瀬裕さんは、
「有松鳴海絞」の企画・製造・販売を行うかたわら、
絞りの体験教室や講習会など、
絞りの楽しさや可能性を広げる啓蒙活動にも力を注いでいます。

木綿に施す伝統的な「有松鳴海絞」だけではなく、
ウールや麻、ポリエステルに伝統的な括りや縫い取りの絞りを行い、
さらに塩縮加工、シュリンク加工、縮絨、ヒートセットなどの二次加工を施す、
新しい「有松鳴海絞」を開発。
「有松鳴海絞」の技法が、和の分野だけにとらわれることなく
ファッションやインテリア分野など、もっと自由に表現できるものとして
新たな価値を創造し続けています。


・・・・ヒートセットを施し、形態を安定させたベルベットの絞り。
シルクやポリエステルにヒートセットを施すことで、まるで不思議な
生物のような立体的な表面感を出すことに成功しました・・・・

絞り卸製造業の(株)山上商店の山上正晃さんは、
主に製品の企画を行っています。
絞りの加工業者さんに発注し、製品化し、販売していく役割です。
新しいもの作りのマーケットの開拓なども行っています。


・・・・ウール100%に「絞り」+「縮絨」「染色」「抜染」の組み合わせにより
様々な表情があらわれることを示した、サンプルボード・・・・


・・・・ウール100%の加工しない生地・・・・


・・・・「手筋絞り」をして、黒く「染色」してから「抜染」したもの・・・・


・・・・「巻き上げ絞り」をして、藍色に「染色」してから「縮絨」を弱くかけたもの・・・・


・・・・「手筋絞り」をして、グレーに「染色」したもの・・・・


・・・・赤に「染色」してから「縮絨」を強くかけたもの。
膨らんでいる部分は“コイン”を入れて絞った「コイン絞り」・・・・

「スズサン」の村瀬裕さんは海外への進出も積極的で、ドイツで息子さんが
絞りの会社を作り、絞りのランプシェード、クッション、ストール、
ファブリックなどをヨーロッパやアメリカなどで展開しています。


・・・・海外販売も展開している「スズサン」の手絞りのランプシェード・・・・


・・・・非常に大胆でモダンな柄のクッション・・・・

今回の展示会にはいらしていませんでしたが、
(有)絞染色 久野染工場の代表である久野剛資さんは、
絞り作家としても活躍されている方です。
伝統的な和装絞りはもとより、
三宅一生をはじめとする国内外のデザイナーの作品、
舞台衣装、インテリアなど、幅広い分野を手掛けています。
久野さんもやはり、受け継がれてきた絞りの技術を
後世にも伝えていきたいと、名古屋芸術大学から
インターンを受け入れたり、見学者のために工房を開放したり、
体験教室なども開催しています。
今回の展示会にはインターンの藤井祥二さんがいらしていました。
インターンから久野染工場に入社する学生さんも少なくないようで
村井さんも卒業後の進路を期待されていました。


・・・・「板締め絞り」のウールのストール(左)・・・・


・・・・「帽子絞り」をして縮絨したウールのストール(右)・・・・


・・・・リネンに絞りを入れ、アルカリシュリンクを施したもの(左)・・・・

久野さんもまた「有松鳴海絞」を伝統工芸品に終らせるのではなく、
伝統に縛られることなく、垣根を取り払い、
もっと自由に表現していくことを望んでいます。
そのためには科学技術を利用して表現することも必要です。
伝統的な「有松鳴海絞」からしてみると、
“邪道” とも言われるかもしれませんが、
今の生活にマッチし、地域が活性化していくなら
時代とともに素材も表現も変わってもいいはずだと…。


・・・・絞りを入れた墨染め。シュリンク加工やヒートセットを施したもの・・・・


・・・・若いクリエーターとコラボした絞りのレギンス。
板締め絞りのポップな色・柄使いが新鮮です!・・・・

芸大の学生さんや、若いクリエーターがつくる絞りは
既成概念から解き放たれて、
新しい発想で非常に面白いものが仕上がってくるといいます。
久野さんも村瀬さんも、自分たちが受け継いだいいものを
次の時代につないでいくために、
惜しみなく技術や知識を伝えています。
山上さんは、それを形にしてプロデュース。
熱い3人の想いは、確実に若い人たちに伝わっているようです。

