2013・2014A/W 『T・N JAPAN東京展』Vol.1

投稿日:2012/ 11/ 08  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

『テキスタイル ネットワーク ジャパン(T・N JAPAN)』は
ものづくりに職人魂を注ぐ、全国のテキスタイルメーカーの合同展です。
年2回の開催で今回で第28回目を迎えます。
みやしん(株)の宮本英治氏などが中心となり
付加価値の高いもの作りをしている
全国のテキスタイルメーカーに呼びかけ
国や自治体の補助金に依存しない合同展示会を続けています。
約20〜30社が展示会テーマに沿って自信作を披露。
2013・2014A/Wは「職の革新〜糸にこだわる〜」をテーマに
オリジナリティのあるクォリティの高いもの作りを展開していました。


・・・・2013・2014A/Wのテーマは「職の革新〜糸にこだわる〜」
17のブースが出展しました・・・・

残念なことに先日、廃業ニュースで業界を震撼させた
みやしん(株)は、展示会には参加していませんでしたが、
宮本英治氏が役員として会場にいらしていたので
お話しを伺うことができました。
今回展示会の取材で感じたのは、
テキスタイルの素晴らしさはもちろんですが
それをつくられている人の魅力が伝わってきたことです。
展示会によっては“盗まれる”ことに警戒心をもたれる
メーカーさんもありますが、
『T・N JAPAN東京展』の取材で私が接したメーカーさんは
とても穏やかで、しかし自分たちの力作を熱く語ってくださいます。


・・・・・「濡れ巻き整経」の様子(宮下織物)。
詳しくは「シケンジョテキ」のブログをご覧ください・・・・


・・・・ドンゴロスのように織り上げたカシミア100%(日の出紡織)・・・・


・・・・本来は綿素材で行われる伝統の「有松鳴海絞(ありまつなるみしぼり)を
ウール素材に置き換えました。様々な絞りの技法で絞り、
さらに「縮絨」「染色」「抜染」という後加工の組み合わせで
さらに表情を変えてみせています(有松鳴海絞り/愛知県絞工業組合)・・・・

ここに集まっている中小のテキスタイルメーカーさんは、
大手メーカーのような高機能素材を開発したり、
海外メーカーと価格競争を挑むようなことはしません。
複雑な多重織り、貴重な「濡れ巻き整経」によるプラチナのようなサテン、
カシミアの高級素材をドンゴロスのように仕上げる…など
職人の技と、研ぎすました感性、
そしてもの作りへの熱い思いと心意気で
独自のテキスタイルを作り上げ、その価値を伝えようとしています。
これも宮本英治氏のもとに集まったメーカーさんが持つ
共通のDNAなのかもしれません。


・・・・みやしん(株)の宮本英治氏・・・・

今回のテーマの『職の革新』が、“織”ではなく“職” なのは、
「職人」ということなのでしょうか…
取材したメーカーさんは次回から順にお伝えします。

「織りの国」ブータン旅行記

投稿日:2012/ 11/ 04  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

Textile TreeのパートナーでもあるOffice ID Inc.のスタッフの
出原芳絵さんが、7月に旅行に行った
ブータンの織物の写真を送ってくださいました。
あまりにもステキだったので、「ブータン旅行記」を書いていただくことに!
出原さんはグラフィックデザイナーですが、写真も上手い!
織物の専門家ではないので、織物に関しては
あまり詳しくは書かれていませんが、
ブータンの空気感が伝わってくる、ステキな旅行記となりました。
出原さんのプロフィールはOffice ID Inc.のHPをご覧ください。

<出原さんの旅行記>

「世界最後の秘境」とも言われたブータン王国。
昨年国王夫妻が来日され、話題になりましたよね。
「国民の9割が幸せと解答する」という報道には、驚きました。


・・・・ブータン国王夫妻・・・・

7月下旬、バンコクで飛行機を乗り継ぎ、憧れのブータンへ出掛けました。
この時期は雨期なので観光客も少なめです。
毎日雨が降りますが、日本の梅雨のようにダラダラと降り続けることは稀で
降ったと思ったら突然晴れて、虹が現れます。
標高が高いせいか、虹がとても低い位置に見えました。
低く重なり山を覆う雲は龍が出てきそうな雰囲気を醸し出しています。


・・・・低い位置に虹がかかっています・・・・


・・・・龍が出てきそうな、山をおおう雲・・・・

 空港から首都のティンプーまでは車で1時間ほど。
さっそく市場をのぞきます。
野菜売り場を見てまず目に飛び込んでくるのは山のようなトウガラシ。
ブータン料理は「世界一辛い料理」と言われています。
トウガラシはスパイスではなく野菜扱い。
地元の料理には具材としてたっぷりと使われます。
屋台で売っていたのはトウガラシの天ぷら(もちろん丸ごと)です。
でも大丈夫。旅行者が行くレストランやホテルは
ビュッフェスタイルで辛くないメニューがちゃんと用意してあります。
野菜は変な農薬などを使わずに栽培されているので
日本で買うよりも味が濃く、美味しく感じます。


・・・・唐辛子はスパイスではなく“野菜”扱い!・・・・


・・・・唐辛子「まるごと天ぷら」・・・・

ティンプーに着いて最初に購入したもの。
それは女性の民族衣装の「キラ」です。
女性は一枚の大きな布をスカートのように腰に巻き、
上にブラウスを合わせます。

男性の民族衣装は「ゴ」。
日本の着物のような作りでハイソックスを合わせるのが一般的。
休日以外は民族衣装を着て仕事や学校に出掛けるブータン人。
せっかくなので滞在中は民族衣装で過ごそうと決めていました。


・・・・店内には鮮やかな生地がたくさんあります・・・・

機械織りの安いものもありますが、手織り専門店もあります。
こちらは豪華なお祭り用の布も多く扱っていました。
商品は一般の女性が家で織ったものを買い取っているようです。
「あのおばあちゃんは織物名人」とか
「仕立てならあそこのお母さんにお願いしよう」といったかんじで
自分たちで作ることも珍しくないようです。

手織り工房では若い女性たちが真剣に布を織っていました。
細やかな柄を出すために色鮮やかなヨコ糸を丁寧に渡していきます。
図案などを見ている様子はなく、全て頭の中に入っているようです。
ブータン人の美しい色彩感覚を感じられます。


・・・・織られている刺繍のような織物は「片面縫取織り」だとおもいます・・・・

さんざん迷った結果、着心地を考慮してコットンの「キラ」を購入しました。
風合い豊かで肌に優しい感触です。
日本人と同じような顔をしているブータンの人々。
民族衣装を着れば現地の人と間違われることもしばしば。


・・・・横断歩道の標識もゴを着た男性が描かれていました・・・・

ブータンはチベット仏教を信仰する国です。
滞在期間中に「仏陀が悟りを開いた日」がありました。
現地の人々はいつもより豪華な民族衣装でお洒落をして
お寺に参拝に出掛けます。

私が訪れたのはチミ・ラカンというお寺。
狭い田んぼの畦道を譲り合いながら進みます。
家族や学校の友達と連れ立って参拝した後は広場でピクニック。
広場には牛も犬もいて、気持ちのよい風が吹き抜けます。
日本人の中高年にブータン旅行が人気なのは、
昔の日本の里山風景に似ているからだそうです。

 お寺で出会った家族が
「日本で大きな地震があった時、私たちはずっと祈っていました」
と言ってくださいました。
大きな天災など無くても、彼らはいつも祈っています。
チベット仏教では自分の幸せではなく「皆が幸せであるように」と
祈りを捧げるのだそうです。
遠い国で誰かが祈っていてくれると思うと、少し心強く思えます。

ブータンは経済的には貧困国に属しますが
悲しい顔をしている人には会いませんでした。
街を歩く人はみんな笑顔で挨拶を交わし、
助け合って暮らしています。
初めて訪れたのに懐かしい雰囲気があるのは、
顔が日本人と近いというだけではなく
素朴でおおらかな国民性と、治安の良さが
旅行者に安心感を与えるからかもしれません。

まだ気軽にいつでも行ける国ではありませんが、
「ぜったいにもう一度行こう!」と思わせる土地でした。
これからの乾期には空が澄み切って
ヒマラヤが美しく見えるそうです。
今度は大きなお祭りの時期に、仮面舞踏を観に!

