Archive for 12, 2012

近江上布の「林与」の挑戦!

2012/12/27

HARVEST ♯002』に出展していた、近江の麻の老舗「(株)林与」を紹介します。
今回の展示会で目を惹いたのが、初お披露目となる
アーカイブの近江上布のプリント柄です。
「林与」は、明治30年、近江上布の織元として創業しました。
「上布」とは上質なラミーで織った高級な薄手麻織物で
江戸幕府への「上納布、献上布」とされたものです。
近江上布は、非常に高度な絣柄が特徴ですが、
現在はほとんど織られてはいません。

「林与」の近江上布の記事はこちら↓
http://www.textile-tree.com/tex/?p=302


・・・・ハンガーにはたくさんのアーカイブの近江上布の一部が掛けられています。
手前がプリントにしてワンピースにしたもの・・・・


・・・・「林与」のアーカイブの近江上布・・・・


・・・・現在「林与」は麻の先染めを得意としています・・・・

実は数年前に、「林与」の倉庫から
近江上布の柄見本が1万枚近く発見されました。
林社長は、今見ても色褪せることのない素晴らしいデザインの柄を
現代に復活できないものかと考えていました。
私も以前実物を見せていただきましたが、
植物柄を中心にものすごいバリエーションがあり、
洋服にしてもステキな、モダンな柄が多くあります。
昨年より「近江上布柄プロジェクト」として着々と計画が進められ
色々試行錯誤したようですが、
10月の『インターテキスタイル上海』で初披露し、
日本では今回の『HARVEST』の展示会が初めてです。


・・・・お披露目された近江上布柄のプリント・・・・


・・・・麻と綿で作りましたが、麻の方が近江上布のニュアンスに近いようです・・・・

柄付けは、顔料と染料で行いましたが、
染料の方が自然な感じたったので、こちらを採用。
染めには「しごき染め」を用いたといいます。
「しごき染め」は、江戸小紋などで行われる地染めで、
型紙を使い、柄部分に糊置きして防染したあとに、
柔らかな色調の色糊(いろのり)を生地全体に塗り付け、
それをヘラでしごいて染める染法です。
地色が真っ白ではなく、
生成りや柔らかなピンク味に染め上げることができるので
ナチュラル感のあるいい雰囲気の柄になります。
今回は、しごき染色機を持っている染色工場と取り組んだそうです。


・・・・地色に微妙な色があるのが「しごき染め」の特徴です。
「林与」のロゴマークもネームも入っていて“ブランド”を感じます!・・・・


・・・・麻なのに、クシャクシャにしても、シワをあまり感じません。
「しごき染め」の特徴なのかもしれないと語っていました・・・・

染める布も麻と綿など、何種類が実験しました。
今回の展示会にも、麻と綿の両方が展示されていましたが、
やはり、麻の方が、本来の近江上布に近いような雰囲気を持っています。
そして、今回「しごき染め」を行った麻生地で、林社長が気がついたのは
「しわになりにくい」ということです。
『インターテキスタイル上海』に持っていったときも、
トランクに無造作に入れていたのに、
「ほとんどしわが目立たなかった」というのです。
これも「しごき」を行っている効果なのでしょうかと、話しておられました。


・・・・テキスタイルアワードで、総合の3位を受賞したトロフィと賞状・・・・


・・・・中国語の賞状・・・・

今回の展示会でもうひとつのお披露目は
10月に上海で開催された中国紡織工業連合会主催の
テキスタイルアワードで、総合の3位を受賞したトロフィーと賞状です。

といっても狭い『HARVEST』の会場では、飾るところも無いので
まだ、お客様が少ない時間にそっと撮影させていただきました。
受賞の対象になったのは、リネン100%のブラックデニムです。
中国では今、「黒」がトレンドになっており、
これもいいタイミングだったようです。

受賞の記事はこちらをご覧ください。
http://www.textile-tree.com/blog/?p=4600


・・・・受賞したリネンのブラックデニム(左)・・・・


・・・・総合3位のリネンのブラックデニム製品が
掲載されているパンフレット(右下)・・・・


・・・・日本企業では、もう1社小松精練のリアルなアニマルプリントが受賞。
こちらは、部門賞のクリエイティブデザイン賞・・・・


・・・・ちなみに、1位となったのが中国のメーカーのこちらの素材・・・・

リネンデニムは、インディゴは糸の中心が染まらない
中白(芯白)にしていますが、
ブラックデニムは反応染料で色落ちしないようにしています。
このリネンデニムは気仙沼の「㈲オイカワデニム」とコラボして
新製品を企画しているそうです、
『ジャパンクリエーション』で偶然「㈲オイカワデニム」を知り、
ラミーのミシン糸を持っていることなど
目立たないブースなのにやっていることがスゴイと意気投合。
これもどんな製品ができるのか楽しみです。