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.3日の出紡織(株)

2012/11/12

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。

愛知県一宮市の「日の出紡織(株)」は、
“カシミヤの概念”を広げてくれました。
ブースの前に無造作に掛けられている麻袋の
ドンゴロス(またはホップサック?)の
隣りの素材が“カシミヤ”と知り、ビックリ!
さっそく光﨑社長にお話しを伺いました。
※因みに「ドンゴロス」はコーヒー豆などを入れる麻袋。
「ホップサック」は、ビールのホップを入れる麻袋のことです。


・・・・無造作に掛けられているドンゴロスとカシミヤ。
その下にあるのはヴィンテージ加工を施されたハリスツイード・・・・

ドンゴロスの隣りにあるカシミヤは、
ドンゴロスそっくりに織られたカシミヤ100%。
スペック染めにしてムラ感を出し、ホップサックツイードのように
ザックリと織りあげ、洗いをかけた無骨な仕上げです。
「カシミヤドンゴロス」と呼びたいくらいの粗野感があります。
しかし触ると…まさに、ふんわり柔らかのカシミヤの“きもち良さ!”
この見た目と、触ったときのギャップがたまらなく新鮮です。


・・・・左はジュートの麻袋。右はカシミヤ100%・・・・

通常、カシミヤ100%をこのくらいザックリ織って、洗いをかけると
くたっとコシのない織物になってしまいますが
この織りには特殊な仕掛けがあり、張り感を出しているといいます。
ある素材を交織しているのですが、それが何かは企業ヒミツとか…


・・・・まさに麻袋の表情です!けどカシミヤ100%・・・・


・・・・織りの裏側。これが企業ヒミツの交織!ウレタンかな?何かしら…・・・・

光﨑社長は、今回は「きもちいい」をテーマに
カシミヤやツイードなどで、新しい加工表現に挑戦したといいます。
“高級品”のイメージがつきまとうカシミヤは、
ラフにカジュアルに仕上げて、もっと普段使いに。
かっちりしたツイードは、かなり着込んだような風合いや色合いに。
紅茶染め、錆染めなど、試行錯誤で“経年表現” を試みました。


・・・・左は、ロンドンのハリスツイード協会の商標マークを付けた
ハリスツイードそのままの生地。
右は、その生地をヴィンテージ加工したもの。
まるで3世代受け継がれてきたハリスツイードのジャケットのように、
ハリスツイード特有のごわごわ感がなくなり、
柔らかな風合いと、経年したような色むら感が特徴の生地に
仕上げられています。
ハリスツイード協会の許可済みの仕上げ加工とのこと・・・・


・・・・張り感のある英国羊毛と柔らかなカシミヤを交織したツイード。
とてもソフトで「きもちいい」仕上げです・・・・


・・・・左のヘリンボーンツイードは、微妙なムラ感を出して、風合いもとてもソフト・・・・


・・・・真ん中のカシミヤのホップサックツイードには
微妙にラメが入っています。(拡大したもの)
カシミヤをラスティックなホップサックに織り上げ
さらにキラキラ感をスパイス的に入れている…この正反対の組み合わせが
まさに2013・2014/AWのトレンド!・・・・


・・・・これは、トレーナーに使われる「裏毛編み」のカットソーですが、
表は綿、そして裏パイル部分がふわふわのカシミヤなのです!・・・・


・・・・裏(右のグレーの部分)は起毛パイルのカシミヤ!・・・・

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』のパンフレットには
日の出紡織(株)が下記のコメントを載せています。

ほん・ぽう(奔放)3回の裏
・常識や規範にとらわれないこと。
・自分のおもうままに振る舞うこと(さま)。
・自由でありボーダレスなモノづくり。


・・・・ナチュラルヘアのカシミヤニット。
麻ひもで縛った演出もいい感じ・・・・


・・・・長年着馴染んできたようなピリングやネップ風の
表面感の仕上げも「きもちいい」です・・・・

従来ある素材を、見方を変えて仕上げ加工で
新しい価値観に変えていく。
これも現在もの作りのトレンドとなっている「リノベーション」の
ひとつの表現だと思います。
今回の展示会はまだ研究段階なので、まずはみなさんの
反応を確かめることが目的。
価格面はこれから検討していくようです。
素材の魅力はしっかり訪れた方のハートを鷲掴みです。
実売に向けてぜひ頑張って欲しいものです。