 

『IFFT/インテリア ライフスタイル リビング』Vol.1

投稿日:2012/ 10/ 24  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

ハイエンド・ハイデザインのライフスタイルを発信する
インテリア関連の国際見本市『IFFT/インテリア ライフスタイル リビング
(主催:社団法人日本家具産業振興会/メサゴ・メッセフランクフルト株式会社)
が開催されました。(10月17日〜19日)


・・・・デザインやトレンドに敏感な来場者が多いような気がします・・・・

インテリアやライフスタイルトレンドは、ファッションとも密接。
今回はテキスタイルにも力が入れられているようで、
ハイムテキスタイルトレンドやインテリアトレンドのトークショーをはじめ、
「ファブリケーション(Fabric + Creationの造語)ブランド」のコーナー、
日本のものづくりとデザインを融合させた「JAPAN STYLE」コーナーなど
見所満載。3日間の取材となりました。

出展は11カ国・地域から338社・団体、3日間の来場者は19,166人。
6月に開催された「Interior Lifestyle Tokyo」よりも規模は小さく
雑貨などの出展は少ないものの、「マテリアル」「リノベーション」に
焦点を当て、消費者の「編集型ライフスタイル」のニーズに対応していく
密度の濃い展示会となっています。
すでに来年6月に行われる「Interior Lifestyle Tokyo」では、
毎回注目されるアトリウム特別企画が「JAPAN STYLE」に決定しており
世界へと進出する「ジャパン」のブランディングが
ますます楽しみとなっています。


・・・・5つのファブリケーションブランドのテキスタイルで構成された
「FABRICATION CAFE」。フィンランドのアルティック社からは
アルヴァ・アアルト設計した椅子が提供されるなど、
名作のヴィンテージ家具に接しながらカフェを楽しめます・・・・

見本市のコンセプトや特別企画、会場構成は
インテリアデザイン業界を牽引する、青木昭夫氏(クリエイティブディレクター)、
小柴大樹氏(ライフスタイルプロデューサー)、南村弾氏(デザイナー)、
本間美紀氏(ジャーナリスト)の4人がクリエーティブディレクションを担当。
特別企画の「Creative Resource 素材と造作のちから」は
建築家の芦沢啓治氏がコンセプトディレクターを務めるなど、
クリエーションやトレンド発進力の高さも注目です。


・・・・「Creative Resource」のコーナー・・・・


・・・・椅子などに実際に使われた素材もさりげなく展示されています・・・・

「Creative Resource」コーナーでは中央に「Material Park」が設置され、
芦沢啓治氏や藤森泰司氏(家具デザイナー)をはじめ、
デザインスタジオのドリルデザイン、橋本潤氏(インテリアデザイナー)
などから提供された、マテリアルやデザインのイメージ源となった
お気に入りの素材、捨てられない模型などを展示。
クリエーターの“マテリアル倉庫”が見られる貴重な企画です。


・・・・建築家やデザイナーのイメージ源が見られる「Material Park」・・・・


・・・・テーブルに書かれているメモがリアリティです・・・


・・・・いろんな素材で作られた紐のボール・・・・


・・・・部品、紐、金属板、木片など、様々なマテリアルが
デザインの発想源となります・・・・


・・・・プレゼンに使用した模型も展示されています・・・・


・・・・復興支援プロジェクト「石巻工房」をプロデュースしている
建築家の芦沢啓治氏(右)と家具デザイナー藤森泰司氏(左)のトークショー。
「もっと活用したい造作家具の実力」をテーマに、クリエーターならではの
リアリティのある体験トークが勉強になりました・・・・


・・・・世界が注目するハイムテキスタイルトレンドのトレンドセッターでもある
テキスタイルデザイナー南村弾氏による「Heimtextil TRENDS 2013/2014 Preview」
「Being」をテーマに、実物のテキスタイルを見せていただきながらの
わかりやすいトレンド解説・・・・


・・・・「Heimtextil TRENDS 2013/2014 Preview」の
ライブアート形式のコーナー・・・・


・・・・ホログラムの表紙。トレンドブックも販売されています。
カラーチップ付きで7,000円は悪くない価格かも・・・・


・・・・・「Heimtextil TRENDS 2013/2014 Preview」の
4つのトレンドテーマ・・・・


・・・・フランスの情報会社(株)グローカルネットカルランジャパンによる
「ライフスタイルとインテリアトレンド2013秋冬」・・・・


・・・・・5つのトレンドテーマが提案されました・・・・

次回からはテキスタイルを中心に、取材したブースをご紹介します。
トレンドの詳細はFASHION TREND net!でお伝えします!

2013/14秋冬・尾州マテリアルエキシビジョン(トレンドコンセプト)

投稿日:2012/ 10/ 23  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

日本を代表する毛織物産地である愛知県・尾州産地の
有力テキスタイルメーカー16社による
『2013/14秋冬・尾州マテリアルエキシビジョン』が開催されました。
(主催は一宮地場産業ファッションデザインセンター


秋冬は“ウール産地らしさ”を最も発揮できるシーズンとあり、
各社が得意分野に絞り込んだ付加価値の高い素材を提案しています。
長引く衣料消費の低迷や、中国仕入れの増加、
原毛価格の低下による販売価格の低下など
テキスタイル環境はまだまだ厳しいものがあります。

しかし原毛価格の低下を“販売しやすい価格”と
チャンスに見いだすメーカーもあり、一概にマイナスとはいえません。
日本の織物やニット、プリントは、世界で高く評価されています。
にもかかわらず日本のアパレルメーカーでの取り上げ方はまだまだ低く、
これをもっと、アパレルや小売店が一体となって
消費者に伝えていこうというイベントが
GINZA FASHION WEEK(ギンザ ファッション ウイーク:以下GFW)』
(10月17日〜23日)で行われました。

GFWは、“銀座から日本を元気にする”をコンセプトに
松屋銀座と銀座三越が共同で開催するイベントで第3回目となります。
今回は「銀座をあたためる」をテーマに、
松屋銀座が尾州産地とコラボした「織る松屋」を
銀座三越が新潟・福島・山形のニット産地とコラボした
「編む三越」をテーマに商品を企画・販売。
オフィシャルペーパーの編集を『WWDジャパン』が担当し、
ファッション誌の『GINZA』が特集を組むなど
メディアも巻き込んで産地を盛り上げていく
画期的な取り組みです。
こういう業界あげてのバックアップもあり、
尾州産地への興味も高まってきているようです。


・・・・4つのトレンドテーマのインデックスコーナー・・・・


・・・・4つのテーマのトレンドカラーを糸染めしたコーナー・・・・


・・・・来場者はトレンドカラーの糸を台紙に巻き付けて自由にお持ち帰りできます・・・・

『尾州マテリアルエキシビジョン』では、トレンドコンセプトを
ファッション情報のコンサルティング会社であるフランスのネリーロディ社が担当。
今シーズンは4テーマが提案され、インデックスコーナーでは、
トレンド情報に基づいて各社が製作した生地を展示。
2013/14秋冬は、肉厚感・ボリューム感のある軽い素材として
「ロービングヤーン」使いや、着やすい布帛感覚の「ニット」が増加しています。
「ファンシーツイード」「ジャカード」「起毛&ヘアリー」など
表面変化のある付加価値の高い素材、
汎用性のある「リバーシブル」なども注目です。
リボンのついている素材は、各メーカーのイチオシ素材です。
(今シーズンの素材傾向のポイントは次回紹介します)