・・・・村田染工とコラボした鮮やかな草木染めのリネンストール・・・・

リネンストールでは、京都の「(株)村田染工」とコラボして
カラフルな草木染めのストールを提案。
「これが本当に草木染め?」と、驚くような鮮やかな色合いです。
以前より展示会に伺うと、鮮やかな草木染めの製品を見ることがあり、
聞いてみたらほとんどが「(株)村田染工」のものでした。
偶然にもこの日、「(株)村田染工」の村田社長とお会いすることができ
色々お話しを聞くことができました。
それはまた次回お伝えします。


・・・・藍染めのストールは、林社長自らインド藍の原液で
染めたもの。爪まで藍で染まって大変だったと笑っていました・・・・

もうひとつ「林与」の製品で気になっていたのは「キッチンリネン」です。
キッチンリネンは特別珍しいものではありませんが、
「林与」のキッチンリネンほど高密度なものには
なかなかお目にかかったことがありません。
林社長に伺ったら、このくらいの高密度なものを織るのは、
途中で糸が切れるし、本当に大変だと。
しかし、使えば使う程柔らかくなり、
「一生もの」のキッチンリネンになります。
ドイツに『マングルクロス』というリネンがあります。
ローラー式アイロンに使われるとても高密度なリネンで、
摩擦や熱から衣類を保護したり、脱水効果があるものですが、
このリネンと恐らく似ているのではないかとも話されていました。


・・・・「林与」ならではの高密度のキッチンリネン・・・

「林与」のもの作りは、本当にひとつひとつが丁寧で手を抜きません。
効率や合理性だけでは計れない、もの作りへのプライドだと思います。
そういう良さがじわじわと伝わり、支持者を確実に増やしています。
また、国内外を問わず本物の近江上布を初めて展示会で見た方の反応はとても良く、
「プリントだけではなく、本格的な再現に取り組んでいく必要を感じた」と
林社長のブログ『リネン日記』でも語っていました。
林社長でしたら、きっと新しいかたちを見いだしてやってくれると思います。

 

天然繊維テキスタイルの合同展『HARVEST ♯002』

2012/12/24


2回目の開催となる『ハーベスト』は
天然繊維のテキスタイルメーカー6社の合同展示会です。
オーガニックコットンの(株)パノコトレーディングが中心となり、
リネン、シルク、ウール、パイル、先染めコットンの各分野から
選りすぐったエキスパートメーカーで構成。
6社という小規模ながら、非常に質の高い展示会となっています。


・・・・小規模ながらクォリティの高いメーカーが集まった会場・・・・


・・・・展示会の受付をしているのはパノコトレーディングの長尾さん(右)。
古いミシンを受付台にして談笑する、アットホームな雰囲気・・・・

『ハーベスト』は、取り扱う商品がバッティングしないことや、
小規模展示会のメリットを生かし、それぞれのお客様を紹介し合うなど
互いのメーカーが連携し合うアットホームさも特徴。
糸や原料の在庫、生地在庫を抱えているメーカーも多く、
リスクを持ちながらも、独自のもの作りに力を入れている
“気概”を持ったメーカーが目立ちます。
今後は、少しずつ参加メーカーを増やしていきたいと
展示会のまとめ役となっている(株)パノコトレーディングの
長尾さんがお話しくださいました。
参加6社を簡単にご紹介します。

【リネン】(株)林与
明治30年創業の近江の麻の老舗「(株)林与」は、
Textile Treeでも何度かご紹介している麻織物メーカーです。
10月に上海で開催された中国紡織工業連合会主催の
テキスタイルアワードで、総合の3位を受賞。
近江の小さなメーカーの製品が世界で評価されるなど、
こつこつと、独自の哲学で質の高いもの作りをしてきた成果が
着実に実りつつあります。

・・・・林与のアーカイブの「近江上布」と、それををプリントにして
仕上げたワンピース・・・・


・・・・テキスタイルアワードで、総合の3位を受賞したトロフィと賞状・・・・


・・・・受賞したリネンのブラックデニム(左)・・・・・

受賞の記事↓
http://www.textile-tree.com/blog/?p=4600


・・・・京都の(株)村田染工とコラボしたビビッドな草木染めのストール・・・・

今回の『ハーベスト』には、現在は幻の織物となっている
「近江上布」の柄をプリントとして復刻させたものや、
京都の(株)村田染工とコラボしてビビッドに染め上げた
草木染めのリネンストールを展示。
そのこだわりがまたスゴイのです。

※それはこちらで紹介しています。
http://www.textile-tree.com/tex/?p=4042


【シルク】(株)長谷川商店

愛知県一の宮の「(株)長谷川商店」は
シルク原料から、糸、丸編み、織物などを扱う
シルク関連の総合商社です。


・・・・シルクを中心に、ウール、カシミア、アルパカ混や、麻や綿なども・・・・


・・・・意匠糸のバリエーションも多い・・・・


・・・・カラーバリエーションが100色以上、カスリで20色くらいの在庫があります・・・・


・・・・ラルフ・ローレンが定番にしている素材・・・・

アジアで初めて、イタリアのニット糸の展示会「ピッティフィラッティ」に
出展したメーカーでもあり、
ニットを主流に、トレンド性の高い糸なども提案し
海外のスーパーブランドとの取引も多数。
シルクの原料から抱え、紡毛シルク糸などは
100色をストックしているものあります。
他ではなかなか見られない意匠糸などを得意としています。