「タンゴ ファブリック マルシェ」Vol.2世界を魅了する<遊絲舎>の藤布

2012/11/11

「ちりめんの里」で知られる、京都・丹後産地の
織物メーカー19社が、東京・代官山で産地の素材展
タンゴ ファブリック マルシェ」を開催しました。

緻密でスキのない高度なテキスタイルが多い展示会の中で
一際目を惹いたのは、節のある粗野な糸で織られたテキスタイル。
それは藤の蔓の皮で織った「藤布(ふじふ/ふじぬの)」でした。
織ったのは「遊絲舎(ゆうししゃ)」。


・・・・「藤績み(ふじうみ)」の実演も行われていました。
「藤績み」とは、藤の表皮を細かく剥いて手で績み(繋ぎ)
長い糸にしていく作業のことです。後ろにあるのが織った「藤布」・・・・

「藤布」は、縄文時代より織られていた“原糸の布”ともいわれる織りです。
藤は日本では広く分布しているため、
手軽な繊維として各地で織られていましたが
綿が栽培されるようになってから急激に衰退。
木綿の栽培が難しい山間部などにわずかに残るのみとなり、
今では丹後が「藤布」を唯一織リ続けている希少な産地となっています。


・・・・「藤布」は藤の蔓の皮(中皮)を剥ぎ、乾燥させたものを用います・・・・


・・・・「藤績み」して、長い糸状にしたもの・・・・


・・・・藤の繊維のラフ感がいっぱいの「藤布」・・・・

「遊絲舎」の前進は、明治中頃創業した
丹後ちりめんの織物メーカーでしたが
現代表である小石原将夫さんが80年代に、
日本から消滅したと思われていた藤布の存在を知り、
帯地や着物地などで現代の織物として蘇えさせました。
多くの賞も受賞し、昨年はパリで開催された『プルミエール・ビジョン』の
世界の匠工房13社を集め話題となったエリア「メゾン・デクセプション」に
招待展示されています。


・・・・父と同じ藤織りの世界に入った小石原充保(こいしはら みつやす)さん・・・・


・・・・藤の表皮を細かく剥いたもの。米ぬかを付けながら「藤績み」をします・・・・


・・・・粗野な藤の皮の「藤績み」は手が荒れるかと思いきや、
「米ぬかを付けてやるので、逆に手はとてもきれいになります」と
きれいな手を見せていただきました・・・・

現在は小石原将夫さんの息子さんの充保さんも
父の後を継ぎ、今回の展示会でも「藤績み」の
実演パフォーマンスを見せるなど、頼もしい活躍をしていました。
「遊絲舎」が織る「藤布」は、藤糸と絹糸を交織した帯地が中心ですが
和紙糸と交織したもの、ショールなど新しい試みも行われています。



・・・・絹糸との交織。生成りの部分が粗野感があらわれている藤糸・・・・

・・・・和紙糸と藤糸を交織した「藤布」・・・



・・・・シンプルでモダンな帯地・・・・

「遊絲舎」は、来年2月に行われる『プルミエール・ビジョン』にも
出展が決まっているようです。
「オンリーワン」の強みを見せ、
今後ますます注目されるメーカーになりそうです。

丹後の伝統技術を駆使した新素材を!「タンゴ ファブリック マルシェ」Vol.1

2012/11/11

「ちりめんの里」で知られる、京都・丹後産地の
織物メーカー19社が、東京・代官山で産地の素材展
「タンゴ ファブリック マルシェ」を開催しました。
(主催:丹後織物工業組合/丹後ファッションウィーク開催委員会)


・・・・・「タンゴ ファブリック マルシェ」のパンフレット・・・・・

 丹後地方は、日本最大の絹織物産地で、
その歴史は古く、約1200年前の奈良時代からともいわれています。
現在も日本の着物の白生地の約60パーセントを生産しており、
京都・西陣の生産基地として無くてはならない存在です。
近年は、新しい販路を求め、
伝統的な技術を駆使した服地や服飾小物を提案。
また、化合繊やバイオベース繊維と組み合わせたり
様々な後加工を施した複合的な素材開発にも力を入れています。