2013春夏・尾州マテリアルエキシビジョン(トレンドコンセプト)』はこちら

2013春夏・尾州マテリアルエキシビジョン(素材ポイント)』はこちら

2013/14秋冬のトレンドは「Re-Act(リ・アクト)」をテーマに
過去にとらわれず、未来に向けてポジティブに行動し、
生活の中に遊び心のあるファンタジー取り入れることを提案しています。

【1】 STRICT LADY(ストリクト・レディ)


マキシマルかつミニマルな美しさを探求し、構造主義的な表現を求める
都会的なテーマ。80年代のカリスマデザイナーのモンタナ、アライア、
ミュグレーなどがインスピレーション。グラフィカルで厳格な雰囲気。

<カラー>
・根源的なミニマルなダークトーンとパールグレー
(1.パールグレー 2.マーキュリーグレー 3.鉛グレー
4.ナイトネイビー 5.ペトロール 6.ブラック)
・ビビッドなアクセントカラー
(7.エルメスオレンジ 8.ディープレッド 9.インテンスブルー)

<素材ポイント>
・高密度VS極薄、目立つ特大柄VS目立たない極小柄の「両極素材」。
・ボディコンシャスな仕立てに不可欠な「ストレッチ素材」

<柄>
・トーンオントーンの巨大なダイヤゴナル、ヘリンボーン柄と
控えめなキネティック効果の極小柄の両極化。


・・・・リバーシブルやグラフィカルなクラシック柄の構築的な素材・・・・


・・・・しっかりした風合いのハウンドトゥースのダブルニット:
ファインテキスタイル(株)・・・・


・・・・エキストラファインウールとマイクロポリエステルブレンドの
ストレッチのウォッシャブルサキソニー:時田毛織(株)・・・・


・・・・テンセル/ウールのしなやかなゴブランジャカード:虫分毛織(株)・・・・


・・・・軽量でソフトなシャンブレーのアンゴラビーバー:中伝毛織(株)・・・・

【2】 MODESTY WOMEN(モデスティ・ウィミン)


「アーバン・ファーマー」など、都会の中で求められる
「質素や自然志向」のテーマ。
昔ながらの原点の暮らしをするアーミッシュと
流行に敏感な都市のヒップスターの両方の性質を兼ね備えた
「晴れやかな質素」がイメージ。

<カラー>
・淡色の木材、コルク、ダンボール、ライ麦などを連想させるナチュラルな色調。
(1. 生成り 2.麻紐 3.白樺 4.ブナ 5.柳 6.ハシバミ 7.腐植土 )

<素材ポイント>
・本物志向と柔らかさの追求。カシミア混紡、リサイクルウール、
精製セルロース繊維、洗い加工やスエード仕上げのような
フランネル風、エタミン風の生地。
・ダンボール、籐細工、カゴ編みの表面感のような織物。

<柄>
・トーンオントーンのシネ調、筋目効果
・ぼやけた中間色か、トーンオントーン配色のチェック

・・・・アクリル/ウールのシノ(太い棒状のわた)使いの
ヘリンボーンツイード:林実業(株)・・・・


・・・・イベリア半島の羊毛を使用したイベリコツイード:(株)イチテキ・・・・


・・・・梳毛糸をレーヨン糸で押さえ、柔らかな光沢と膨らみを出した
変わりツイード:(株)ソトージェイテック・・・・

【3】 SWEET GIRL(スイート・ガール)


子供の頃に返るような、心が和み笑顔になれるテーマ。
ぬいぐるみやテディベアの柔らかな手触り、懐かしい風合い
甘さのある色合いがポイント。

<カラー>
・安心感をもたらすソフトトーンのレンジ。
グレー味のある優しいパステルカラー。
(1.ブラッシュピンク 2.ホワイティモーブ 3.シェードグリーン
4.フロスティクレメンタイン 5.スモークブルー 6.ラベンダーブルー 7.ヒース)

<素材ポイント>
・ふんわり膨らんだ柔らかい素材。洗い加工
・軽くてあたたかいふかふかのヘアリー素材。
・ブークレット糸、2色使いの糸、フリンジ状の糸などの意匠糸使い。

<柄>
・柔らかな色調のタータンチエックや先染め柄


・・・・スモーキーなパステルカラーと、フワフワ&膨らみ感のある素材がポイント・・・・


・・・・モヘアシャギーのスイートタータン:ファインテキスタイル(株)・・・・


・・・・ラメ入りが新鮮な、柔らかな色合いと風合いの
ロービングツイード:日本エース(株)・・・・


・・・・ビッグループがポイントのモヘアの
アストラカン風ループツイード:森織物(資)・・・・

【4】 MADAM ASTRAL(マダム・アストラル)


画一化された社会からの脱却や、不思議なもの、
奇妙なものへの憧れとして、地球外世界へと目を向けたテーマ。
新たな銀河の開拓、未知の惑星などがインスピレーション。

<カラー>
・奇妙で謎めいた魅惑的なカラーレンジ。
石や鉱物を思わすマットなダークトーンに、メタリックな輝きがアクセント。
(1.隕石グレー 2.アッシュグレー 3.赤みのグレー 4.アース 5.ガーネット
6.ネプチューングリーン 7.エメラルドグリーン8.ノクターンプラム)

<素材ポイント>
・シネ調とツイードが主流
(より薄くフラットな仕上げのツイード。ラメやメタルコーティングなどの変化ツイード)
・強撚糸、クレープ糸、強い撚りのスラブ糸、小さい輪奈のブークレット糸やネップ糸。
・様々な素材ミックスでの、かすんだような、ぼやけたような風合い。
・惑星のクレーターのような、凹凸感のある表面感。


・・・・ジャカードや控えめなラメ使い、シネ調、杢調の薄手ウール・・・・


・・・・梳毛に控えめな光沢柄を入れた
ブリスタージャカード:宮田毛織工業(株)・・・・


・・・・(左)シックなツイードと鮮やかなブルーの
カラーコントラストのリバーシブル:長大(株)
(右)表面にラメ糸を使ったダブルフェイス:ファインテキスタイル(株)・・・・


・・・・シャギーのファンシーツイード:岩田健毛織(株)・・・・

伝統技術×ハイテク、『エコマコ』岡 正子のエシカルスタイル

投稿日:2012/ 09/ 29  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

長野を拠点に、エシカルなファッション・クリエーションを発信している
エコマコ』の2013春夏の展示会がありました。
エコや、エシカルをコンセプトに掲げたブランドで、
『エコマコ』のように透明感のあるきれいな色を打ち出しているブランドは少なく、
まさに会場はテーマの「光のカケラ」そのもの。
優しい光を浴び、会場全体にいい香りが漂うような心地良さです。


・・・・2013春夏『エコマコ』展示会・・・・

今シーズンは、『エコマコ』を代表するペールなファンタジー表現に加え、
「アンティーク×最先端」、「ビジネス×リラックス」、「トレンド×エコスタイル」の
3つのテーマで、新しい融合を打ち出しています。


・・・・「アンティーク×最先端」のテーマでは、クリムトやルネ・ラリックに
インスパイアされたプリント柄や刺繍がポイント。ジャカードは、
桐生の織物工場の40年〜50年前のアーカイブを復活させました・・・・


・・・・一見別々に染め分けた生地を使用しているかのように見えますが
これは1色の製品染め。異素材のため、1つの染料でこんなに違う
染まり方となってあらわれます・・・・


・・・・水玉のような刺繍は、地元の内職さんにお願いしています・・・・


・・・・水泡?、風船?不思議なディテール・・・・

デザイナーの岡 正子さんは、多彩な顔をもつことでも知られています。
(株)ECOMACOの代表であり、OKA学園トータルデザインアカデミー校長。
そして2011年からは、杉野学園 ドレスメーカー学院 院長に就任しました。
ナチュラルライフコーディネーター、カラーアナリストの肩書きもあります。

岡 正子さんは、流行を追い、大量消費・廃棄を繰り返すファッション界に疑問を抱き、
環境に配慮した、持続可能な社会のためのファッションへと方向転換。
試行錯誤を繰り返しながら、人にも環境にもやさしい
ポリ乳酸繊維やバンブー繊維、和紙繊維などと出会いました。
現在の『エコマコ』の基本となる素材です。