【ウール】長尾商事(株)
ウールの分野では、羊毛繊維専門商社の名古屋の
長尾商事(株)」が参加。
羊毛原料をはじめ、アルパカ、カシミア、キャメル、アンゴラなどの
原毛原料、原糸、織物などの輸入・輸出を行っています。
特にアルパカ、ビキューナなどの南米の原毛を得意とし、
これらを輸入するライセンスを持っている、世界でも数少ない会社です。


・・・・尾州産地を背景にした羊毛繊維専門商社・・・・


・・・・二重紡績で、「ガラ紡」のように糸のボディの部分に
違う色のわたを置いていき、カラーミックスの甘撚りのスラブ糸にしたもの・・・・


・・・・軽く弾力性のあるナチュラルヘアをもつ高山羊のペルーウール・・・・

注目したのはペルーの高山に生息する羊で、
天然色のナチュラルヘアで展開しているペルーウール。
ノンミュールジング(羊に処置を行っていない)というエコ的観点や、
膨らみがあって軽く、希少価値があり、しかも価格もリーズナブルということで、
人気も高まっています。
また、「ガラ紡」のような紡績のできる三河の紡績会社とコラボして、
手紡ぎのような、独特の節のある甘撚りの軽い糸を開発。
数少ない職人さんの技術ならではの、味のある糸となっています。

【先染めコットン】(株)カゲヤマ
日本最大の先染め織物産地の兵庫県西脇市に本社を置く
(株)カゲヤマ」は、先染めのシャツ地を中心にした企画・製造・販売会社。
東京、上海、韓国、イタリアにも支社を持ち、
トレンド性やオリジナリティのあるカジュアルシャツ地を得意としています。


・・・・ヴィンテージ加工を施したシャツ地を得意とします・・・・


・・・・抜染で色を抜いた「シェイキーマジック加工」。裏と表の表情がこんなに違います・・・・


・・・・ポリエステル糸と綿糸の複合繊維の織物を、綿糸だけを染めた
「片サイド染め」。ポリエステル糸は染まらないので、色褪せたような
白っぽい感じに仕上がります・・・・

抜染の手法で色を抜いた人気商品の「シェイキーマジック加工」、
性質の違う2種類の糸の片方だけを染めた「片サイド染め」など、
新商品開発にも積極的。
色褪せた経年加工を施したシャツ地や、
先染めにドビーやジャカード、刺繍などを入れたレトロテイストなど
魅力あるヴィンテージ素材を提案しています。
また、通常約400~500柄、約2,000点以上ストックしており、
小ロット・短納期ができるのも特徴です。

【パイル素材】青野パイル(株)
パイル織物(編物)産地である、和歌山県高野口からは、
青野パイル(株)」が参加。


・・・・ハイテクパイルも得意とする、パイルの産地、和歌山県高野口のメーカー・・・・


・・・・人気のドットもパイルで立体的に!・・・・


・・・・コンピューターベロアで、立体的なキャラクター柄を出したもの・・・・


・・・・アメリカ海軍のデッキジャケット。襟やインナーには
アルパカウールのボアを使用した本格派仕上げ・・・・


・・・・無印良品のコットンブランケットに採用されたシール織り素材。
高野口産地ならではの上質なパイルです。以前採用されたアーカイブから再登板!・・・・

青野パイル(株)は、ベロア、フェイクファー、シールなどの「アパレル用パイル」、
ブランケット、シーツなどの「寝装用パイル」、
椅子張り、カーペットなどの「インテリア用パイル」はもとより、
電磁波シール材、レンズの研磨材など、IT関連や建築関連の
工業関連素材分野にも進出。
ハイテクの新分野開拓に力を入れるなど、
パイルの領域も広がり、かなり面白くなっています。

【オーガニックコットン】(株)パノコトレーディング
『ハーベスト』の発起人・主催となっている、
オーガニックコットンの「(株)パノコトレーディング」。
オーガニックコットンの原糸の輸入・販売をはじめ
生地の企画・製造・販売を行っている会社で、
アパレル分野に進出する準備も着々進んでいるようです。


・・・・高野口産地とコラボしたオーガニックコットンのパイル・・・・


・・・・・きれいな草木染めのオーガニックコットン・・・・

今回は高野口産地とコラボしたパイル織物や、
草木染めのオーガニックコットンなど、今シーズンの主力商品を展示。
「(株)パノコトレーディング」が、
なぜオーガニックコットン100%の提供が可能か、
無農薬のオーガニックコットン生産を可能にする
「オーガニック農法」などの説明を
オーガニックコットン事業部の浅田さんから伺いました。

パノコトレーディングの取材↓
http://www.textile-tree.com/tex/?p=2703