・・・・3階では服飾雑貨や小物を展示。高品質&リーズナブルな商品として
スカーフを提案するところも増えています・・・・


・・・・ちりめんの雑貨を提案した「(株)一色テキスタイル」・・・・

残念ながら展示会には最終日の閉館ぎりぎりに
飛び込んだため、ゆっくり取材ができず、
また、クローズアップした素材の撮影ができなかったので
素材の素晴らしさを写真でお伝えできないのが悔やまれます。

丹後産地の素材は、さすが着物素材産地とあり
テクニカルで緻密な織りが多く見られました。
他の展示会では見たことのないような織りもあり
改めてその技術の素晴らしさは目を見張るものがあります。


・・・・2階は「洋装フロア」。左端にスカーフのようにかかっているピンクの生地は
ゴースのような透け感のある、シルク100%のチェックの先染め織物。
とってもステキでした。セリシンを抜いていないものは張りがあり、
抜いたものはソフトな仕上げです:大善(株)
(クローズアップしてお見せできないのが残念です…)・・・・


・・・・環境に配慮したエコなもの作りに力を入れている大善(株)は
高耐熱性ポリ乳酸繊維を使用したテキスタイルを提案・・・・


・・・・イエロー、オレンジーピンクなど、今シーズンのトレンドカラーを
打ち出した展開。左:(株)大江/右:吉村機業(株)・・・・


・・・・産学公コラボ作品。23年度は上田安子服飾専門学校など
4校とコラボして、丹後産地の活性化を図る事業もしています・・・・


・・・・お土産に頂いたのは、丹後織物工業組合が販売している
入浴液『まゆのお風呂』。セリシンの効果でしっとり、つるつるです!・・・・

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.2宮下織物(株)

2012/11/10

ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展
テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』が開催されました。
2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」。
糸にこだわった個性的なメーカーが揃いました。

「濡れ巻き整経」でシルクサテンのドレス地を織り上げる唯一の織物企業

まず一番に伺ったのは、山梨県富士吉田の「宮下織物(株)」です。
宮下織物(株)は、細番手・高密度・ジャカードを中心とした
先染織物が特徴で、
シルクブロケード、サテンやタフタのウエディングドレス生地など、
フォーマル分野を得意としています。


・・・・ホログラムジャカードや、ゴージャスなカットジャカード・・・・

富士吉田には、今年の8月に産地見学のバスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で訪れ、
宮下織物(株)のテキスタイルデザイナー、宮下珠樹さんより
「濡れ巻き整経」でつくったシルクサテンのお話しを伺っていました。
また、「シケンジョテキ」のブログ
「濡れ巻き整経」のプラチナのような輝きの
「経玉(へだま)」という糸を巻いた塊や、
サテンの生地に魅せられていたので
今回の展示会はとても楽しみにしていました。


・・・・「濡れ巻き整経」の「機巻き」作業を行う、武藤うめ子さんの写真・・・・

「濡れ巻き整経」とは、通常は機械で行う整経を、ほぼ手作業で行う
山梨県郡内織物産地独特のシルクのたて糸整経技術です。
生糸を水で湿らせて柔らかくすることで
地合いが引き締まり、コシが強く丈夫になり、
非常に美しい光沢のある緻密な織りを生み出します。
しかし手作業で行う「濡れ巻き整経」は
気の遠くなるような時間と手間がかかるため、衰退の一途をたどり
後継者はほとんどおらず、職人さんは高齢化。
作れる方はほんのわずかです。

「濡れ巻き整経」の様子は、「シケンジョテキ」のブログをご覧ください。

「経枠」作業
http://shikenjyo.blogspot.jp/2012/03/blog-post_12.html

「組み込み」作業
http://shikenjyo.blogspot.jp/2012/03/blog-post_13.html

「機巻き」作業
http://shikenjyo.blogspot.jp/2012/03/blog-post_14.html


・・・・「新小石丸」を用いた「濡れ巻き整経」のシルクサテン。
生成りの上品な色合いです・・・

残念ながら、今回は「経玉(へだま)」は見ることはできませんでしたが
(かなり大きなものらしいです)
皇后御親蚕(美智子皇后が育てられている蚕)と同じ品種の
「新小石丸」を用いた「濡れ巻き整経」の
シルクサテンを見ることができました。
「経玉(へだま)」やサテンの素晴らしい輝きはぜひ
「シケンジョテキ」のブログでご覧ください。