・・・・デザイナーの岡 正子さん・・・・

そしてもうひとつ、岡 正子さんが大切にしているのは、
日本の伝統的な職人さんの技術です。
特に京都西陣の福本染工との出会いは、
『エコマコ』のクリエーションを広げました。
福本染工は天然染色を得意とする、約130年も続く染色工房。
コンピュータ化され数値をデータ管理した染色工場が多い中
今なお、 “職人の長年の勘”による手法で染色が行われています。
染料の調合、染める釜の温度、染液に浸ける時間など、
その都度布の性質や状態を見計りながら染めます。
「繊維は生き物だから」です。


・・・・『エコマコ』としては初めての挑戦の「エコマコ・ブラック」。
キャリア向けの「ビジネス×リラックス」のテーマで展開されているもの。
プリーツや絞りはすべて京都の福本染工の職人さんの手仕事で、
絞りを入れながら染色が行われます・・・


・・・・絞りも駆使し、1回の染色で染め分けられる技術は、まさに職人技です・・・・

三代目となる伝統工芸士の福本久人さんは、
ポリ乳酸繊維やバンブー繊維、和紙繊維など、
ハイテクを駆使したエコ素材と飽くなき葛藤をして
今の『エコマコ』のクリエーションを導いてくれました。
同じ染料でも繊維により染まり具合は全く違います。
異素材組み合わせのデザインは何度も実験を重ね、
一色染めなのにピンクとグレー、ブルーとベージュに染め分けたり、
ラベンダー、ピンク、ブルー、ベージュなど、
ファンタジックなグラデーションに染め上がります。
絞りと染めを同時に行えるのも福本久人さんならではの技です。


・・・・ポリ乳酸繊維(PLA)は、主にトウモロコシを原料とした生分解性合成繊維で、
植物由来の全く新しい合成繊維です・・・・

一つ一つが、福本さんによる手作業の染色なので、
同じ染めのものは二つとありません。
この素晴らしい染めの技術を楽しんでもらうのも
『エコマコ』の大きな魅力です。
福本久人さんは、常に“挑戦し続ける”方だといいます。
微妙な色のニュアンスにこだわり続け、『エコマコ』の世界観を
デザイナーと一緒に作り上げてくれています。
だからこそ、このような素晴らしい作品が完成するのです。
京都の職人さんは、技術があるばかりではなく
「美意識の感性が研ぎすまされて」センスがいいといいます。


・・・・一回の染めで、まるで辻が花のような微妙なニュアンスの
ぼかしの染めは、まさに職人技・・・

よく、いい染色だと思い、染めているところを伺うと
大概は「京都」の染色屋さんの名前が上がってきます。
繊細な美の伝統をもつ京都で、切磋琢磨された職人さんは
研ぎすまされた感性を技術に上乗せし、
依頼された以上の仕上がりを見せてくれます。
“あか抜けている”とでもいうのでしょうか…
地域のもの作りにはその土地が育んだ
独特のニュアンスがあらわれます。
日本人の持つ繊細さのあらわれなのかもしれません。
このようなもの作りの伝統は、なくしたくないものです。


・・・・このパンツスカートも、桐生の織物工場のアーカイブ。
模様をパンチカードに入れた、昔ながらの紋紙を用いて織ります・・・・


・・・・ 透明感のある繊細な素材に、ナチュラルな手刺繍がほどこされています・・・・

岡 正子さんが大切にしている3つめのもの作りに「手仕事」があります。
前述した日本の伝統技術・職人の技を
次世代に伝えていきたいことはもちろんですが、
クラフト要素を入れた「手の温もり」を感じる服づくりをしたいという
思いも込められています。
子供の頃お母様が、何でもない洋服に刺繍をしてくれ、
それが自慢の洋服になったという嬉しさが、
手仕事への愛着のきっかけになったといいます。


・・・・子供もペットのお洋服もお揃いです・・・・


・・・・ブライダルのドレスにも手刺繍やアップリケ。・・・・

『エコマコ』のもの作りには、刺繍やアップリケなどの
クラフト要素があちこちにあり、
しかもこれは地域の内職さんや、
授産施設のみなさんとの協業によって作られています。
生まれ育った長野を愛し、長野を拠点に制作活動をしている岡 正子さんは
地域の方達と一緒に、地域に貢献できるもの作りを
していきたいと考えています。

また、ウエディングドレスなどでは、披露宴への出席者が事前に
「Fuxico(フキコ)」というモチーフを作り、それをウエディングドレスに付けて
思い出のドレスに仕上げます。
手の温もりが、家族の絆となることを知っている
岡正子さんならではの発想だと思いました。


・・・・ウエディングドレスは、染め直して
パーティドレスなどに使用することができます・・・・


・・・・ウエディングドレスのスカート部分には「Fuxico(フキコ)」のモチーフ。
Fuxicoとはブラジルの伝統的な手芸の一つで、
日本では「ヨーヨーキルト」と呼ばれています・・・・

カラーアナリストでもある岡 正子さんは、色の持つ力を知ってもらいたいと
親子で色にふれあい、色を楽しむワークショップ「光のカケラ プロジェクト」を
今年スタートさせました。
何事も「無駄にしたくない」とする岡 正子さんは、
『エコマコ』の“残布”を利用して「Fuxico(フキコ)」を作って
モチーフとしてストールや小物雑貨に利用。
最盛期が終わり捨てられる花を染料にした、長野限定のグッズも作りました。
ワークショップでは、さらに端切れをフェルトのようにして
アップリケのようなクラフトワークの小物を制作します。
「最後まで使い切る」のも岡 正子さんのエコ哲学です。


・・・・親子で参加する「光のカケラ プロジェクト」・・・・


・・・・残布は色見本に沿って染められ、「ペパーミントの香り」「初恋」などと
ネーミングされた容器に分類されます・・・・


・・・・ワークショップでは、こんな時計が作られました・・・・


・・・・残布をミシンで縫ってフェルトのように固め、アップリケしたクッション・・・


・・・・残布を利用したたくさんのFuxicoは、授産施設のみなさんが作ってくださいます。
カラフルなFuxico作りを楽しんでくださるようで、とても丁寧な作りです・・・

そして岡 正子さんにはもう一つ大きな役割があります。
次世代のクリエーターの育成です。
1946年お母様の岡 久子さんが創立したOKA学園は、
長野でも歴史のある専門学校。
岡 正子さんは1997年に校長に就任し、現在はトータルデザインアカデミーとして、
ファッションをはじめ、グラフィック、WEBデザインなどの
プロフェッショナルを育成しています。
そして2011年には、
母校でもある杉野学園 ドレスメーカー学院 院長に就任しました。
岡 正子さんのエコ哲学の元で学び育っていく学生さんは、本当に楽しみです。


・・・・2012年、スティービーアワードで金賞を受賞・・・・

岡 正子さんのことは、知れば知るほど、驚くことが多く
その経歴や受賞歴には目を見張ります。
今年の8月もスティービーアワード(米国)主催の国際ビジネス大賞において
「Most Innovative Company of the Year」カテゴリーで金賞を受賞。
こつこつ積み重ねて来たエシカルな活動が、世界からも評価されています。
これからの、日本のファッション界・教育界を引っ張って欲しい
今後の活躍を多いに期待したいクリエーターです。

『ヤマナシ ハタオリトラベル』(有)テンジン

投稿日:2012/ 09/ 10  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(有)テンジンをご紹介します。

(有)テンジン<テンジンファクトリー>
は、富士吉田の織物産地で
最も注目されている織物工場のひとつです。
かつては服地の裏地を織り、その後は傘地やネクタイを作ってきました。
ほとんどの織物工場は、コンバーター(問屋)からの注文を受けて
生地を織ります。


・・・・テンジンファクトリーの自社ブランド『ALDIN』のロゴマーク・・・・


・・・・『ALDIN』のパンフレットもオシャレでいい感じです・・・・

しかし、三代目の小林新司さんは、100%外注のシステムに疑問を感じました。
産地の機屋も自分たちで企画して、生地だけではなく製品も販売できる
メーカーとならなければこれからの時代を生き延びていけないと考え、
2000年にリネンブランド『ALDIN(アルディン)』を立ち上げました。
織物工場が企画して製品を販売する「ファクトリー・ブランド」の誕生です。
「生地を織り、デザインし、仕立てる」すべての工程を手掛けます。
織機もあえて高速のレピア織機から、昔ながらの低速のシャトル織機に切り替え、
ふっくらと温かみのある麻織物づくりにこだわりました。


・・・・(有)テンジンの専務であり、三代目の小林新司さん(左)・・・・


・・・・“機械美”に圧倒されるシャトル織機を揃えた工場・・・・


・・・・シャトル織機に柄を織りなすドビー装置を装着した「ドビー織機」。
パンチカード(紋紙)に図柄のデーターを組み込んで使用します。
コンピューター化が多い中で、パンチカードを使用して織るのは
非常に希少です・・・・


・・・・タイプライターのようなこの機械は、
ドビーのパンチカード(紋紙)を作るものです。
初めて見ました!もちろん現役で使用されているからすごい・・・・

小林新司さんは、かつて織物が丁寧に織られ、大切に使われた時代のように
長く使い込まれ“アンティークリネン”“ヴィンテージリネン”となるような
製品づくりを目指しました。
ヨーロッパでは当たり前のように親から子へと受け継がれている「リネン文化」を
富士吉田の地から発信し始めたのです。


・・・・シャトル織機は熟練した職人さんたちの技術なくしては織れません・・・・


・・・・よこ糸を巻いたスピンドルを中に入れて使用するシャトル・・・・


・・・・シャトルが往復して(折り返し)よこ糸を織りなしていくシャトル織機は、
両端が織り込まれ、「耳(セルヴィッチ)」と呼ばれる独特の端が織り上がります。
セルヴィッチもデザインのひとつとして、色を代えて配色したりします・・・・

シャトル織機は、糸や機械を手で微調整しながら、
長年の勘と経験で織る“職人さん”の熟練した技術が活かされる織機です。
小林新司さんは、代々伝えられてきた「高い“技術”を受け継いでいくこと」を
大きな使命としたのです。
そのためには完成度の高い“デザイン”を吹き込んでいくことが
不可欠と痛感していました。
いくら素晴らしい技術を持っていても、製品としてのデザイン的な魅力がなければ
マーケットで受け入れてもらうことができません。
目指したのは、流行に左右されない「ロングライフデザイン」でした。


・・・・ショールームで説明してくださったのは、小林新司さんの奥様。
アルディ事業部を担当しています・・・・


・・・・ショールームは心地良い日が入り、
アトリエ風のオシャレな雰囲気を醸し出しています・・・・


・・・・オリジナルブランドの『ALDIN』のカタログも丁寧に作られています。
織りから製品まですべて地場で作り上げており、
「YAMANASHI,JAPAN」の文字が印象的でした。
「YAMANASHI」をブランド化しようとする意思が伺えます・・・

『ALDIN』の製品のデザインにはデザイナーの妹さんご夫婦が
携わることになりました。
妹さんご夫婦は、人気ブランド『R&D.M.Co-』を手掛けている
オールドマンズテーラーの、しむら祐次さんと、とくさんです。
ヨーロッパのハウスリネンのような、手仕事風の刺繍、シンプルでモダンなドビー柄、
かすれ感を出したスペック染め、ネクタイの織り技術を応用したやすら織り、
バイオ加工でソフトに仕上げるなど、懐かしく生活に馴染んでいくような製品です。
テンジンファクトリーでは、他にもネクタイやストールの『LOPEN』、
カーテンなどの『Processus』などのブランドを展開しています。
OEMもやっていますが、すべて地場で作る丁寧なもの作りが特徴で
大量生産はできません。


・・・・・高密度のワッフル織り(蜂巣織り)のリネンタオル・・・・


・・・・シャトル織機で織った証しの「耳」もきれいです・・・・


・・・・優しい肌触りのリバーシブルの水玉柄・・・・


・・・・パリパリにかたい生機(きばた)状態のリネンのソムリエエプトンですが…・・・・


・・・・洗い込んでいくとソフトでとってもいい風合いになっていきます・・・・


・・・・かつて本業だったネクタイも麻素材で展開・・・・


・・・・先染めのチェックやストライプも素敵なカーテン地に・・・・


・・・・シンプルな麻のドレスやエプロン・・・・

富士吉田の織物産地は、小規模な家族経営が多いのが特徴です。
テンジンファクトリーは、織りから製品のデザインまでを家族で作ることのできる
理想のファクトリーブランドとなり、
富士吉田の織物工場の新しい方向のお手本となっています。

富士吉田産地のみならず、高い技術を持っている老舗の織物工場は、
大きな帰路に立っております。
技術に自信を持っている工場は、外注100%の単なる織物工場から
自分たちで企画ができ、製品化まで行える「ファクトリーブランド」に
転身したいと考えているところも多くなってきました。
しかし、マーケットニーズがよくわからなかったり、
製品化の工場背景がなかったり、何をどうやって作っていいのか
模索しているところが多いのも現状です。

もちろん「デザイン力」は非常に重要な要素ですが
自分たちが何を目指し、どういうものを作っていこうとするのかという
「コンセプト」や「ディレクション」がなくしては細部にばかり目がいってしまい
“核”のないもの作りとなってしまいます。
まずは、ブランドとしての哲学をきちんと持ち、
スタートされることを願うばかりです。


・・・・工場の前は木造のショールーム。ペンキを塗ったカントリーハウスのような
温もりのある佇まい。廻りには緑の山が広がります。「こういうところで働きたい…」
そう思わせる環境も重要な気がします・・・・

 

 

『ヤマナシ ハタオリ トラベル』(株)槙田商店

投稿日:2012/ 09/ 09  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

山梨県富士工業技術センターが主催する、産地見学バスツアー
ヤマナシ ハタオリ トラベル』で伺った(株)槙田(まきた)商店をご紹介します。
(株)槙田商店は慶応2年(1866)創業という、
江戸時代末期から続いている機屋(はたや)さん(織物メーカー)です。
創業当初は、山梨県の織物産地である「郡内地方」特産の
甲斐絹(かいき)織物卸商を営んでいましたが、震災や戦争、
そして時代の需要の変化などで服の裏地、そして傘地へと切り替えました。
ジャカードや先染めの傘地では、国内生産の約80%のシェアを占めます。


・・・・レピア織機が並ぶ(株)槙田商店の工場・・・・・

甲斐絹は羽織りの裏地に使われた「薄く・軽く・滑りの良い、高級先染め織物」です。
かつては一世風靡した甲斐絹も、非常に高度な技術を要するため途絶え、
現在は“幻の織物”となってしまいました。
しかし、甲斐絹のもつ「先染め・細番手・高密度・紋織り」などの特性を生かし
「服の裏地」「傘地」「ネクタイ地」「布団地」などへとシフトしている
織物メーカーが多いのも、郡内産地の特徴です。

146年という歴史を持つ(株)槙田商店ですが、
最先端技術の導入にも積極的です。
コンピュータージャカードも早々導入し、
現在はレピア織機を中心に、服地や傘地の120cm〜180cmの
広幅を織ることができます。
特に傘などに使用されるオリジナルジャカードは、他社には製造できない
大きな織り柄表現を可能にし、デザインの領域を広げています。


・・・・コンピュータージャカードのコントローラー。
柄のデーターを組み込んだUSBを入れて使用します・・・・


・・・・レピアのジャカード織機。柄を織る「紋織り」には「ドビー」と
「ジャカード」があり、たて糸の動かし方で、より複雑な柄を織ることができるのが
ジャカードです・・・・・