・・・・リズムのある波形が衝撃を和らげ
優しく小物を包み込む小物用トレー『cune(クーナ)』・・・・

宮下織物(株)とプロダクトデザイナー ムラタ・チアキさんが手掛ける
『メタフィス』と協同開発した小物用トレー『cune(クーナ)』も
「濡れ巻き」のような輝きをもつポリエステルサテン生地です。
手でぎゅっとつかんだようなシワ感を求めたムラタ・チアキさんの難題に、
テキスタイルデザイナーの宮下珠樹さんが見事に応えました。
クッション性のある波形状は、よこ糸にポリウレタン糸を使い、
糸の性質で布の伸縮性と自然な凹凸感をあらわしています。
まるで布が呼吸しているようなイメージを持つことから
「レスピリズム・ファブリック」と名付けられています。
洋服やクッション、マットレスなどでも展開されます。
洋服になったデザインを見てみたいものです。

2013/2014A/Wは、“目の錯覚で浮き出る柄”を提案

2013/2014A/Wは、ジャカードが浮上しているシーズンとなっていますが
本来ジャカードを得意とする宮下織物(株)は
さらに“立体感”を特徴にしたテクニカルなジャカードを提案。
糸を切りっ放しにして柄を浮き立たせたカットジャカードや、
ホログラム糸で柄が浮き上がるような錯覚をあたえたものなど
輝きのある糸をポイントにした
大柄でゴージャス感のあるものが多く見られます。


・・・・ホログラム糸を使ったジャカード・・・・


・・・・ラメのアニマルジャカード・・・・


・・・・ゴージャスなカットジャカード・・・・


・・・・ラメ糸使いのカットジャカード・・・・


・・・・目の錯覚で砂絵のようなラメ糸部分のバラが浮き出て見えます・・・・

東京造形大学と富士吉田産地の蜜月(?)関係!

山梨の富士吉田織物産地は、4年程前から東京造形大学とコラボした
「Fujiyama Textile Project」を行っています。
若いクリエーターの感性を取り入れ、新規市場の開拓を目指すもので
約半年かけて新しいテキスタイルを開発していきます。
かなり完成度の高いものが仕上がり、
今回の宮下織物(株)のブースにも、一見クロコダイルやリザードのような
立体的なモダン柄のジャカードが展示されていました。


・・・・東京造形大学の学生とコラボしたジャカードでつくったバッグ・・・・

じつは、宮下織物(株)の若手デザイナー、渡辺絵美さんは
東京造形大学の卒業生。
富士吉田産地とのコラボがきっかけで入社することになりました。
同じようにコラボがきっかけで富士吉田で働いている同期には
「シケンジョ」の臨時職員として活躍している
高須賀 活良さんがいらっしゃいます。
とくにテキスタイル学科は、学生時代から授業で織機と親しんでいるので
かなりのレベルまでのことができ、入社して“即戦力”になるそうです。
福岡県出身の渡辺絵美さんは、
自分の手で自分の感性を生かしたテキスタイルが
つくれる喜びを語ってくれました。


・・・・デザイナーの渡辺絵美さん・・・・


・・・・渡辺絵美さんが初めてつくった「ナバホ」(右)と
「タテガミテキスタイル モサモサ」(左)・・・・


・・・・子供服メーカーに依頼されてデザインした生地・・・・

富士吉田産地は、学生コラボがそのまま産地の
若手後継者育成へと繋がり、企業と学校の関係が
上手くかみ合っているようです。
これは「東京に近い産地」という地の利はもちろんですが、
シケンジョ」が中心になり、上手に産地をまとめながら
今の時代の空気感にあった発信をしているからではないでしょうか。
特に他の産地と違うのは「デザインの発信力」が
できていることだと思います。


・・・・ジャカードをテキスタイルの魅力溢れるカルトナージュにして展示・・・・

一般的に産地の中心となって技術支援や経営支援を行っている機関は
「技術系」の職員が多く、「デザイン」「トレンド」などの
ソフト面への気配りが少ないような気がします。
「シケンジョ」はとても“見せかた”や“発信のしかた”が上手です。
これは…それに関わっている「人の力量」としかいえません。
担当者自身から、この仕事が「好きだから」「楽しいから」という気持ちや
「産地のいいものを伝えたい」という熱意がとても伝わってきます。
そういうところに、同じような気持ちを持つ人たちが
集まってくるのだと、思わずにいられませんでした。

2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.1

2012/11/08

『テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』は
ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展です。
年2回の開催で今回で第28回目を迎えます。
みやしん(株)の宮本英治氏などが中心となり
付加価値の高いもの作りをしている
全国のテキスタイルメーカーに呼びかけ
国や自治体の補助金に依存しない合同展示会を続けています。
約20〜30社が展示会テーマに沿って自信作を披露。
2013・2014A/Wは「職の革新〜糸にこだわる〜」をテーマに
オリジナリティのあるクォリティの高いもの作りを展開していました。


・・・・2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」
17のブースが出展しました・・・・

残念なことに先日、廃業ニュースで業界を震撼させた
みやしん(株)は、展示会には参加していませんでしたが、
宮本英治氏が役員として会場にいらしていたので
お話しを伺うことができました。
今回展示会の取材で感じたのは、
テキスタイルの素晴らしさはもちろんですが
それをつくられている人の魅力が伝わってきたことです。
展示会によっては“盗まれる”ことに警戒心をもたれる
メーカーさんもありますが、
『T・N JAPAN東京展』の取材で私が接したメーカーさんは
とても穏やかで、しかし自分たちの力作を熱く語ってくださいます。


・・・・・「濡れ巻き整経」の様子(宮下織物)。
詳しくは「シケンジョテキ」のブログをご覧ください・・・・


・・・・ドンゴロスのように織り上げたカシミア100%(日の出紡織)・・・・


・・・・本来は綿素材で行われる伝統の「有松鳴海絞(ありまつなるみしぼり)を
ウール素材に置き換えました。様々な絞りの技法で絞り、
さらに「縮絨」「染色」「抜染」という後加工の組み合わせで
さらに表情を変えてみせています(有松鳴海絞り/愛知県絞工業組合)・・・・

ここに集まっている中小のテキスタイルメーカーさんは、
大手メーカーのような高機能素材を開発したり、
海外メーカーと価格競争を挑むようなことはしません。
複雑な多重織り、貴重な「濡れ巻き整経」によるプラチナのようなサテン、
カシミアの高級素材をドンゴロスのように仕上げる…など
職人の技と、研ぎすました感性、
そしてもの作りへの熱い思いと心意気で
独自のテキスタイルを作り上げ、その価値を伝えようとしています。
これも宮本英治氏のもとに集まったメーカーさんが持つ
共通のDNAなのかもしれません。


・・・・みやしん(株)の宮本英治氏・・・・

今回のテーマの『職の革新』が、“織”ではなく“職” なのは、
「職人」ということなのでしょうか…
取材したメーカーさんは次回から順にお伝えします。

「織りの国」ブータン旅行記

2012/11/04

Textile TreeのパートナーでもあるOffice ID Inc.のスタッフの
出原芳絵さんが、7月に旅行に行った
ブータンの織物の写真を送ってくださいました。
あまりにもステキだったので、「ブータン旅行記」を書いていただくことに!
出原さんはグラフィックデザイナーですが、写真も上手い!
織物の専門家ではないので、織物に関しては
あまり詳しくは書かれていませんが、
ブータンの空気感が伝わってくる、ステキな旅行記となりました。
出原さんのプロフィールはOffice ID Inc.のHPをご覧ください。

<出原さんの旅行記>

「世界最後の秘境」とも言われたブータン王国。
昨年国王夫妻が来日され、話題になりましたよね。
「国民の9割が幸せと解答する」という報道には、驚きました。


・・・・ブータン国王夫妻・・・・

7月下旬、バンコクで飛行機を乗り継ぎ、憧れのブータンへ出掛けました。
この時期は雨期なので観光客も少なめです。
毎日雨が降りますが、日本の梅雨のようにダラダラと降り続けることは稀で
降ったと思ったら突然晴れて、虹が現れます。
標高が高いせいか、虹がとても低い位置に見えました。
低く重なり山を覆う雲は龍が出てきそうな雰囲気を醸し出しています。