・・・・・たて糸は「綜絖(そうこう)」という細い金属棒の穴に1本1本通します。
1本1本のたて糸を上下運動させながら、その間によこ糸を通し
複雑な紋織り(ジャカード)を作り上げることができます。
(株)槙田商店にはたて糸の数が4000口〜12000口のジャカード織機があります。
1本1本の綜絖に糸を通すことを「綜絖通し」といい、とても根気のいる作業です・・・・・

自動織機は、よこ糸を巻いた「シャトル(杼:ひ)」を使用して織る
「シャトル織機(有杼織機)」と、シャトルを使用しない「無杼織機」に大別できます。
織るスピードの違いから前者を「低速織機」、後者を「高速織機」ともいいます。
生産性の高い「高速織機」を代表するのが「レピア織機」で、
織機に「ジャカード装置」を取り付けたものを「ジャカード織機」と呼びます。
(株)槙田商店のものは、レピア織機にジャカード装置を取り付けた「ジャカード織機」です。


・・・・・「レピア」とは「細い槍状の剣」の意味で、よこ糸をつかみ、
たて糸の間に差し込んで織ります。左側にある「レピア」がわかるでしょうか?・・・・・


・・・・「レピア」を拡大したものです・・・・


・・・・反対側から伸びてきた「レピア」に糸を手渡しするように、つかみ替え、
よこ糸を通します・・・・


・・・・「シャトル織機」は、「シャトル」が往復してよこ糸を通すので、
糸が織り込まれ、両端は「耳」と呼ばれる形状になります。
「レピア織機」は一方通行なので両端は房状になり、織り上げた後に切断されます。
切断された紐状のものは「房耳(ふさみみ)」と呼ばれます。
房耳は、以前は廃棄されていましたが、最近は手編みや手織りなどに
利用されるようになってきました。クラフト素材としても注目されはじめています・・・・


・・・・ジャカード織機はたて糸が上に長く伸び、2階建てになっていて、
上部にたて糸のコントローラーがついていいます。
2階に人がいるのがわかりますか?・・・・


・・・・2階に上がり糸のコントローラーを見学です。
自動織機になる前の手機(てばた)の時代は、紋織り(ジャカード)を織るときは
2階建て部分に人が上がり手で糸を上げ下げしていました・・・

織物工場見学のあとは、傘工房の見学です。
織り上げられた傘生地は4枚くらいに重ねられ、三角定規のような
専用のスケールで職人さんが丁寧に手で裁断します。


・・・・・メモや写真を撮りながらみなさん真剣です・・・・


・・・・これが傘を裁断する時に使用するスケール。デザインやメーカーの規格により
たくさんの種類が用意されています・・・・


・・・・(株)槙田商店のジャカードや先染めの傘地は、
国内生産の約80%のシェアを占めます。プリントと違い、ジャカードは
傘の裏側も織り柄があらわれて、きれいです・・・・


・・・・・(株)槙田商店は、傘生地の提供ばかりではなく、オリジナルの傘も作っています。
ジャカードの傘は、絵柄に合わせ織り方を変えているので、とても高級感があります
(老舗っぽいタグです!)・・・・


・・・・1本1本手づくりの傘は、ひとつつひとつ柄合わせもしっかりされていきます・・・・


・・・・・傘生地は上糸だけで縫う特殊なミシンを使用します。
上糸だけでチェーン状に縫い上げるので、ニットのように
縫い代が伸び縮みできるのが特徴です・・・・


・・・・・裁断した生地はこのように縫い合わせられ、傘らしくなっていきます・・・・


・・・・・縫い代は三つ巻にされます。日本洋傘振興協議会(JUPA)では
JUPA(ジュパ)基準を設定し、会員の洋傘の品質・信頼・安心の証として、
JUPAマークを添付しています・・・・


・・・・「傘を買うならMEDE IN JAPANで<JUPA>マークのあるものを!」と
職人さんの説明にも力が入ります。携帯電話の写真を使っての熱い解説です!・・・・


・・・・山梨県南都留郡西桂町にある創業慶応2年(1866)の(株)槙田商店です。
なまこ塀の蔵がある、歴史を感じる建物です。回りは山に囲まれ、
とてもきれいな気持ちになれる環境です・・・・

(株)槙田商店は伝統技術を活かしてながら、
新しい技術を上手に取り入れている会社です。
「傘地」という分野に特出しているのも魅力です。
今回は時間がなくて見せていただけませんでしたが、
200年前の素晴らしい織りサンプルもたくさんあり、これにも興味津々です。
いいものを見せていただきありがとうございました。

『ヤマナシ ハタオリ トラベル』産地見学バスツアー

投稿日:2012/ 09/ 03  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

山梨県富士工業技術センターが主催する
産地見学のバスツアー『ヤマナシ ハタオリ トラベル』(8月27日)に参加しました。
(協力:山梨県絹人繊織物工業組合台東デザイナーズビレッジ
織物産地は生地問屋(コンバーター)との取引が一般的なため
アパレルと交流することがほとんどありません。
このツアーでは、デザイナーさんなどと直接交流することにより、
産地の特性を知っていただき、また産地もデザイナーさんの要求を知り、
もの作りの活性化を図ろうとするものです。


・・・・台東デザイナーズビレッジに集合し、ここから出発です。
東京からは15〜16人が乗車しました・・・・・


・・・・山梨に向けて出発です!それにしても暑い…・・・・

山梨県富士工業技術センターは、
山梨県内企業の振興と技術の高度化を支援するための機関で
通称「シケンジョ」と呼ばれています。
繊維部の公式ブログ「シケンジョテキ」は
この織物産地の活動を知るためにもとても参考になります。
何よりも、写真のクォリティの素晴らしさと、
人の温かみが伝わってくる編集視点が私は大好きです。
「シケンジョ」には『テキスタイル用語辞典』の制作時でも
甲斐絹(かいき)などの写真や生地提供で大変お世話になりました。
山梨産地は「シケンジョテキ」を通じてとても興味を持っていましたので
今回のバスツアーは期待感でいっぱいでした。


・・・・とてもいい資料となった『ヤマナシ ハタオリ トラベル』公式ガイドBOOK・・・・


・・・・今回のツアーのスケジュールを地図で示したガイドマップ・・・・

山梨県の織物産地は、山梨県の東側の
郡内(ぐんない)」と呼ばれる地域にあります。
富士北麓に位置するこの地域は、
目の前に広がる大きな富士山に見守られながら、
江戸時代頃から絹や絹織物の産地として発展してきました。
特に羽織などの裏地に使われる「甲斐絹(かいき)」という
先染めの高級絹織物が一世を風靡。
しかし、着物の需要が激減したことや、
機械化で作ることのできない高度技術を要する織物であることから
生産が激減。今では幻の織物となっています。

第二次世界大戦前まで、日本は生糸や絹織物、綿織物などの繊維産業が
基幹産業として輸出の主座を占めていました。
明治20年頃には大きな製糸工場が全国で約650ありましたが、
現在は2つだけだといいます。
織物工場は残っていても、製糸工場はほとんど無くなっています。


・・・・織物産地の「郡内」は、山梨県の東側にあり、江戸時代から
江戸を取り囲むように発展した「絹と絹織物」の産地のひとつです・・・・

今回のツアーでは、富士吉田産地のアドバイザーもしている
台東デザイナーズビレッジ村長の鈴木淳さんがナビゲーターとなっています。
山梨に向かうバスの中で、産地の背景や、今回訪れるメーカーさんの特徴などを
話してくださいました。移動時間を有効に使う見学前の勉強会はとても良かったです。


・・・・・「ドビー」と「ジャカード」の説明がとってもわかりやすかったです!・・・・

“産地”というのは、愛知県一宮の「毛織物」、
兵庫県西脇産地(播州織物産地)の「綿織物」、
静岡県福田地区の「コーデュロイ」、今治の「タオル」、
和歌山県高野口の「パイル織り」、福井・石川の「合繊」などのように
産地特性のもの作りをしているのが一般的です。
知名度が高くなり、産地のブランディングが図れますが
需要が減ると、産地全体に大きな打撃を受けやすいという難もあります。