・・・・低い位置に虹がかかっています・・・・


・・・・龍が出てきそうな、山をおおう雲・・・・

 空港から首都のティンプーまでは車で1時間ほど。
さっそく市場をのぞきます。
野菜売り場を見てまず目に飛び込んでくるのは山のようなトウガラシ。
ブータン料理は「世界一辛い料理」と言われています。
トウガラシはスパイスではなく野菜扱い。
地元の料理には具材としてたっぷりと使われます。
屋台で売っていたのはトウガラシの天ぷら(もちろん丸ごと)です。
でも大丈夫。旅行者が行くレストランやホテルは
ビュッフェスタイルで辛くないメニューがちゃんと用意してあります。
野菜は変な農薬などを使わずに栽培されているので
日本で買うよりも味が濃く、美味しく感じます。


・・・・唐辛子はスパイスではなく“野菜”扱い!・・・・


・・・・唐辛子「まるごと天ぷら」・・・・

ティンプーに着いて最初に購入したもの。
それは女性の民族衣装の「キラ」です。
女性は一枚の大きな布をスカートのように腰に巻き、
上にブラウスを合わせます。

男性の民族衣装は「ゴ」。
日本の着物のような作りでハイソックスを合わせるのが一般的。
休日以外は民族衣装を着て仕事や学校に出掛けるブータン人。
せっかくなので滞在中は民族衣装で過ごそうと決めていました。


・・・・店内には鮮やかな生地がたくさんあります・・・・

機械織りの安いものもありますが、手織り専門店もあります。
こちらは豪華なお祭り用の布も多く扱っていました。
商品は一般の女性が家で織ったものを買い取っているようです。
「あのおばあちゃんは織物名人」とか
「仕立てならあそこのお母さんにお願いしよう」といったかんじで
自分たちで作ることも珍しくないようです。

手織り工房では若い女性たちが真剣に布を織っていました。
細やかな柄を出すために色鮮やかなヨコ糸を丁寧に渡していきます。
図案などを見ている様子はなく、全て頭の中に入っているようです。
ブータン人の美しい色彩感覚を感じられます。


・・・・織られている刺繍のような織物は「片面縫取織り」だとおもいます・・・・

さんざん迷った結果、着心地を考慮してコットンの「キラ」を購入しました。
風合い豊かで肌に優しい感触です。
日本人と同じような顔をしているブータンの人々。
民族衣装を着れば現地の人と間違われることもしばしば。


・・・・横断歩道の標識もゴを着た男性が描かれていました・・・・

ブータンはチベット仏教を信仰する国です。
滞在期間中に「仏陀が悟りを開いた日」がありました。
現地の人々はいつもより豪華な民族衣装でお洒落をして
お寺に参拝に出掛けます。

私が訪れたのはチミ・ラカンというお寺。
狭い田んぼの畦道を譲り合いながら進みます。
家族や学校の友達と連れ立って参拝した後は広場でピクニック。
広場には牛も犬もいて、気持ちのよい風が吹き抜けます。
日本人の中高年にブータン旅行が人気なのは、
昔の日本の里山風景に似ているからだそうです。

 お寺で出会った家族が
「日本で大きな地震があった時、私たちはずっと祈っていました」
と言ってくださいました。
大きな天災など無くても、彼らはいつも祈っています。
チベット仏教では自分の幸せではなく「皆が幸せであるように」と
祈りを捧げるのだそうです。
遠い国で誰かが祈っていてくれると思うと、少し心強く思えます。

ブータンは経済的には貧困国に属しますが
悲しい顔をしている人には会いませんでした。
街を歩く人はみんな笑顔で挨拶を交わし、
助け合って暮らしています。
初めて訪れたのに懐かしい雰囲気があるのは、
顔が日本人と近いというだけではなく
素朴でおおらかな国民性と、治安の良さが
旅行者に安心感を与えるからかもしれません。

まだ気軽にいつでも行ける国ではありませんが、
「ぜったいにもう一度行こう!」と思わせる土地でした。
これからの乾期には空が澄み切って
ヒマラヤが美しく見えるそうです。
今度は大きなお祭りの時期に、仮面舞踏を観に!