山梨織物産地は出荷規模では「富士吉田」で全国の30位程度、
「都留(つる)」で40位程度という、家族経営を中心とした規模の小さな産地です。
このような小さな産地は“個性”を出すことで生き延びてきたといいます。
甲斐絹の生産が激減した時に、先染め・細番手・高密度・紋織りなどの
特性を生かし「服の裏地」「傘地」などへとシフト。
現在ではそれらに加え「ネクタイ(日本一の生産量)」「ストール」「婦人服地」
「カーテン地」「座布団地」「布団地」「ハンカチ」「掛け軸の表装地」「バッグ地」など
実に多彩な生地を、それぞれの機屋さん織っているという
ユニークな産地となっています。
時代の流れに上手く乗っていける産地なのかもしれません。

八王子の産地と並び、東京から非常に近い産地でありながら
「何を作っている産地?」という印象が薄いため
今回のようなバスツアーを通じ、
多くのクリエーターに知って欲しいというのも大きな目的です。


・・・・山梨では「シケンジョ」の五十嵐さん、上垣さん、高須賀さんが迎えてくれ
メーカーを案内してくれました。岐阜や京都からも参加者が加わり、
約20名くらいのツアーとなりました・・・・


・・・・五十嵐さんが手にしている「ヤマナシ ハタオリ トラベル」のフラッグは、
上垣さんが、データを作り「シケンジョ」にあるジャカード織機で織り上げた
ものだそうです。オリジナルのジャカードがすぐ織り上げられるとはすごい!・・・・


・・・・「(株)槙田商店」では、傘生地が織られているジャカード織機と
傘生地を裁断している工程を見学・・・・


・・・・三角定規のようなスケールで傘生地を裁断します・・・・

今回のバスツアーのスケジュールは、
傘生地・傘などを作っている慶応2年(1866年)創業の「(株)槙田商店」を見学し、
B級グルメとしても人気の富士吉田ならではの“太うどん”、「吉田のうどん」で昼食。
午後からは、染色・整理加工の「(株)富士セイセン」、
すべてをあえてシャトル織機に切り替え、
麻を主にしたファクトリーブランドで注目されている「(有)テンジン」を見学。
次に「シケンジョ」に伺い、「(有)渡小織物」「宮下織物(株)」のプレゼンのあと、
「シケンジョ」の貴重な甲斐絹の資料なども見せていただきました。


・・・・「(有)テンジン」のドビー織機。昔ながらのシャトル織機にこだわり
麻生地を織っています・・・・


・・・・ショールームではテンジンのファクトリーブランドの『ALdin』を
見せていただきました。企画・デザインも含め、家族でやっている
ファミリーブランドでもあります・・・・


・・・・「(有)渡小織物」は、アパレルの「ネバアランド」とコラボして開発した
新タイプネクタイの「リボニッシュタイ」の話しを。
(ネバアランドの3人の女性たちが身に付けているものです!)・・・・


・・・・・忌野 清志郎のステージ衣装のテキスタイルもデザインした、
宮下織物(株)」のテキスタイルデザイナー宮下珠樹さん・・・・

夕方からは産地の方とお食事を介しての懇親会。
夜は富士吉田の浅間神社の「すすき祭り」を見物。
パワースポットとしても注目される富士浅間神社は、
以前より大変興味のある神社でした。
吉田の火祭り」は“日本三奇祭”ともいわれる不思議なお祭りです。
諏訪神社と北口本宮富士浅間神社の両方のお祭りで、
夏の富士山の山じまいのお祭りとして毎年8月26日・27日に行われます。
27日のお祭りは「すすき祭り」と呼ばれています。
「シケンジョ」の気の利いたスケジュールで迫力ある祭り見物ができ大満足。


・・・・お昼は富士吉田名物の「吉田のうどん」を!これは「肉つけうどん」・・・・


・・・・懇談会ではツー参加者や産地の方達の自己紹介。自分の作品を持ち寄っての
自己PRも!私はもちろん『テキスタイル用語辞典』を!・・・・・


・・・・「すすき祭り」。松明の灯りのなか、赤富士の神輿を担ぎ、すすきの穂を持った
氏子を従えて浅間神社の“高天原”を七廻りする姿に、鳥肌が立ちました・・・・

朝は事故渋滞で1時間も遅れて到着し、
かなりの厳しいスケジュールをこなしたツアーも、
帰りはスムーズで、夜9時30分頃に台東デザイナーズビレッジに到着。
あっという間の盛りだくさんの見学ツアーでした。
見学させていただいたメーカーのレポートは
次回にアップしますのでお楽しみに!

カトリーヌ・ド・メディシスの「メディチ・レース」の秘密Vol.-2

投稿日:2012/ 08/ 07  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

レースセンター原宿が主催する
アンティークレース鑑定家、ダイアン・クライスさんの
レースレクチャーがありました。
今回のテーマは「カトリーヌ・ド・メディシスのレース」。
世界で5枚といわれるカトリーヌ・ド・メディシスのレースの
1枚を所有しているダイアンさんから見せていただいたレースには
驚くような秘密が隠されていました。


・・・・カトリーヌ・ド・メディシスが使用したベッドリネンのレティセラ・レース・・・・

イタリアの名門メディチ家からフランス王の王妃となった
カトリーヌ・ド・メディシスにとって
「王の子孫」を作ることは、命がけの大役です。
カトリーヌは占いにも熱心で、ノストラダムスなどの占星術師を
重用し、様々なアドバイスを得ていたといいます。
王族にとって“後継者”を生むことは最も重要な仕事。
“寝室”は子孫を得るための重用な場所です。
寝室は夫婦だけのプライベートルームではなく、
たくさんの人々によって“子づくり”のための協業が行われます。

ベッドカバーなどの装飾品にも“子孫繁栄” を意味する
様々なシンボルが盛り込まれています。
ダイアンさんが、カトリーヌがベッドルームで用いていた
レースの装飾模様をリーディングしてくれました。


・・・・大陽のようなモチーフのレティセラ。回りは花のアップリケ・・・・

装飾カバーとして使われていたレースは、
カットワーク、ドロンワーク、刺繍を併用した「レティセラ」というものです。
中央に3つの大きな「メダリオン」があり、
その回りには「ロゼット」が配置。
メダリオンの回りには花などがアップリケされています。

メダリオンとは「大型メダル」のことで、
大陽、魔除け、宇宙のシンボライズなど様々な解釈があります。
カトリーヌのレースには、大陽とはっきりわかるデザインもあります。
「ロゼット」は中央から放射状に広がる円形模様で、菊花紋にも似ています。
元来はバラの花から由来し、一種の大陽マークともいわれています。
大陽は、“不滅”のシンボルです。


・・・・正方形の中にロゼット模様があり、回りは花のアップリケ・・・・

以前、ダイアンさんのレクチャーで
サークル(円)とクロス(十字)を組み合わせ、
回りをスクエア(四角)で囲んだ「レティセラ」の模様について
伺ったことがあります。
サークルは「天国」を意味するものでもあり、
クロスは「天と地の中心」で生命をあらわします。
そしてスクエアは「地球」。
正方形は下記の4つの重要なシンボルだといいます。
(1)4つの元素「土・水・空・火」
(2)4つの季節「春・夏・秋・冬」
(3)4つの方向「東・西・南・北」
(4)楽園の4つの小川(エデンの園にある東西南北にクロスになった川)

興味深いのはメディチ・レースに縫い込まれた
アップリケされた花や小枝や果物です。
これらのモチーフには、
結婚、母、多産、妊娠、陣痛などを意味するキーワードが読み取れます。
「カーネーション」は、“結婚”の重要なシンボルであり
すべての人々の“母”の象徴。
“マリア”をあらわすものでもあり、キリストの受難を象徴します。


・・・・回りの花のアップリケのはカーネーションのよう・・・・

「アイリス」は、キリストとマリアの“威厳” の象徴。 “忍耐”を意味します。
「シクラメン」はイタリアやフランスでは、
陣痛が速やかになるように身につけるといいます。
「葡萄の房」は、キリストのシンボルであり、多産のシンボルでもあります。
ベッドリネンでは重用なモチーフです。
「スズラン」は、キリストと花嫁の愛の象徴。結婚の象徴的な価値を意味します。


・・・・左上に見えるのは葡萄のアップリケ・・・・

そして「ドングリ」には、メディチ家独特の意味が隠されているようです。
ルネサンス期に銀行家として君臨したメディチ家の
「金を溶かす壷」であり、「たくさんの成長」を意味するといいます。
カトリーヌは「フランスの王位を救わなければならない」という
使命感を感じていました。
ドングリは強健な後継者の象徴であり“王冠”をあらわしているのです。


・・・・回りにはドングリのアップリケ・・・・

カトリーヌは、結婚して10年間子宝には恵まれませんでした。
妊娠するために、アーティーチョークや鶏の砂肝などの
特別な料理を食べたり、はたまた騾馬の尿を飲むなど
あらゆる手段を用いたとされます。
その後カトリーヌは男子を出産し、合計9人の子供を授かっています。

カトリーヌがイタリアからもたらした
「ブラトー・レース」や「レティセラ」などのレースは
ベッドリネンやテーブルセンターをはじめ
ファッションでもヨーロッパに一大ブームを巻き起こしました。
特に「レティセラ・レース」と「プント・イン・アリア」を組み合わせた
「ラフ」という顔を覆うような扇状の襟は“オーラ”のシンボルであり、
16世紀の王侯貴族やブルジョワジーのステイタスとなりました。
レース襟にはワイヤーが入れられ、糊付けされ、高さや大きさが競われました。
鯨の骨を入れたコルセット、上品なランジェリー
軽い香りの香水をフランスにもたらしたのもカトリーヌだといいます。


・・・・大粒の宝石やパールを縫い取った衣装を身に着けた
マリー・ド・メディシス
(1575〜1642)・・・・

その後メディチ家からは、カトリーヌの遠縁にあたる
マリー・ド・メディシスアンリ4世に嫁ぎます。
メディチ家の莫大な財産を目当にした政略結婚ともいわれていますが、
マリーは持参金を宝石で着飾った衣装につぎ込み
イタリアの贅沢なファッションをフランスにもたらします

この時代の宝石類は、アクセサリーにするのではなく
衣装そのものに、金やパール、宝石類を
惜しげなくふんだんにちりばめるのが特徴です。
16世紀後半には、まるで宝石で織った衣装のごとくの
宝石ファッションが最盛期を迎えます。

2012年5月にスイスのオークションで、
アンリ4世がマリー・ド・メディシスにプレゼントし、戴冠式で身に着けた
ボーサンシー(Beau Sancy)」と呼ばれる35カラットのダイヤモンドが
7億700万円で落札されました。
このダイヤモンドは17世紀にはオランダに渡り、その後イングランド、
そしてプロイセン王家へと受け継がれてきたものです。
一体どなたが買われたのでしょう…
レースや宝石…ヨーロッパの歴史的な芸術品にロマンが広がります。

 

 

カトリーヌ・ド・メディシスの「メディチ・レースの秘密」Vol.-1

投稿日:2012/ 08/ 04  作成者:Textile-Tree 編集長 成田典子

ザ・レースセンター原宿が主催する
アンティークレース鑑定家のダイアン・クライスさんの
レースレクチャーがありました。
今回のテーマは「カトリーヌ・ド・メディシスのレース」。
私の好きな歴史分野であり、期待も高まりましたが
期待以上のものすごいサプライズがありました!


・・・・カトリーヌ・ド・メディシス(1519〜1589)。夫亡き後は
宮廷で隠然たる政治力を発揮。フランスの王位継承のために尽力しました・・・・

イタリアの新興富豪一族メディチ家に生まれたカトリーヌ・ド・メディシスは、
1533年、14歳でフランス王フランソワ1世の第2王子、後のアンリ2世と結婚。
当時のイタリアは、ファッション、芸術、食文化などの最先端にありました。
カトリーヌ・ド・メディシスの結婚は
イタリアからフランスにレースや食のマナーや料理などをもたらし
フランスのレース産業や食文化の発展に
貢献したことでも知られています。
手づかみで食事をしていたフランスに
テーブルクロスとテーブルセンターを掛けたテーブルセッティング、
ナイフとフォークを用いる食事作法などの新しいプロトコールができ、
アイスクリームやマカロン、オムレツもイタリアから伝わりました。

16世紀頃のレースは「宝石」にも匹敵する価値のあるものです。
莫大な利益をもたらすレース産業は“国策産業”として門外不出。
ヴェネチアでは「レース職人が国外でレースを作ると死刑」
という法律があったほどです。


・・・・ネットの生地に模様をかがっていくフィレ・レース&ブラット・レース
(ダイアン・クライスさん所蔵)・・・・

カトリーヌ・ド・メディシスは、「美しい手を持っていた女性」と評されています。
メディチ家で培われた知性とエレガンスが漂い、芸術への造詣も深く
しかも優れた刺繍技術を身につけていました。
彼女がフランスにもたらした手芸は、中世からイタリアに伝わる
「ブラトー・レース」または「ブラトー・ネット」と呼ばれる白糸刺繍です。
正方形のネット状の基布に模様をかがっていく
初期のレース技術のネット刺繍で、
ルネサンスの花や動物の装飾モチーフを施します。
「カトリーヌ・ド・メディシス刺繍」という名前でも知れ渡っています。
フィレ(網目)にニードル(針)で模様を施すものもあることから
フィレ・レースとも呼ばれます。

その後カトリーヌは、イタリアから刺繍職人も呼んでおり、
ハイレベルなネット刺繍がベッドカバー、枕カバー、
カーテンなどの室内装飾に用いられ、
「ア・ラ・モード」としてフランスに広がっていきました。

実はダイアンさんは、最近凄い発見をしたのです。
オランダのレース専門家のレポートを読んでいたところ
そこにカトリーヌ・ド・メディシスが所有していた
上質のリネンで作られた16世紀の「レティセラ(初期のニードル・レース)」や
「ニードルポイント・レース」のベッドカバーが紹介されていました。
3つの大きなメダリオン飾りがあり、
その回りにはロゼット、薔薇飾りのトリミング。
ニードルポイント・レース、ボビンレース、カットワーク、アップリケなどが
ミックスされた珍しいものでした。

カトリーヌのベッドルームで、装飾用のカバーとして使用されていたものです。
レースは世界に5枚あるとされ、3枚はオランダに、1枚はイギリスに、
そしてもう1枚は、なんと日本にあるというのです。


・・・・世界で5枚しかないとされるカトリーヌ・ド・メディシスのレース
(ダイアン・クライスさん所蔵)・・・・

といって…
ダイアンさんは、カトリーヌ・ド・メディシスのレースを取り出し
広げてくれました。
そこに集まっていたみなさんからは、驚きの声が!
目の前に16世紀のメディチ家の遺産が広げられているのです。

日本にあるという、もう1枚のレースの所有者は
なんとダイアンさんだったのです。
ボビンレースの名人で、レースコレクターでもあった
ダイアンさんの祖母から譲り受けたものですが
カトリーヌ・ド・メディシスのレースと知ったのはつい最近。
その瞬間、ダイアンさんは思わず声を上げ、鳥肌が立ったといいます。


・・・・『テキスタイル用語辞典』p228「レティセラ」の解説・・・・

そして私は別の意味で、大変感動しました。
なぜなら、このレースは『テキスタイル用語辞典』に載せるために
撮影させていただいた、
見覚えのある「レティセラ」レースだったからです。
博物館クラスの歴史的なレースを辞書に載せることができたことは
本当に光栄です。

レースにはカトリーヌ・ド・メディシスの
たくさんの秘密が隠されていました。
その話しは次回のお楽しみです。